レベル分けの基準 ―各レベルの到達目標と学習項目の再考−
1. はじめに
夏期日本語教育実習では、学習者14名を3つのクラスに分け、授業を行った。
クラス分けに際しては、実習開始前に学習者全員を対象として、アンケートとインタビュー調査を行った。インタビューはテープに録音し、実習生全員でテープの内容を検討した。
クラス分けの方法は、まず、インタビュー・テープを聞き、直感的に「できる」、「できない」、「両者の中間」の3つのレベルに分けた。直感的判断でこの3つのレベルの境界に位置すると考えられたものは、アンケート項目の「日本語の能力の自己評価」をクラス分けの参考にした。
この項目は、a〜dまでの4段階であり、dは「全く使えない」、cは「決まった表現が使える」、bは「日常会話には困らない」、aは「大学の講義が聴ける」である。
3つのレベルの境界に位置すると考えられたもので、自己評価が高いものは上のレベルのクラスに分け、逆に自己評価が低いものは下のレベルのクラスに振り分けた。
アンケートでは学習歴を問う項目も有り、それらも参考にはしたのだが、今回のクラス分けには直感的判断の占める比重が相対的に高かった。
この直感的判断の根拠はいったいどこにあるのか、今回はクラスを3つに分けたのだが、この3つのレベル差はどこに求めることができるのか。
本レポートでは、インタビュー・テープを文字化し、聞き取り (Q&Aの成功、不成功)、形態 (使用された文法項目の種類、複文の出現の有無とその種類)の2点に注目し、考察した。
3つのレベルを比較することにより、各レベルでは何ができて何ができないのか、その特徴を明らかにする。また、上位レベルを下位レベルの到達目標とみなし、そのレベルで学習されるべき項目を明らかにする。
2. 方法
3クラスから、そのクラス内で平均的レベルと推定された学習者2名ずつを選出した。2名はインタビューの録音テープから直感的に3レベルのいずれかに振り分けられたものであることを原則とし、クラス担当の実習生の意見もその選出の参考とした。
3クラスから各2名、計6名のインタビュー・テープを文字化した。
3クラスは下のレベルから順に1組、2組、3組と名づけた。以下この名称を本レポートでも使用する。
2.1 文字化の方法[1]
インタビュー・テープの文字化は以下の方法によった。
1.
参加者は、学習者をNNS、日本人話者をNSと表示する。
2.
読みやすさを重視し、表記は漢字かな混じりとする。ただし、2通り以上の読み方がある表記はひらがな表記とする。
3.
呼気段落ごとに1文字分のスペースをとる。読点はつけない。
4.
話し手が替わる毎に行を変える。さらに、utterance毎に行を変える。Utteranceは、前後にポーズがある、意味的にまとまっている、下降音調を伴う、などの特徴を持つ。
5.
できるだけ実際の発話を忠実に書き取る。縮約形、音変化、音省略などの現象も文字化する。
6.
次の符号を使って文字化する
a. Utteranceの終わりに音の自然下降、ピッチの下げがないときは、utteranceの意味に関係なく[?]をつける。それ以外は[。]をつける。
b. 自然に生まれる短いポーズは無視する。それより長いと感じられるポーズは#で示す。かなり長いポーズは##で示す。ポーズが現れた理由がわかれば[ ]の中に理由を書く。
c. 音の引き延ばしは[―]で示す。
d. 相づちは改行せずに( )でくくる。
e. 重なっている発話は、重なり部分のはじめと終わりを[│]で示す。
f. 割り込みで分割された発話は、終わりの切れ目を[+]で示す。さらに、もし分割された発話が継続されているときは、再開部分の始めを[+]で示す。
g. 聞き取りに自信がない箇所は[ ]でくくる。
h. 聞き取れない箇所はXで示す。X一つを1拍と数えておおよその長さを示す。
i. 非言語情報は< >の中に入れる。
2.2 インタビューの質問項目
インタビュー項目は、文法的に易から難に配列され、おおよそ初級の学習項目を教科書での提示順に配列している。以下インタビューで使用した質問項目を引用する。
Q1. お名前は。
Q2. どこから来ましたか。
Q3. いつ日本へ来ましたか。
Q4. 日本で何をしますか。
Q5. 日本へ来る前は何をしていましたか。
Q6. 今までに日本へ来たことはありますか。
Q7. 何年間日本にいますか。
Q8. どのくらい日本語を勉強しましたか。
Q9. 休みの日は何をしますか。
Q10. 今日は何で来ましたか。
Q11. 日本語のクラスで何を勉強したいですか。
インタビューでは日本語を用いた。学習者が質問を理解できないようであれば、まず日本語での言い換えを行い、それでも理解を得られない場合に英語での質問に切り替えた。
3. 聞き取り(Q&Aの成功、不成功)
3.1 1組の聞き取りレベルの特徴
1組の特徴は以下の3点が挙げられる。
@
質問を1度聞いただけでは答えられず、言い直しや回答のヒントが与えられて、ようやく理解できる。または、日本語による質問が理解できない。
A
質問内容を誤って解釈する。
B
日本語での回答に挫折し、英語を用いて回答する。
例
|
NS: |
それでは お名前は? |
|
|
#あーん 名前は デイビッド ジョン んー リサ+ |
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NNS: |
あっ名前 名前+ |
|
NS: |
はい 名前です。 |
|
NNS: |
えー ○○○○ ○○○[2]です。 |
|
NS: |
#[アンケート用紙に書き込む]えーと いつ 日本へ来ました? |
|
NNS: |
にほ あー あー XXもう一度お願いします? |
|
NS: |
いつ 日本へ来ましたか? |
|
NNS: |
あー##わか 分かりません。 |
|
NS: |
えーと 昨日ですか? |
|
|
おとといですか? |
|
|
えー いつ+ |
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NNS: |
いつ?(うん) |
|
|
│わか│+ |
|
NS: |
│きょう│ですか? |
|
NNS: |
きょ きょう? |
上記2例は、「お名前は」、「いつ日本へ来ましたか」という質問では答えられなかったため、答えのヒントを示している。
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NS: |
#[アンケート用紙に書き込む]えーと 日本で 日本で 何をしますか? |
|
NNS: |
#何を しますか? |
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|
あー(うん)#あー JAET program あー(JAET program)あー##あー あー |
|
|
to participate in JAET program あー##あーん##あー あー #XXXX |
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|
teach sorry。 |
上記は、日本語での回答に挫折している例である。「日本で何をするか」という質問の意味は解釈しているが、それに対する回答を日本語で行うことができず、変わりに母語である英語を用いて回答している。
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NS: |
えーと えーと○○さんは 日本で 何をしますか? |
|
NNS: |
#日本で なに? |
|
NS: |
はい 何をしますか? |
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NNS; |
#えーん#XXXえーん#えーんone month? |
|
|
No?(あー) |
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|
#いち noいっぱい? |
|
|
No#<NS笑い> oh(はい)#えーん#えーんone
month(あーえー)いち がつ |
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(はいはい)いちー |
上記は、質問「日本で何をしますか」の意味を取り違えてしまった例である。
3.2 2組の聞き取りレベルの特徴
2組の特徴は以下の3点が挙げられる。
@
質問を1度聞いただけでは答えられず、言い直しや回答のヒントが与えられて、ようやく理解できる。または、日本語による質問が理解できない。
A
質問内容を誤って解釈する。
B
日本語による質問が理解できず、英語による質問を要する場合もあるが、回答は日本語で行うことができる。
聞き取りレベルにおける1組と2組との相違は、学習者が質問に答える際、日本語で回答を行えるかどうかという点にある。1組では英語による質問に切り替えることにより、質問内容は把握できるのだが、それに答える日本語能力を有していない。一方、2組の学習者は質問内容を把握することにより、日本語で回答を行うことができる。
例
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NS: |
えーと 日本へ来る前は 何をしていましたか? |
|
NNS: |
#んー分かりません。 |
|
NS: |
はい えー What did you do before you came │to XX│+ |
|
NNS: |
│あー│私は オーストラリアで(はい)働いていました。(はい) |
|
|
はーい 大きいXXXで働いていました。 |
3.3 3組の聞き取りレベルの特徴
3組の特徴は以下の2点が挙げられる。
@
全ての質問に日本語のみで答えることができる。
A
1つの質問に対し、それに関連したいくつかの質問を追加して行っても難無く答えられる。
例
|
NS: |
#[アンケート用紙に書き込む]えーと じゃーどのくらい日本語を勉強しましたか? |
|
NNS: |
えー 3年間。(3年間) |
|
NS: |
#それはメキシコで 3年間ですか? |
|
NNS: |
違います。 |
|
|
えーとメキシコでは2年間(はい)と留学したから(あっはい)それは1年。 |
|
NS: |
はい 分かりました。《中略》 |
|
NS: |
えーとじゃ アメリカ で 勉強する 勉強した時は(はー)えーと週にどれぐらい |
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|
勉強しましたか? |
|
NNS: |
何を? 1週間? |
|
NS: |
はい1週間。 |
|
NS: |
えー1週間に3回 (1週間に3回)1時間。(はい) |
上記は、日本語の学習歴を問う質問から、「どこで学習したのか」、「週にどれくらい学習したのか」という質問が追加して行われている。このようなその場の状況に即した質問にも問題なく答えている。
4. 形態
4.1 使用された文法項目の種類
以下の表は各組ごとの文法項目の使用結果である。
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|
1組A |
1組B |
2組C |
2組D |
3組E |
3組F |
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Nです |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
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〜てください |
○ |
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Vマス形 |
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○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
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テ形 |
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○ |
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|
○ |
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テイル形 |
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○ |
○ |
○ |
○ |
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タイ形 |
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○ |
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○ |
○ |
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辞書形 |
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○ |
○ |
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辞書形/の+つもり |
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|
○ |
○ |
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辞書形+たことがある |
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|
○ |
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マス形(語幹)+に行きます |
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○ |
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かもしれない |
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○ |
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○ |
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〜たり |
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○ |
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可能 |
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○ |
○ |
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条件 |
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○ |
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疑問 |
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〜か? |
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○ |
○ |
○ |
○ |
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どこ? |
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○ |
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なん(何) |
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○ |
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Nの/と/という/とか/のような/やN |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
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格助詞 |
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○ |
○ |
○ |
○ |
|
終助詞 |
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|
○ |
○ |
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形容詞 |
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○ |
○ |
○ |
○ |
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指示詞 |
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|
|
○ |
○ |
|
敬語 |
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|
|
|
|
○ |
4.1.1 1組の特徴
1組の特徴としては、以下の3点が挙げられる。
@ 動詞の出現はセットフレーズのみであり、基本的に動詞は全く習得されていないといってよい。
A 文レベルの産出は「名詞+です」の名詞文のみであり、単語または名詞句のレベルでの産出の中心である。
B 格助詞の使用が見られない。
これは1組の学習者が日本語の学習を始めてまだ日が浅く、また格助詞は母語である英語からの類推が利かないので、習得がなされていないことが原因と考えられる。
例
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NS: |
はい。えーと ○○○○さん ですか? |
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NNS: |
えー(はい)○○と 呼んでください。 |
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NS: |
はい #えーと いつ 日本へ来ました? |
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NNS: |
にほ あー あー XXもう一度お願いします? |
上記の例は、1組の学習者が唯一使った動詞を含む文である。この例から、1組の学習者はセットフレーズに限り、動詞を使用していることが分かる。
4.1.2 2組と3組の特徴
2組と3組とで、使用された文法項目における特徴的な相違は辞書形の出現である。
3組の学習者には動詞の辞書形をはじめとして、辞書形を用いた「辞書形+つもり」(例「英語を教えるつもりです」)、「辞書形+たことがある」(例「行ったことがあります」)がいくつか出現するが、2組のインタビューには1例も見出せなかった。
また指示詞も3組のみに出現する特徴である。可能、条件を表す表現も3組のみに出現していたが、その例は少なく(条件は「2年は足りなかったら3年」の1例のみ)、3組にのみ出現する特徴なのかどうかを断定することは今回のインタビューのみからはできない。
今回のインタビューでは、実習生の年齢と学習者の年齢とが近く、また、実習生も大学院生とはいえ学生であったので、インタビュー中に敬語が出現する場面がほとんどなかった。(「ご存知ですか」の1例のみ)
インタビューという限られた時間の中で、現れた文法項目から2組と3組の相違を述べるのは危険かもしれないが、「辞書形」「指示詞(文脈指示)」「可能」「条件」「敬語」の表現が3組の学習者のみに見られたことから、傾向としてこれらの学習項目は2組のレベルではまだ習得されていないといえる。
4.1.3 終助詞の使用
終助詞「ね・よ」の使用は3組のみに見られた特徴である。しかし、その使用には誤用も存在する。
例
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NS: |
えーとー いつ日本に来ましたか? |
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NNS: |
あー##忘れましたよ?<両者とも笑い> あーむ ##ナナガツ17日です? |
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NS: |
えっと今までー日本に来たことがありますか? |
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NNS: |
はい 行ったことがあります。 |
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|
えー2年前にー南山大学で勉強していました。(あーそうですかー) |
|
|
そうですねー? |
上記の例から、終助詞は3組のレベルでも習得がなされていないのではないかと考えられる。
4.2 複文の出現の有無とその種類
以下の表は、複文を産出する際に使用された文法項目を各組ごとにまとめたものである。
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1組A |
1組B |
2組C |
2組D |
3組E |
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接続詞 |
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それに |
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○ |
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でも |
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○ |
○ |
○ |
○ |
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けど |
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○ |
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○ |
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だから |
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○ |
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並列接続 |
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テ形 |
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○ |
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○ |
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〜たり〜たり |
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○ |
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条件 |
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たら |
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○ |
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従属節 |
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引用節(補足節) |
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○ |
○ |
○ |
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補足節 |
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○ |
○ |
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副詞節 |
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○ |
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マーカーなし(2文の並列のみ) |
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○ |
○ |
○ |
○ |
上記の表から、1組の学習者は複文レベルで日本語を産出する能力を有していないことがわかる。
2組、3組の複文産出手段には特徴的な相違はない。両クラスの学習者も同様の文法手段を多用し(例えば「〜と思う」は2組、3組とも頻度の高い手段である)、時には、誤用に陥ることもある。
以上より、複文レベルでの文の産出は2組のレベルで既に習得がされ始めているが特定の使用に偏りが見られ、3組のレベルになってもなお完全な習得には至らないといえるだろう。
5. まとめ
1組は基本的な初級文法がまだ習得されていない、いわばゼロ初級だといえる。従って、初級の文法項目を易しいものから順次積み上げていく方法が適しているといえる。
夏期日本語実習で使用したテキストの『あさがお』改訂版は、日本で生活する上で最低限必要であると考えられる表現のみを学習できるよう作成されている。学習者が日常生活で常に遭遇するであろう場面を選び、文法項目も最小限にとどめ、語彙は使用頻度の高いものを盛り込んだ。
ゼロ初級である1組の学習者にはこのテキストが最適だと考えられる。しかし、2組、3組の学習者には簡単すぎ、今後難易度に応じた教材を作成する必要があるだろう。
2組は辞書形や、可能、条件の表現など初級後半の文法項目に問題が有り、初級後半のレベルだと考えられる。従って、初級後半のレベルから学習をはじめても良いと考えられる。ただし、聞き取りに問題があるので、日本人のナチュラル・スピードに慣れさせるよう、聴解教材に力をいれ、新しい文法項目の習得はその後に回すというのも一つの手である。
最後に3組であるが、インタビューの結果、重大な問題は見当たらなかった。このことから3組は初級の文法を一通り終えた中級前半のレベルだといえる。聞き取りにも問題はほとんどなく、このレベルの学習には8日間という短期間、何を教えるべきか学習者のニーズ分析を綿密に行う必要があるだろう。
最後に、短時間のインタビューで初級の文法全てを網羅し、その習得状況をチェックすることには限界がある。プレースメントテストのようなペーパーテストの実施や他の機関で使用されているクラス分けの方法を検討することで学習者の到達度をより細かく把握し、学習項目に役立てる努力が必要であろう。
[1] 「文字化の方法」は1、2を除き、名古屋大学大学院における尾崎先生の日本語談話分析論の講義で使用されたハンドアウト「発話資料の文字化について」を引用した。
[2] プライバシー保護のため会話中に現れる人名や団体名は伏せる。○一つは一拍分である。