アンケート結果と実習生の反省
1. アンケートの結果
実習生が反省を行うために、また来年の実習をより良いものにするために、実習最終日にスケジュール、クラス、教師についてのアンケートを学習者に依頼した。
学習者の率直な意見を知るために、質問、回答ともにすべて英語である。ひとつひとつの質問について5段階評価をしてもらい、何か意見がある場合はそれも記入してもらった。以下には、個々の質問に対する答えの全体的な傾向と意見をまとめる。
◆スケジュールについて
授業は8月9日〜11日、16日〜20日の8日間、一日2コマ(10:00am〜10:50am、11:00am〜11:50am)行った。それについては、全体的にもう少し多いほうがいいという意見が多かった。具体的には以下のような意見があった。
1組 ・よかった。
・9時から10時までの授業もしてほしかった。
・9時から始めて、1日3時間授業を受けたかった。
2組 ・日本に来てすぐに授業を受けたかった。
・1日2時間は少なすぎるので、1日4時間やりたかった。そのほうが役に立つ。
3組 ・短かすぎた。午後にもう2時間やってほしかった。
・1日3〜4時間、2週間やったほうがよい。
◆クラスの人数について
クラスの人数は、1組5人、2組4人、3組5人であったが、少人数でよかったという意見がほとんどだった。
1組 ・小さいクラスでよかった。
・ちょうどよかった。
2組 ・パーフェクトだった。全員が質問したいときに質問できた。
◆教室について
授業は、名古屋大学言語文化部棟2階の教室を使用して行った。教室については特に問題はなかったようである。
1組 ・よかった。
2組 ・学校に来るまでが暑くて疲れたけど、教室にはエアコンがあってよかった。
◆授業で英語を使わなかったことについて
学習者は全員英語母語話者であったが、基本的に英語は使用しないという方針で授業を行った。それに関する意見はクラスや学習者のレベルによって多少異なるが、全体的には好意的である。
1組 ・よかったが、日本語で板書をしたほうがもっといい。
・もう少し英語がほしかった。
・ほとんどの場合よかったが、時々わからないことがあった。
・よかったが、複雑なことについてはもう少し説明がほしかった。
2組 ・本当に必要なときに使うだけだったので、とても役に立った。
◆授業中に質問をしやすかったかどうかについて
クラスの人数が少なかったということもあり、わからないことがあった時には気軽に質問ができる雰囲気だったようである。
1組 ・とてもしやすかった。
・質問をしやすい雰囲気ではあったが、教師の英語力がどのぐらいかわからなかった。
2組 ・クラスの人数がちょうどよかったのでしやすかった。
◆学習量について
一つのクラスでも学習者の能力が完全に同じというわけではないので、学習量が多いと感じるか少ないと感じるかは学習者のレベルによる。しかし、余裕のあるスケジュールだったため、多すぎると感じた学習者はほとんどいなかったようである。
1組 ・ちょうどよかった。
・多すぎるということはない。
・もっとたくさん勉強したかった。
2組 ・よかった。
3組 ・もっと勉強したかった。
◆授業のスピードについて
授業のスピードも学習量と同様、学習者のレベルによって感じ方はさまざまである。一つのクラスの中でも能力差が多少あるため、ちょうどよいと感じる人も、ゆっくりだと感じる人もいたようである。
1組 ・ちょうどよい速さだった。
・ときどき遅いとかんじた。
2組 ・教師が柔軟に対応し、自分たちに合わせてくれたのでよかった。
3組 ・完璧だった。
◆クラスの雰囲気について
クラスの雰囲気もよかったようである。3組は実習生全員が順番に担当したため、一概には言えないが、全体的な評価としてはよかったようである。
1組 ・とてもカジュアルでプレッシャーがなく、勉強するのに良かった。
3組 ・教師によって異なる。
◆テキストやハンドアウトについて
テキストは初めて日本語を勉強する学習者を対象としていたため、2組ではダイアログを簡単に練習する程度であった。また、3組ではまったく使用しなかった。しかし、テキストの補助や、テキストの発展として使用したハンドアウトなどについてはどのクラスでも好評だった。
1組 ・うまく組み合わせられていた。
・今後の生活で役に立つと思う。
・わかりやすかった。
2組 ・テキストはあまり役に立たなかったけど、ハンドアウトは役に立った。
・日本語をリフレッシュするのにちょうどよかった。
・わかりやすかった。現実的な場面だった。
3組 ・ハンドアウトは役に立ったが、テキストは使わなかった。
・とても役に立った。自分のレベルにぴったりだった。
◆教師の指示について
基本的な方針として、学習者の母語である英語は使用しないことにしていたため、学習者への指示なども日本語で行った。そのため、時々わからなかったことがあったようである。しかし、学習者が理解していないことがわかった時点で、説明しなおしたり、補足したりしていたため、大きな混乱はなかったと思われる。
1組 ・わかりやすかった。
・ときどき日本語がわからないことがあった。
2組 ・自分の日本語のレベルが低いため、わからないことがあった。
◆文法項目の説明について
1組 ・わかりやすかった。
・少し複雑な項目の説明のときは難しいこともあった。
◆教師の誤用訂正の仕方について
どのクラスの学習者も誤用の訂正はあまりされなかったと答えている。それをどう感じるかは学習者によって異なるようである。
1組 ・ちょうどよかった。
・直しすぎることがなく、とても辛抱強かった。
・もっと直してほしい時もあった。
・もっと訂正してもらって、助詞をもっと正確に使えるようになりたかった。
◆教師の話し方について
話し方については、はっきりしていてわかりやすかったという肯定的な評価がほとんどだった。
1組 ・はっきり、ゆっくりした話し方でよかった。
◆その他
その他の意見としては次のようなものがあった。
1組 ・ダイアログを繰り返して読むのは退屈だった。
3組 ・どの授業もとても楽しくて役に立つものだった。
・クラスの中でレベルの差があった。
2. 実習生の反省
準備段階から授業まで実習全体を振りかえって、改善すべき点、問題点、良かった点について述べる。
◆改善すべき点
来年度の実習をより良いものにするために、いくつか改善すべき点がある。まず、ひとつめは授業が始まる前の段階で学習者の状況を把握し、適切なクラス分けを行うということに関しての改善点である。クラス分けの参考とするために、事前アンケートで学習者に日本語レベルの自己評価をしてもらった。しかし、当然のことではあるが、これを完全に信頼することはできなかった。高めの自己評価を行う学習者と低めの評価を行う学習者がいるためである。アンケートと同時にインタビューも行ったため大きな混乱はなかったが、自己評価の仕方に個人差や国民性があることを頭に入れておく必要はある。しかし、自己評価がまったく無駄なわけではない。たとえば、どのクラスに入れるか迷ったときに、自己評価が高い学習者は上のクラスに入れるというように、クラス分けの参考にはなる。
また、教育委員会の方に具体的・積極的に働きかけて、学習者の日本語学習歴・日本滞在歴などの情報をできるだけ早く手に入れるべきだった。そのような情報が入ってこなかったため、前年度までの実習を参考にして準備を進めていたが、今年の学習者の日本語レベルは前年度までとは大きく異なっていることが直前に行ったインタビューで分かった。前年度は学習者の大半が全く日本語を勉強したことがなかったのに対して、今年は完全なゼロスタートは2名であった。また、長期の留学経験者が2名いることも分かり、急遽クラスを増やすことになった。そのような情報をあらかじめ知ることができれば、今回のように慌てることもないだろう。学習者の情報が欲しいと言うことは何度か教育委員会の方にも伝えてはいたが、そのような情報の重要性を理解していただけていなかった可能性がある。もう少し、具体的、積極的に働きかける必要があったかもしれない。
また、事前アンケートで「日本語能力試験を受けたことがあるか」という質問をしたが、この質問では合否までは知ることができなかった。「2級を受けた」と回答した学習者がいたため、それに対応できるような準備をしていたところ、2級は受けただけで合格はしていないことが授業が始まってから分かった。アンケートの質問の仕方が良くなかったのかもしれないが、注意が必要である。
模擬授業を一部しか行うことができなかったことも改善すべき点である。今回の実習ではひとりひとりの実習生が受け持ったコマ数が比較的多かったため、模擬授業を行う時間が十分に取れなかった。授業を行う前に実習生同士でアドバイスをしあったり、手順を確認したりすることも大切であると考えられる。
また、この夏期の実習は毎年行われているにも関わらず、前年度からの引継ぎがうまくできない可能性があるということも挙げられる。前年度にどのような手順で実習を行ったのかというような資料が残されていなかったため、わからないことは前年度に実習を行った先輩に確認しながら進めた。直接先輩から情報をもらうことはもちろん有意義であるが、それと同時に実習に関する資料を残しておけばスムーズに準備を行うことができるだろう。
◆問題点
今回の実習ははじめ2クラスを予定していたが、事前のアンケートやインタビューで急遽3クラスに増やした。それでも、同じクラスで日本語の能力に差があるという問題が起こった。どのようなクラス分けをしても、クラスの中にある程度のレベル差はできてしまう。これにどのように対応していくかを考える必要があるだろう。
◆良かった点
良かった点として、クラス分けが比較的うまくできたことが挙げられる。クラス分けは事前のアンケートとインタビューを参考にして行ったが、インタビューは録音しておいた。どのクラスに入れるか判断に迷った学習者に関しては録音したインタビューを聞いて全員で検討するという方法をとったため、クラス分けがうまくいったと考えられる。
また、ペアティーチングがうまくいった。1組と2組は2人ずつで担当したが、教案・教材の準備の段階から授業まで、お互いの長所を活かし、助け合い、協力し合ってできたと思う。また、実習生全員のチームワークも良かったと思う。
来年度実習を行う人たちの助けになるように資料を残したのも良かった点である。改善点のところで、前年度からの引継ぎがうまくいかない可能性があることを指摘したが、今年度は実習に関する様々な資料を残した。具体的には、渉外の仕事内容、実習までの日程を詳細に記録し、テキストの原稿、教案・教材、授業のビデオなども残して来年度も活用できるように整理した。
実習生の人数が少なかったことに加えて、クラスを3クラスにしたため、ひとりひとりの実習生が担当したコマ数が多かったというのも良かった点である。基本的にはひとつのクラスを2人で担当し、一人9コマ授業を行なったが、やっていくうちに学習者の能力や個性、クラスの雰囲気などがわかり、それをうまく利用しながら授業を進めることができるようになると思う。
実習の最後の日には終了パーティーを行った。そこでは、日本文化に関わりを持たせたゲームを行い、とても楽しんでもらえた。授業とは直接関係のない企画ではあるが、いい雰囲気でコースを終わることができたと思う。