takashi's pictureTakashi Wakui's Home           takashi's picture涌井隆の家

What's new

Profile                 

Classes 授業

Recent Publications

Animation
アニメーション

Bicycling 自転車

Stargazing 星見

Links リンク

Essays 文章 作文






















誰を信じればいいのか

3月の春休みに文章を書き始めた時には、世の中にはあまりにも嘘が多いので、嘘と真実というテーマで気が向くまま書いていこうという計画でした。そうした ら唐突に福島原発事故が起こり、日本でもあからさまな嘘がまかり通る世の中になりました。書き始めた時は世界の嘘を中心に書くつもりでしたが、日本に出 回っている嘘について書くことにします。

2011年4月の日本は一体誰を信じればいいのか、という状況になっています。そのもっとも顕著な例が、放射能の危険性です。

放射能なんか全然怖くない、年間100ミリシーベルトでも全然怖くない。それどころか、低レベルの放射線を常時浴びていると免疫力も上がってかえってよ い、と主張する専門家がいてテレビに出てきます。私は放送されるときにその人達を見ることはありませんが、数日経つとネットビデオに出てきますから、その 時に見ます。福島原発事故があって大量の放射能が撒き散らされる事態になる前は、日本で許容される一年の放射線量は一般人の場合年間1ミリシーベルトでし た。このレベルはICRP(国際放射線防護委員会)が勧告している数字で世界的にも広く認知されています。ところが、事故後の現在、文科省が福島県下の学 校で年間20ミリシーベルトまで許容するという通達を出していて問題になっています。いづれ国会で追求があるでしょう。一気に20倍になりました。100 ミリシーベルトでも怖くないと言っている学者がいるので、その1/5だから、安全ということなのでしょうか。しかし、20ミリシーベルトでも安全ならどう してはじめからそうなっていないのかという疑問が出てきます。一体、誰を信じればいいのか。

いくつか気をつけるべきことを書いてみます。

まず第一に、論理的に考える。誰が主張しているかを無視して、主張の内容を論理的に考えるのが重要です。論理的に考えると、1ミリシーベルトでも20ミリ シーベルトでもどちらでも同じくらい安全ということはありえません。どちらかが、真実でどちらかが嘘だと考えねばなりません。当然、20ミリシーベルトで も安全、というのが嘘っぽいということになります。そう言っているのが東大教授だろうがノーベル賞受賞者だろうが関係ありません。

第二に、一人の人を全面的に頼るのはダメです。私は先に、大前研一がビデオ講演を無償で提供しており有益であると紹介しましたが、彼の言うことをすべて鵜 呑みにしてはいけません。彼は、以前日立で原発の設計をしていたので、原子炉やプラントには詳しいでしょうが、自ら認めているように線量には詳しくない し、想像するに、原子炉を40年にもわたって保守管理していく際に生じる諸問題の詳細にも詳しくないでしょう。平井憲夫さんが「原発がどういうものか知っ て欲しい」の中で指摘していることもひょっとしたら知らないかも知れません。彼は、最近の講演で、日本だけが先進国の中で唯一20年近くデフレ低成長を続 けて来たと指摘しています。その原因について、金融政策と財政政策に失敗したからだとは言いません。私はそうなのではないかと疑っていますが、彼は、東日本復興 税として消費税を上げろとすら言っているので、マクロ経済政策についてこの人の提言を鵜呑みにするのは危ういかも知れません。いづれにせよ、すべての問題 について十分な知識を持っていて正しい政策提言を出来る人など存在しませんから、一人の人間を信頼するのではなく沢山の人から情報を手に入れて、個々の問 題について是々非々で判断すべきです。線量や被曝の問題については、大前さんはよく知らないようです。学生の頃ウランをうっかり口に入れたけど問題はな かったなど、言ってますが、あの口ぶりでは内部被曝の恐ろしさについては無知なのかもしれません。実は、私は、彼の講演を聞いた後、Youtube で The Fatal Fallout というビデオドキュメンタリを見て、彼がスリーマイル島の事故を過小評価していることに気づきました。放射能流出は大した量ではなくミルクでちょっと検出 されただけだというのは、事実ではありません。Harvey Wassermann という人の Killing Our Own という本も全編ネットからダウンロードできます。政府の公式説はスリーマイルにしろ、チェルノブイリにしろ、事の重大性を小さく見せようとします。ですか ら、原発事故に関して公式説を鵜呑みにするのはダメです。大前さんはCNNやBBCを引き合いに出しますが、既成メディアは公式 説しか言いません。その辺のところ大前さんはかなりナイーブです。

第三に、意見を読むだけではなく、ネットビデオで講演を聞くことが重要です。放射線量と被曝については、山下俊一、中川恵一、稲恭宏、肥田舜太郎、Chris Busby、Ernest Sternglass、Helen Caldicott、Alice Stewart(故人であるので本人の声は聞けないがビデオドキュメンタリがネットにころがっている) などをネットビデオで聞いて見てください。話の内容だけではなく、身体言語にも注意を払ってください。この人の話嘘っぽいなあという直感を持ったらその直 感を大切にしてください。意見の中身を論理的に考えて吟味しなければならないのは当然ですが、人を見て嘘っぽいかどうか直感でわかる場合もしばし ばあります。

第四に、「専門家」に対して怖じけづくのはいけません。別稿でとりあげましたが、HIVとAIDSについて論文を量産している人達が度し難いアホであるこ とが徐々に明らかになっています。有名大学を出て博士号を持っている「専門家」がどうしようもなくアホであるというのは実はよくあることなのです。 ustreamでは、福島県で子供を育てているおかあさんが文科省の若い官僚を詰り倒しているのが聞けます。自分は東大や京大など有名大学を出た偉い先生 とは違って学歴もないし何も分からないが、子供が危険にさらされているのは直感でわかるのだ、などと言っています。全面的に彼女に同感なのですが、自分に 学歴がないと卑下するのはよくありません。威勢のいい啖呵ではありますが、真実は学歴などとは全く関係ないという点を理解する必要があります。それに内部 被曝の恐ろしさを理解するのに大学の学位は必要ありません。中学生でも理解できます。

第五に、大前提として、原子力産業は核軍事政策と直結しているという事実を認識する必要があります。原子力産業にまとわりつく隠蔽主義は、どの国にも見られま すが、それは原子力産業が国の軍事政策と直結しているからです。当然のことながら、軍事政策の詳細は公開されません。敵に知られるからです。日本は核爆弾 を持たない、持つつもりもない、原発は電気を作るためだけに建設していると日本人は思っていますが、それは日本の中でだけ通じる幻想です。日本人は、前の 大戦で大反省をしたし、世界で唯一の被爆国だからと繰り返しますが、外国人は、そんな説明で納得出来るわけがありません。福島の野菜が安全だ安全だと政府 が言えば言うほど、かえって疑われるというのと同じ理屈です。日本人が外に向けて、俺達は平和を愛する国民であると言えば言うほど周りは疑心暗鬼になりま す。いづれにせよ、軍事政策は公に出来ない部分が多く、それに密接に関係している原子力産業も隠蔽体質が払拭できません。私は80年代にフランスのパリで しばらく過ごした時、マーケティングリサーチの会社で、資料集めをしました。エアバスに政府がどのくらい融資しているかを調べようとしましたが、議会の 議事録を見ても数字は出てきません。航空機産業は伝統的に軍事産業と密接なつながりがあるので、金の流れは不透明な部分があります。世界史のどの瞬間を とってみても世界のどこかで紛争が起こっています。すべての国際紛争に費やされる費用の合計は、世界のすべての国の軍事費を合計したって出てきません。ア メリカの軍事費だけをとってみても、911からリビア戦争に至る間の総軍事支出は公表されている国家予算の軍事関連費を見てもわかりません。戦争をやりた くてたまらない連中は、軍事費など銀行に紙幣を刷ってもらえばいいんだと考えているでしょう。その一部は議会の承認を得て国債発行でまかなうので数字は出 てきますが、中央銀行の帳簿がどうなってるかなどほんとのところはよく分からないのが実情です。NYTで読みましたが、イラク戦争の時は、何十トンという 量の100ドル紙幣を急遽刷って軍用機で運び失業したイラクの役人の給料を払うのに使われました。その時点で現地通貨の経済が崩壊し、ドル経済に完全移行 しました。このようにアメリカが介入する世界紛争を通じて撒き散らされるドルの量など計測不能です。日本政府もひょっとしたら、原発事故からの復旧作業な ど戦争なのだから、有事の時のようにどんぶり勘定で紙幣を刷らせて欲しいと本音では考えているかもしれません。という訳で、そもそも原子力産業について透 明性を期待しても無理というものです。怖すぎて表に出てこない事実は沢山あるはずです。政府の公式説には嘘と隠蔽がつきものであると、はじめっから懐疑的 な目で数字を眺めることが重要です。

最終的には自分の頭で結論を出すしかありません。テレビをつけると解説業のタレントが頻繁に顔を出し、様々な問題について喋っており本も売れています。こ ういう人達に頼っていてはダメです。嘘も多いネットの中に入って自分で情報を取りに行かないと正しい判断は出来ません。放射線被爆量は生死に関わる問題な ので、自分の頭で考えて、自分が納得行く結論を各自出す必要があります。
(May 2011)


copyrights Takashi Wakui