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思考実験:猛烈に円を刷るとどうなるか

日本はこの20年近くずっとデフレが続いています。どういうことかというと、供給が恒常的に需要を上回っているので、ものを作っても作ってもすぐ安くな る、少子化で需要の絶対量が増えない、新興国の台頭で賃金が上がらなくなったなどの理由が背後にあると考えられます。本当に買いたいものがないので、金を 持っている人の購買意欲が上がらない、銀行にたまったお金も企業の資金需要が低迷しているために、貸し出しにまわらず、国債購入に回ってしまう、という面 もあるでしょう。

しかし、今の日本には圧倒的な潜在需要があります。お金があればどんどん使いたいという人達が東日本に沢山います。放射能汚染が厳しくて西日本に避難しなければならない人達。急性被曝症で倒れた人々の遺族。瓦礫を撤去して復興を進めたい自治 体。船を失ったので新しい船を買って漁を再開したいと熱望している漁師さん。地震と津波で家を失ったので住む場所が必要な人達。綿密な放射能汚染調査の ために精密な線量計を大量に買う必要があるし、東日本で除染が可能な場所を徹底的に除染するための費用がいるし、それに何より、原発事故から回復するために莫大なお金が必要です。これらすべてをまかなうためにどれだけかかるのかはわかりませんが、手始めに100兆円としましょう。日本のGDPの1/5ほどです。

アメリカで経済学を習うと、"There is no such thing as a free lunch." という格言じみた表現がバカの一つ覚えのように出てきます。別に経済学を勉強しなくても会話の中に出てくるし、新聞を読んでいても遭遇します。大多数のア メリカ人がその意味を知っています。どういう意味かというと、給食の昼飯が無料だとしても、それは税金でまかなわれているのだ、ということです。世の中に は、全く只なんて存在せず、誰かがお金を払っているのだ、ということです。政府の規模を小さくしたい保守派の人がよく使います。彼らの本心は社会福祉など というのは金の無駄遣いであり、住民は政府におねだりするのではなく、ガムシャラに働いて自分で稼ぐべきだ、政府や他人をあてにするなということだろうと 思います。多くの金持ちは内心そう思っていますし、貧乏人の中にもそう考える人がいます。

日本政府は今回のような自然災害やそれに付随する原発事故は1000年に1回起こるとさえも予想していませんでした。原発事故に関しては全く起こらない、 だから無視するということだったのです。ですから、今日本で起っていることは、政府にしてみれば、万にも起こらない異常事態なのです。そのような異常事態 に対応するために、異常な方策をとることはできないでしょうか。つまり、日銀に頼んで猛烈に円を刷り、お金が必要な人にばらまくのです。 "There is no such thing as a free lunch." というような、したり顔の処世訓をしばらく忘れて、思考実験を実行に移してしまおうということです。ひとまず、100兆円です。

自殺的な経済政策だ。
日本銀行法で許されていない。
ハイパーインフレが起こる。
円と国債が暴落する。
日本から資本逃避が起こる。

とか何とか、専門家ヅラした経済学者達がギャーギャー騒ぎ出すのがまざまざと想像できます。まともな科学なら専門家の中である程度のコンセンサスが出来ま すが、経済学者の間では全く出来無いのが普通です。ですから、経済学は科学というより神学に近いのではないかという疑問が残るのですが、それは一旦棚に置 き、現実社会に生息する経済学者の怒りに触れないように、思考実験の世界に戻ります。

まず、宇宙船を想像してください。人類より圧倒的に進化した生物によって操縦されています。放射線の影響も受けないので福島の方にも自由に行けます。空中 をジグザグに飛びながら住民の貯金通帳をスキャンして、経済的打撃を受けた人の口座にどんどん円を注入しています。福島原発の吉田所長の個人口座にもいつ の間にか20兆円ほど注入されました。彼はもう東電の顔色を伺う必要がないので、自腹を切ってどんどん工事を進めています。宇宙人は放射線を通さない新素 材で作られた防護服を作業員全員に配り、作業効率が飛躍的に上がりました!福島市役所には1兆円ほど注入されどんどん洗浄が進むようになりました!宇宙人 は賢いので業者との癒着、収賄・贈賄が起こらず、必要なところに必要なだけ円が現金で注入されるのです!ハレルヤ!

という具合で、誰の債務や債権も生み出さない形で100兆円の需要が生み出され、日本経済の規模が2割大きくなったという状況を想像してみてください。これはあくまで思考実験です。

ハイパーインフレが起こると思いますか?
円が暴落すると思いますか?
その他、上に書いた経済学者の危惧が現実化すると思いますか?

仮定の話には答えられないというのであれば、現実に話を戻します。

今回のような未曾有の災害時においては、政府の借金を増やさない形で、要するに国債を発行しなくても、日銀が円を刷って日本政府が使うことが出来る、とい う法律を通すことはできないのでしょうか。政府が直接通貨を発行してもいいでしょう。100兆円を発行してもそれが誰の借金にもならないようにすればいい だけの話です。別にSFチックな思考実験にするまでもありません。もしそのような法律を通すことが出来無いのであれば、なぜなのか、その理由を知りたいも のです。

増税すればいいのだ、と主張する人がいるのは知っています。助けあいの精神を具現化するとすれば、増税ということになるでしょう。自民党が言っているよう に、「子ども手当」などのような「バラマキ」を縮小してその分東北復興に回せという議論も成り立つでしょう。しかし、増税すれば必ずその分需要は減りま す。絶対的な需要を増やすために円を刷ることのどこに非があるのか、私には今ひとつ理解できない部分があります。ハイパーインフレなんて起こらないでしょ うし(ハイパーインフレは国民の円に対する信任が崩壊し別の通貨を求めたときに起こる)、今問題になっている急激な円高も緩和されるでしょうから、思い 切ってやってみてはどうでしょうか。
(July 2011)



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