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福島原発事故と差別

東北関東の野菜が汚染されていたり、東京の水道に基準値を超える濃度の放射能が検出されたり、予想されていた事態が徐々に出てきました。風向きや雨の降り 具合によっては、30キロ以上離れていても安心とは言えない地区が出てきています。文科省が公開している日本各地の放射線レベルを見ると、仙台や福島県双 葉郡は計器が故障しているらしく数値が出ていませんが、茨木県の水戸市でもかなり高い数値が出ています。毎時0.4マイクロシーベルトというのは、一年に 換算すると3.5ミリシーベルトですから、現状が一年続いたら水戸市は安全と言えません。水戸市の数字から類推すると、福島市などは数カ月で一年間に許容 される放射線を浴びてしまうことになる計算になります。

私のように計算をして安全かそうでないかを自分で考える人はそれほどいません。大抵の人は、福島という言葉を聞いただけで、その県の農作物は危ないから避 けようとか、放射能の理解が十分でない人の中には福島出身の人に近づくと汚染するから近づかないようにしようと考える人などがいても不思議でもありませ ん。事実、汚染された地域から来た人がホテルに泊まろうとして出身地を明かしたら宿泊を拒否されたというようなことが実際に起こっています。残念なことで すが、大多数の人は、情報を咀嚼して自分の頭で論理的に考える時間的な余裕がないか、あるいは考えることを放棄しているので、感情で動きます。したがって 感情を利用すれば情報操作で簡単に操れるということになります。平井憲夫さんが「原発がどんなものか知ってほしい」で書いているように、福島県出身の女性 はあと20年経てば、結婚差別を受けるのは間違いありません。

このような差別感情は日本に留まるものではありません。ロシアのRTを見ていたら、福島原発事故が日本という「ブランド」に、傷をつけるだろうと予想して いました。ニューヨークのタイムズスクエアには、日本の著名企業が多くのネオン広告を出しています。その場所でインタビューされた人の中には、日本の家電 商品は日本で部品が作られているから、少なからず放射線を出すはずだ、だから日本製の家電商品は避けると断言する人もいました。そのような反応に対して、 理不尽だと憤慨してみても、始まりません。日本の中でも理不尽な差別をお互いし合ってるのですから。世界的な日本外しはこのような理不尽な差別意識だけに 起因するものではありません。ここ数十年の急激なグローバリゼーションに対して、世界中から懐疑の目が向けられています。単純に言ってしまえば、グローバ リゼーションで得をしたのは、大資本だけで小資本や労働者はいじめ続けられたという解釈がどんどんコンセンサスを得られるような状況が生まれています。私 もその解釈が正しいと思っています。卑近な例を挙げると、日本には小資本の喫茶店が沢山あったのに、スターバックスにどんどん潰されている。コーヒー一杯 の値段はそれほど変わらない。小資本経営でそこそこ生活できたのに、シアトルに本拠地を持つ大資本にやられてしまい、そこのバイトに応募するしかなくなっ た。一方スタバの社長は年収何十億と儲けている。このようなグローバリゼーションに対する反動が世界中で起こっているので、世界は外国からの輸入を制限す る口実を探しています。イタリアは日本からの食料輸入を全面的に禁止すると発表しましたが、以前からずっとそうしたいと思っていたところ、今回の事故が絶 好の口実を与えてくれたというということなのです。日本はイタリアのこのような政策に対して憤慨してみても始まりません。食の安全という観点から考えると 地産地消が理に適っているし、テレビでもそのようなイタリアの食についてのこだわりを賞賛する番組を沢山作ってきたのではありませんか。

日本人は日本という国の中でお互いを理不尽に差別していますが、自国が世界から理不尽に差別されているという意識も持つ必要があります。島崎藤村に『破 戒』という特殊部落を扱った小説があります。主人公がアメリカのテキサス州に移住するというところで終わるのですが、私がアメリカで会った日系カナダ人 は、カナダに渡った日本人の共同体の中でも部落民差別はなくならなかったと教えてくれました。想像するに、その状況というのは日本よりひどいのではないで しょうか。日本人全体が差別されている中で二重に差別を受けるのですから。世界には絶対に差別を受けない連中がいます。どういう連中かというと、世界の経済 がどうひっくり返ろうと経済的な損失を全く受けない経済ピラミッドの頂点に立つ連中です。ひっくり返れば儲かる、だから意図的にひっくり返すことを企んでいそうな連中です。そういう連中が何を考え世界をどう動かそうと考えているのか、我 々平民も想像を働かすことはできます。そんなことを考えていると、日本という小さな国の中での理不尽な差別は悲しすぎます。

(追記):上を書いたのは2011年3月ですが年の暮れを迎えた今読み返すとかなり無知だったんだなと気付かされます。事故後の数週間は猛烈な量の放射能 が撒き散らされたので避難者の中には体に線量計をかざせば数百マイクロシーベルトなどという目を疑うレベルを計測する人もいたはずです。汚染のレベルの低 い場所の行政がそのような人を隔離するのは当然であり義務です。差別ではありません。そのようなスクリーニングが福島県の周辺で行われていたという事実は 後で知りました。(Dec. 2011)



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