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福島原発事故1

これを書いているのは事故が発生してからまだ一週間たっていない時点です。名古屋に住んでいますが、一時的に実家のある関西に逃げてきました。その理由 は、15日火曜日の午前、某サイトで東京の放射線レベルを調べたら刻々と上がっていき、正午近くに公開するのをやめたので怖くなってしまったからです。何 事も、最悪の事態に備えておくべきだと考えているので大事をとって避難しました。その後、夕方以降放射線レベルが下がったので名古屋に居続けても全く問題 がなかったのですが、良い方に想定外だったので無駄足だったとは考えていません。

避難中、テレビを見たり、ネットで調べたりして今実際に起っていることの正しい理解を持とうとしました。その経験を経て、納得したことがいくつかありま す。ひとつは、日本のテレビが全く戦前の大本営発表に先祖返りしてしまったようであったことです。専門家と称する大学の先生が、どう考えても高い放射線レ ベルをレントゲンなどと比べて安全だと断言していましたが、チャートを前につったてて目は原稿に釘付けでしたから、明らかに数字を頭の中に入れていないこ とがばればれでした。局に電話苦情があったのでしょう、その人はその後顔を出さなくなりました。一体、レントゲンの一瞬の照射と数カ月にわたって受け続ける照射 量を比べるのですか?呆れてしまいます。要するに、太平洋戦争の末期、負け戦が続いても、勝利したと嘘を垂れ流し続けた日本の官製広報が健在だということ です。政府の退去勧告は半径20キロです。ですから、21キロ離れた地点で測った放射能レベルが異常に高くても、安全だと言いくるのが御用学者の仕事だと いうことなんでしょう。公式見解に合わせて論文を量産してきた習いが身についてしまっているので、今更、真実を見すえよと言われても出来ないのだと思いま す。しかし、嘘をつき続けることは出来ません。アメリカ政府は自国の市民に80キロより外に退避しろと勧告したのですから、日本人は自分の政府とアメリカ のどちらを信じたらいいのか自分の頭で考えるしかありません。

もうひとつは、個人でもそうですが、国も同様に痛い目に合わないと学習しないのだという、何と言うかあきらめにも似た諦念です。原発の発電コストは田中優 さんによると水力発電(治水利水も兼ねた大規模ダムではなく、発電に特化したもの)より高いのです。この試算にはプルサーマルや六ヶ所再処理工場や使用済 み核燃料を地層深く埋めるコストは含まれていませんし、今回のような事故から回復するコストも当然含まれないでしょう。日本が原発を作るというのは、フランスが作るのと全く意味が違います。巨大地震が確実に来ると分って いる日本、来たら津波によって壊滅的な事態になりかねない日本で55機も原発を作るというのは全く割の合わない話です。私は政治的な人間ではないので原発 反対運動に参加したことはありませんが、名古屋に住んでいるので、浜岡原発とか美浜原発とかはどうにかしてくれと密かに思っていましたし、その意思を伝え るべく国会議員にメールをしたこともあります。しかし、今回痛い目にあってやっと目覚めました。そして、今まで反対運動してきた人達は偉かったと感謝した い気持ちです。(大前研一さんが運動家に石を投げられたと言っていますが、そういう人は、田舎で畑でも耕していてください。)

さて、結論じみたことを書いてしまいましたが、現在進行中の福島原発の事故を理解するために私が取っている方法を書いてみます。参照した既製メディアは日 本語ではNHK、民法のテレビ、毎日新聞、ネットでは朝日新聞、日本経済新聞、英語では、NYT、ABC、BBC、RT、フランス語では Liberationなどなどです。しかし、既製メディアは嘘が多いとこの数年ひしひしと感じているので、ブログやポドキャストやネットビデオに多く頼っ ています。その場合、心がけたのは、原発についての政治的立場を全く無視して様々な立場を持つ人々から情報を取ることに務めたことです。多くの人は、保守 派だのリベラル派だの原発反対派だのと自論を固めてしまっており、自分の意見に沿った情報源のみを頼る傾向がありますが、これはよくありません。個別の情 報について是々非々で判断する必要があるのでイデオロギーに惑わされてはいけません。それから言うまでもないことですが、情報の質と、情報発信者の学歴・ 知名度などは全く関係ありません。ましてや、ホームページのデザインの出来など何の関係もありません(そのような表層的なことが重要と見なされるようにな る傾向は大学にも及んでいます。阿呆らしいと思いながらしぶしぶ従っています。)

ネットは便利なものでキーワード、キーパーソンを検索すれば芋づる式にどんどん出てきます。日本人で検索しても、英語のサイトへのリンクにぶち当たりま す。公式見解(原発推進)については既製メディアが日時報道していますから、テレビを見ておれば充分です。したがって、ネットの情報は中立や反対の意見を 述べているサイトが中心になります。順不同にリストしてみます。大前研一、田中優、広瀬隆、きくちゆみ、武田邦彦、平井憲夫(「原発がどんなものか知ってほしい」)、美浜の会、小出裕章、原子力資料情報室、原子力 教育を考える会、文科省が配信する日本各地の放射線レベル公開サイト、民間個人が配信している東京の放射レベル公開サイトなどなど。原子力安全保安院はこの期 に及んでレベル5などと言って世界の笑いものになっている(大前研一談)ので論外です。サイトを見に行く気も起こりません。リストに挙げた人達は原発以外 の多くの問題について自論を公表している人が多く、個々の意見については、私は異論を持っています。しかし、今問題になっているのは原発事故の現状認識な ので、あいつは敵だからあいつの意見は聞かないという態度は取りません。例えば、大前研一のグローバリズム礼賛と追従はその腐敗の側面に目をつむっている ので私は賛同できませんが、だからと言って彼が原発事故について発言するとき耳をふたぐのは愚の骨頂です。それどころか、彼は現状況を打開するため日本が 必要としているキーパーソンの筆頭に来るべき人でしょう。

英語のポドキャストサイトもいくつか聞きに行きました。Alex Jones の Infowars.comは派手に危機感を煽っています。ヨウ素剤を買い占めて、うちには置いてあるよと、えげつない商売をやっています(基本的にいい人 なので暴利を貪ろうとはしていませんが)。彼は、911同時多発テロについては正しいけれど、HIV/AIDSや福島原発事故については完全に外していま す。以前HIVは生物兵器として開発されたと言っていましたが、その後考えを変えたでしょうか。自分が間違っていると気づいたのなら、訂正すべきでしょ う。しないのなら彼が批判している既製メディアと同じです。いづれにしろ、我々一般市民が心すべきは、情報源を限定して、そこが垂れ流す情報を盲信するの ではなく、イデオロギーを棚上げにして、幅広く情報を受け取り、是々非々で個別に自分の頭で結論を出すことです。

繰り返しになりますが、人間、組織、国家みんな痛い目に会わないと学習しませんね。平井憲夫さんのサイトはかなり前に読みに行って背筋が寒くなった記憶が あるのですが、今回のような危機的な事態にならないと彼のメッセージは広く伝わらないでしょう。大前研一さんによると東電は原発関係者を事故があるたびにパージして行ったそう ですが、技術者がいなくなれば事故があった場合、対応できなくなります。日立さん、東芝さん、GEさん後はお任せします、と逃げるつもりだったのでしょう か。今回の事故を喉元過ぎればで終わらせるのではなく、10年、30年と長いスパンで面倒を見ていく責任を負っています。原子力発電産業を安楽死させるた めにはまだ何十年とかかります。大学の原子力工学科に進む学生など将来期待できないのですから、安楽死させるための長期的プランを策定して実行に移しても らいたいと思います。

最後に、英語による広報についてです。日本は、ロシアのRTのようなテレビ局を持つべきです。911同時多発テロについてアメリカの既製メディアが嘘ばか り報道してきたので、真相を報道しようとするRTなどアメリカ国民からも一目置かれるようになって来ています。外交とか商売をうまくやっていくためにはイ メージが重要です。嘘をつけとはいいませんが、世界に向けて英語でアピールしていかないと日本は損することが多くなります。アメリカなど軍事独裁国家と 言ってもいいくらいなのに、今でも世界中の人々が自由と民主主義とアメリカンドリームの国などと勘違いしているのは、ひとえに既製メディアの宣伝効果で す。強い放射線のなか原子炉に入って行った決死隊はFukushima50などと呼ばれて、海外では英雄扱いされていますが、日本国内では奥ゆかしいのか テレビは伝えません。そのうちの5人はすでに死亡し2人は行方不明であると、アメリカABCは伝えていました。彼らこそ、真の英雄です。彼らの功績を讃え られないようなら日本国は国として情けないと思います。彼らについては、自国のメディアが日本語で日本人に伝え、英語で世界に伝えるべきだと思いま す。

(追 記):上を書いたのは3月ですが、その後、大前さんが東京に原発を建設せよと著作で書いているのを読みました。事故直前に出版された著作の中でです。広瀬 隆のような皮肉ではなく真面目にそう主張しています。私は事件後彼のビデオ講演を見て貴重な情報であると受け取りましたが、今考えなおすと、大前さんは政 府や東電を批判する前に、自分が考え違いをしていたと一言謝罪すべきだったと思います。人間だから間違うのは仕方ありませんが、間違っても謝らないで他人 ばかり批判しているなら、誰もその人の主張に耳をかさなくなるでしょう。


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