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栗城史多のドキュメンタリ

栗城史多という人がいるというのを知ったのは最近です。NHKがドキュメンタリ番組を作ったようです。私は見ていません。私の遊び仲間が話題にし たのでちょっと調べてみました。

この人が遊び仲間の間で話題になったのは、私がこの正月休みに冬山に登ったからです。生まれて初めての経験で雪山の美しさに圧倒されました。過去 5年の中で一番記憶に残る経験でした。どうしてもっと早く経験しなかったんだろうと今では悔いが残りますが、仕方がない理由があります。実は私は 大学生のころ北アルプスを縦走して怖い目に会い冬山どころか登山そのものを長い間封印していたのです。星を見るために山を訪れるようになりその延 長で登山を再開したのはつい最近です。冬山も登ろうと考えたのは、写真で知っている美しい雪山を経験しないのはもったいないと考えたことと、死ぬ までには一度ヒマラヤに行かなければと考えているからです。海はグレートバリアリーフでもういいやという気持ちになりました。確かに極彩色の熱帯 魚は美しい、でもヒマラヤの絶景には負けると写真でしか見たことがないのに想像しています。もともと海より山が好きな質だからそうなるのでしょ う。

栗城史多という人はもちろん私などより登山歴が豊富ですが、国営TV局がドキュメンタリを作るに値する人でないのはネットでちょっと調べればすぐ 分かります。エベレストを4回登ろうとして失敗したとか、凍傷で指を何本も切断したとか、それでも果敢に挑戦しているのだとか、そんな物語で盛り 上げようなんて視聴者を舐めているとしか考えられません。エベレストには毎年何百人も登っているので、登頂すること自体には何の意味もありませ ん。天候が安定する5月には頂上手前で渋滞が起こるほどだそうです。夏の北アルプス並です。観光登山業者が幾つもあって外資が沢山入っています。 シェルパはそのようなツアーオペレーターに雇われて危険な労働を強いられています。その労働に見合う報酬を得ているかどうかは部外者にはわかりま せん。彼らがルートを切り開きロープを張ってくれているから毎年数百人もの一般登山客が登れているのです。アルパインスタイルで登るには特別な技 術を要し、登山する人のほんの一部分です。栗城史多さんは残念ながら十分な技術を身につけていないようです。何故天候の安定しない秋を選んで登ろ うとするのか。勝算があるから登るのか、あるいは最初から登頂はあきらめているのか。天候が安定している時期を選んでシェルパがフィックスした ルートを無視するなら、ウーリ・ステックのように観光登山業と対立してしまうでしょう。彼はエベレストを含めた8000メートル級の大縦走をアル パインスタイルでやろうとしたので、シェルパと対立してしまったのでした。栗城史多とウーリ・ステックでは能力と実績が余りにも違いすぎて同列に 語るのも憚れます。

最近、谷口けいさんが北海道で滑落死しました。彼女なら、平出和也さんなどとチームを組んで、ウーリ・ステックがやろうとしたことをやれるだけの 技術があっただろうと思います(観光登山業界とどう折り合いをつけるかの問題はひとまず無視します。)彼女と平出さんが7000m級を登っている ビデオクリップがあるので見てください。彼らのような本物の登山家がい るのに、何故NHKは栗城史多さんなどを題材にしてドキュメンタリを作るのでしょうか。おそらく、エベレスト登山の実態について無知なのか、ある いは、一般視聴者を徹底的に舐めているからなのでしょう。ネットでちょっと調べれば誰が本物で誰が偽物なのかすぐ分かる時代に、こんなことを続け ているとどんどん視聴者を失うことになるでしょう。

佐村河内守が話題になった時はまあ騙されることもあるだろうと寛容のこころで見てましたが、再度似たような事例に出会うと確信犯的にやってるのかもと 考えるようになっています。

(Jan. 2015)


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