takashi's pictureTakashi Wakui's Home           takashi's picture涌井隆の家

What's new

Profile                 

Classes 授業

Recent Publications

Animation
アニメーション

Bicycling 自転車

Stargazing 星見

Links リンク

Essays 文章 作文




















英語、電気、武田邦彦

人類史上最大級の産業災害である福島原発事故について語ろうとする場合、武田邦彦さんの存在は無視できません。NHK をはじめとする既成メディア が徹底的に無視を決め込んでも、彼がポドキャストを通じて行っている活動の影響力は、インターネットが続く限り増大するだろうと予測できます。 彼は数学者であったお父さんから人間は死んでから評価されるのが丁度いいのだと教えられ、自分も同感だとポドキャストで語っていたのを憶えていま す。たぶんそうなるでしょう。数十年も経てば原発産業に巣食う御用学者は完璧に忘れ去られているでしょうが、彼の存在は多くの人々の記憶に残り続 けるでしょう。

私が彼のことを知ったのはずいぶん昔です。アル・ゴアらによる地球温暖化のプロパガンダを何の疑問も感じず鵜呑みにしていた頃、英語の読解の授業 で英語の高級紙の記事を学生に読ませました。内容は地球温暖化の壊滅的な影響を回避するためにどのような経済政策を取らねばならないかを具体的に 論じたものでした。私の読解の授業では、文章の選択を学生に任せていますが、何も要望がないことが多いので、毎週の小テストのために文章選びに苦 労します。2009年以降は911事件をはじめとする世界の嘘について授業をやっているので読ませるテキストがある程度固定されていますが、それ 以前は、題材選びに困ったらNYTやガーディアンなどの英語の「高級紙」から適当に記事を選んで読ませていました。この時は、たまたまその頃読ん だ、地球温暖化についての記事を学生に与えたのでした。授業の後、工学部の学生が数人、お前は武田邦彦を読んだことがあるか、読んでないなら読 め、と教壇に詰め寄ってきました。プリントとして配布した文章を変更するわけには行かないので、翌週の小テストは配った文章に基づいて行ったこと を記憶しています。その後、彼が書いた地球温暖化やリサイクルについて書いた本を数冊読みました。今では、教壇に詰め寄ってきた学生たちに感謝し ています。

情けない、騙されていたのか!というのが彼の書物を読んだ後の感想でした。しかし、911事件の嘘を知った時ほどの衝撃はなく、武田さんのことは しばらく忘れていました。その後、彼の発言に再び注目するようになったのは福島原発事故の後です。今までに何度も書いたようにあの事故につ いては当初から既成メディアの情報は無視していたのでネットで情報を集めはじめ、その内に当然の如く彼に遭遇しました。最近彼をテレビで見かける ようになりましたが、彼のことは書籍やブログやポドキャストを通じて知ったのが最初です。

彼のポドキャストは定期的に聞きに行きます。彼の意見の殆どに共感を覚えます。もちろんすべての意見に賛成しているわけではないので、彼のどの意 見に共鳴し、どの意見に賛成しないのかちょっと書いてみます。

英語を教えているので、武田さんが英語と電気について語っているポドキャストを興味深く聞きました。彼は、将来自動翻訳機が高度に発達し、英語な んて勉強しなくてもよくなる、英語より電気を勉強するほうが重要なんだと論じています。この意見は一理も二理もあります。理工系の超優秀な学生が 致命的に外国語の能力を欠いているという現象はアメリカでも日本でも経験しました。ニューヨークに住んでいた時の友達の同居人(英語が母語のアメ リカ人)は著名な賞をもらうほどのエンジニアでしたが、外国語はからっきし駄目でした。彼が工学で博士号を取った頃には、その世界では博士号取得 に外国語が必修から外されていたのでよかったのですが、それ以前なら、大学教授になるのは諦めていただろうと本人が語っていたのを記憶しています。名大で も似たような学生を教えたことがあります。試験をするとクラスで最低点なのですが、工学部の彼の指導教員は彼を評してプログラミングの能力は天才 級だと言っていました。授業は毎回出席しましたが、始終苦しそうに耐えている様子でした。プログラミング言語も英語も同じ言語なのにどうしてこの ような得手不得手が生じるのかは、言語学者や脳科学者が究明しなければならない問題だと思います。武田さんは、そのような学生に英語を強制するこ とは得意領域の勉強の妨げになるので害であると論じていますが、その可能性は高いでしょう。

武田さんは、学校の成績なんてつける必要がないと論じています。自分が教えている大学の英語の授業に関しては同感です。帰国子女などの例外を除い て大学1年生や2年生の 英語のレベルではどんぐりの背比べなのでA, B, C, Fなど成績をつけることに意味があるのか疑問です。学生には、30歳になるまでに英語と日本語を音声情報も含めて同じ程度ストレス無しに処理できるようにな れと言っていま す。30歳を超えると高いレベルの習得は無理だからです。昔は読めるだけで十分だったのでしょうがインターネット時代には聞き取る力も必要です。

マルサスの『人口論』の有名な仮説を教師が勿体ぶって紹介した時に、それを聞いた高校生の武田さんが胡散臭いと思ったというのは、彼の頭脳の優秀 さを物語っています。大学を見回すと超物知りで何でも読んで何でも知っているような印象を与えるけれど、実際会話してみると自分の頭で物事を考え ることが出来ない教授先生が散見されます。そういう人が世間では「知の巨人」で通っていたりします。博覧強記は過大評価されているし、大学受験制 度がそれに拍車をかけています。世の中には興味関心のない人にとってはトリビアの収集に過ぎない営為に全霊を打ち込む人がいてオタクとして知られ ています。鉄道オタク、アニメオタク、プロ野球オタク、などなど。大学の知の巨人たちは勉強オタクと言ってよいでしょう。収集しているトリビアが たまたま学校教育で教えられる教科科目であっただけで本質的には鉄道オタクとかわりません。大学受験に「鉄道」という科目があれば鉄道オタクが合 格す るだけのことです。武田さんは、私などから見るとずば抜けた博学ですが、彼の強みは物知りであることではなく、自分の頭で考えて、膨大な知識を整 理できているというところです。それに加えて、意見や立場の違う人の話をじっくり聞くという頭の柔軟さを持っています。なぜそうなったかと言う と、彼が科学者であることと無関係ではないでしょう。

マルサスの人口論は、貴族の選良主義や環境主義につながります。地球の環境を守れという主張に反対する人はおそらく皆無でしょうが、環境主義者の 多くは、密かに人間の数が多すぎるから減らしたいと考えています。食料不足の原因が富の分配における不平等であるのは自明ですが、選良主義に凝り 固まった環境主義者は人の命より自然環境のほうが大事だと感じているようです。発展途上にある中国やインドの民衆が全員先進国並みの生活水準を望んだらその環境負荷に地球は耐えられないので、貧しいままにしておけ、食料不足で餓死しても仕方がないという考えです。高校生の武田さんはそのような考え方にいかがわしさを嗅ぎつけたのでしょう。 大したものです。

武田さんは、金持ちと労働者の賃金格差は10倍ぐらいを限度とすべきであると論じています。そのような平等社会が日本の伝統であるとも語っていま す。日本の伝統であるかは別にして、その意見に私も同感です。彼が年収10億はけしからんと言う時、日産のゴーンさんなどを思い浮かべているのだろう と想像します。ゴーンさんは世界的に見ると大企業の社長の年収としては10億円は決して高くないと言ってますが、感心しません。私個人としては、日産という企業が 優れているとも、日産の車を買いたいとも思わないので、ゴーンさんの年収10億円は正当化出来るとは思いません。本田宗一郎や孫正義のような創業 者なら文句はありませんが、雇われ社長のゴーンさんは無理です。本田宗一郎など創業者だったのにも関わらずそんな年収を得ようとはしませんでした。彼と ゴーン社長を比べると器の大きさは歴然としています。ゴーンさんのような経営者を称える風潮には違和感を感じます。

武田さんは高給取りを輩出する野球やサッカーは嫌いで、そうでないラクビーが好きなようです。私は、別にヤンキーズの黒田が年収20億円をもらっ ても文句はありません。(というか私は彼のファンです。最近ヤンキーズで見たいなと思ったのはジーターと黒田だけでした。彼がナゴヤドームで投げ る試合には観戦に行くかもしれません。)MLB のスタジアム建設に税金が投入されないのであればそのような年俸は不可能でしょうが、完全に市場に任せるにはMLB はアメリカの文化でありすぎているので少々の税金の投入は我慢します。野球やゴルフの選手が高給取りで、ラグビーの選手が薄給なのは、運やめぐり合わせの問題なので腹を立てても仕方がないと思っています。腹が立つのは、リーマン・ショックのようなクラッシュが起こり、経済をぶっ 潰した金融屋連中が自らの高給を正当化するのに、プロスポーツ選手の高給を引き合いに出すことです。黒田の年収20億が市場によって決まるように 俺達の年収も市場によって決まるのだと強弁します。盗人猛々しいというのはこのことです。

ちょっとどんどん武田さんから遠ざかっているので話を戻します。

気象学者による気温のデータの捏造についてはクライメートゲートとして英語の世界ではよく知られていますが、日本語で話題にしているのは武田さん 以外多くを知りません。「世の中はうそと不正でできている?」などという番組を作ってしまったNHKも勿論伝えません。地震予知など不可能である と知っているのに研究費が出るから予知の研究を続けている地震学者と同様に、多くの気象学者は温暖化が存在するならその原因の大部分が太陽活動に起因すると知っているはずです。私などある科学者から地球温暖化問題で日本が色々対策を取っているのは「国策」だからやめられないんだと聞かされました。 日本という国はそこまで情けないのでしょうか。

長くなったので、武田さんと同意しない点を幾つか書いて終わりにします。

武田さんはインフルエンザワクチンを毎年打つそうです。私は打ちません。打たなくてもインフルエンザにかかったことは今まで一回(とは言え、検査 をしたわけではないのでインフルエンザだったかどうかは確定していない)ほどしかないし、 仕事に影響は出たことがありません。息子に毎年インフルエンザワクチン接種をさせるがほぼ毎年かかってしまうお母さんの話を聞いたこともありま す。そもそも重金属や保存料や動物の細胞の破片を含む訳のわからないものを体内に取り込むなど避けたほうがいいと考えています。しかし、こういう 私も HIV/AIDS説のデタラメを知る前は現代医学に信頼を置いていたし、ワクチンについても全く疑問を持っていませんでした。ワクチンや薬の臨床 研究は製薬会社が資金提供していることが多く全く信頼していません。インフルエンザ罹患数のデータも信用してません。インフルエンザと似たような症状を引き起こす病気は他にもあって、その一つ一つが厳密にインフルエンザと診断を受けたわけではないからです。最近日本ではノバルティス社 の不正が話題になりましたが、そんなのは氷山の一角です。

武田さんは、将来マイクロチップを体に埋め込むと身分証明書が不必要になると喜んでいますが、私は不気味なものを感じます。究極の管理社会の実 現を手助けしているようで受け入れられません。自由主義者の武田さんが賛成だというのはちょっと理解しかねます。

ところどころで意見の対立があるものの武田邦彦さんのポドキャストを通じての活動を応援しています。健康が続く限りいつまでも続けていってほしい と願っています。

(March 2015)



copyrights Takashi Wakui