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『アンナプルナ南壁-7400mの男たち』

近年殆ど映画を見ていません。最近テレビである映画を見て余りに話が嘘っぽくてバカバカしいのに引きこまれたのは、主演女優がきれいだったのと話 に真実味の一端が垣間見られ、それを映画的演技が本当っぽく見せていたからだと感じ入りました。映画を見なくなった私にも映画鑑賞の基本が身に染 みこんでいるようです。それは教養と名づけてもいいのかもしれませんが、そんな教養のない人はバカバカしいと途中で映画館を出るような映画でし た。

アニメーション作品も作っていて結構好きな作家であるリチャード・リンクレイターがゴールデングローブ賞をもらったそうです。アカデミー賞も受 賞したのかどうかは知りません。興味ある人は勝手に調べてください。彼はテキサス出身なので、JFK暗殺について沢山言いたいことがあるだろう し、彼の作品にはオースチンを本拠地とするアレックス・ジョーンズがカメオ出演するので、私がインタビューすれば世界の嘘を巡って面白い話をして もらえるでしょう。でも、彼も大きな賞をもらってかなり有名になったので、その辺の話題を避けるかもしれません。アメリカの最近の言 論状況を見ると大いにありえます。

しかし、この作文はリンクレイターが主題ではありません。別の映画を話題にしたいと思います。

『アンナプルナ南壁-7400mの男たち』は日本の配給会社が登山好きに向けて題をつけたのでそうなっていますが、原題は Pura Vida (純粋な人生) と The Ridge (稜線) です。使用される言語はスペイン語、英語の他にロシア語、ポーランド語などが飛び交います。キャストはスイス人、ルーマニア人、アメリカ人、ロシア人、ポーランド 人、カナダ人、シェルパ人(ネパール人)などなど、アンナプルナの稜線で遭難したバスク人のイナキ・オチョア・デ・オルツァの救出作業に参加した 人達を後日インタビューしたドキュメンタリです。感動的な映画でお勧めです。私の中ではトップ10に入る映画です。一度映画館で見て、その後色々 ネットで調べて追加情報を得たのでもう一度見たいのですが、日本での劇場上映は終わったようで残念です。

Pura Vidaという原題が指し示すように、この映画は、嘘と腐敗にまみれ、金と権力を巡るチンケな闘争が常態である都会と正反対の世界を提 示しています。こんなすばらしい人間が存 在するのかと、人間に対しての信頼を取り戻せます。とにかくこの映画に出てくる男たち(と女一人)はかっこよすぎます。

イナキ・オチョアがアンナプルナの稜線で遭難し、彼の恋人のカナダ人がベースキャンプから世界中に電話をかけまくって、高所順応を済ませた世界の エリート登山家仲間 が二つ返事で救援活動に集まってきます。日本の北アルプスではありません。アンナプルナの稜線です。ヘタすれば救援隊の全員が二重遭難してしまっ ても不思議ではありませんが、それでも単純にイナキに対する友情だけで駆けつけるのです。日本のテレビを聞いていると、冬山遭難があると、登山経 験もない人が、「自己責任」などと冷淡な言葉を口走っているのを耳にしますが、このドキュメンタリ映画に出てくるエリートクライマー達は友 人登山家のために、自分の命をいとも簡単に差し出します。キャストの中で一番有名なスイス人の Ueli Steck (ウーリー・シュテック)は、ロシア人クライマーを評して、「俺はロシア人が好きだ。言葉少なく行動で示すから。」と言います。山という世界では、ロシア人もア メリカ人もスイス人もありません。世界から集まった山人が生死を超えた無言の友情と団結力で結びついているのです。

登山家たちが語ることばには深い洞察と真理が含まれています。世界のパワエリートにおかれましては、彼らのことばを煎じて飲んでいただくのがいい のではないかと思われます。イスラム国の背後にいる連中。ウクライナに戦争を仕掛けている連中です。

(March 2015)


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