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鎌仲ひとみ『小さき声のカノン』

名古屋今池のシネマテークで表題の映画を見てきました。なかなか感動的でお勧めです。

『六ケ所村ラプソディー』と同様に、権力に立ち向かいながら生活する女性たちの強さが印象的です。今回は母親が多いので子供を守ろうとする強い意 志に支えられています。私は全共闘世代には一回り遅れていますが、その世代の活動家に何人か会ったことがあり、大島渚があの時代を撮った映画も見 ています。イデオロギーに洗脳され口が達者だけれど度胸が足りないそのような男たちと比べ鎌仲さんの映画に出てくる女たちは 強い確信に基づいて行動しています。強さの度合いが半端ではありません。

福島事故があってから鎌仲さんは名古屋大学に上映会のために一度訪れています。文学部の映像を研究しているグループが招いた催しで私も参加しまし た。鎌仲さんは国家と巨大企業がぐるになって起こした大災害について、何の公的な意思表示もしない大学人を糾弾しました。我々大学人は頭を垂れて 聞いているしかなかったのを憶えています。私個人としては組合などが声明を出しても意味はなく、総長が文科省と喧嘩するつもりで記者会見を開かな いと意味はないと考えているので、鎌仲さんのことばはもっともだと思いました。総長をそのような行動に駆り立てるためには、教員たちが そのような気運を作る必要がありますが、そうなりませんでした。今の大学は文科省が金(ゼニ)に よって全面支配しています。全員サラリーマンです。大学人に「勇気ある知識人」のような崇高な理想を期待しても無理です。これは何も日本だけの問題ではなく世界的にそうで す。私は個人的には集団活動が苦手なので、人を集めて上映会をやったりする ようなことには向いていません。だからこのような作文を書いていま す。敵が巨大すぎるので、平民一人一人が自分に合ったやり方でネチネチちまちまと闘うし かありません。「院長の独り言」の小野さんが言っているように、群がるバッタのようにです。

この映画はネットで被曝回避について日々情報を得ている人にとっては目新しい情報を提供しているわけではありません。ただ、感情的に訴えかけるも のが強くあります。私など映画を観て涙することが多い人間なので結構ティシュのお世話になりました。自分がカメラを持ったならもらい泣きしてし まって撮影どころではなくなりそうです。

一方、被曝回避について四年経っても何も学習してこなかった人に対しては、この映画はいくつか貴重な情報を伝えています。

第一に、一般人の被曝限度が年間1ミリシーベルトであり、年間20ミリなどというのはあとづけの算数であること。
第二に、チェルノブイリの歴史が教えているのは、東京を含む首都圏は汚染地であり、子供を健康に育てたいのであれば長期間の保養が毎年必要なこ と。ベラ ルーシでは国家が保養の経済的負担をしているということ。

大学人でもこのくらいの基礎的なことすら知らない人がいます。「警戒区域」に人が戻ったというのをテレビで聞いたある同僚は福島はもう安全なんだ と思ったそうです。平均的な大学人は自分で調べないしテレビを鵜呑みにしています。大学なんてこの程度です。

次に私が個人的に興味がそそられた部分を書き出します。

ベラルーシのお母さんがデュエットで歌う民謡がとても美しかったです。カラオケで毎日流行歌を練習している人でも彼らのようにきれいにハモれるで しょうか。何か文化の厚みを感じます。

母レインジャーズ (Haha Rangers) の一人が原発爆発の後遠くに避難したのにもかかわらず、4月に学校が再開されたので汚染地に戻ってしまったことについて後悔しているのが印象深かったです。何故学校という 権威を疑わなかったのか、それは日本の洗脳教育の成果なのではないのかと自問自答している姿が印象的でした。確かに、外国人と日常的に接する機会 が多く米国で長い間過ごした私などから見ると彼女の学校に戻るという判断は日本的だと言えなくはありません。アメリカ人なら学校に戻らないことに ついての精神的な咎めが日本人ほど強くないのを経験的に知っているからです。

ベラルーシは保養の効果について科学的知見を積み重ねています。炭酸風呂(?)とか塩部屋とか効果が確かめられる療法は何でも試しています。こう いうのを科学的態度と言うのでしょう。日本の御用学者がドグマを振りかざして、「エビデンス」を出せというのと対極にある態度です。科学をやるに は自然に対して謙虚である必要があります。現時点では理屈が説明できなくても効果が実証できる療法には何らかの科学的根拠があります。御用学者が 駄目なの は、核産業の利益を守るために存在する放射線医学のドグマを振りかざして、危険だと心配するお母さんたちの口を封じるからです。ドグマで頭を一杯 にしているだけで科学をやる気がないお前がよく言うよと呆れます。この映画には、108人の甲状腺癌の発症例と原発事故との因果関係を認めない福 島の医師が出てきます。こういう人は、自分の子供にワクチンを打って痙攣や脳障害を引き起こしたり死んでしまったりしても因果関係を認めな いでしょうから相手にす るだけ無駄です。馬鹿は死ななきゃ治らないとはけだし名言です。

スモルニコワさんと一緒に働く医者が全員女であることが興味深く感じました。木下黄太さんが講演でウクライナが変わったのは医者が声を上げ始めて か らだと語っていたのを記憶しています。ウクライナでは女医の締める割合が高くそのことが大きく関係しているようです。その割合が低い日本では 楽観 できません。木下さんと一緒に日本各地で講演会を開いている三田さんは東京小平の医院を閉じて岡山に引っ越ししました。東京が汚染されているので 被曝回避のための行動です。彼のように声を上げている医者は今のところまだ少数派です。保身のため嘘をつき続ける医者しかいない日本がずっと続く ならこの国はもう終わりです。

この映画には野呂美加さんが出てきます。彼女が名古屋に公演しに来た時には聞きに行きました。今尊敬する日本人の一人です。彼女のブログはお勧め です。もし彼女や鎌仲ひとみさんのような活動家・表現者がいなければ日本は「先進国」として世界に顔向けが出来ないでしょう。北朝鮮と何もかわり ません。選挙でデタラメやってるし、中央集権官僚支配だし、海の幸と自然の美しさぐらいしか自慢できない情けない国に転落です。そしてそのすばら しさを原発事故が台無しにしてしまいました。

(April 2015)


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