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ギリシア危機

迂闊にもギリシア危機についての議論をテレビで聞いてしまいました。予想通り、銀行側、ブルッセル側の解釈をしていまし た。日本はG7の側、IMFに拠出する側にいるのでそのような結論になるのは仕方がないかなとは思います。しかし、ギリシア国民にとっては給料や 年金を減らされるし退職年齢を遅らせられるしで、将来日本で大規模に起こるはずの事態を予告してくれているので、一般日本人はギリシア人に同情を 感じて当然であるはずです。何故そうならないかというとテレビが銀行側についているからに他なりません。プロパガンダです。

貸し手の責任はどうなってんのと問うのがまともな反応でしょう。リーマン・ショックを経験してその問を発しないのは一体どうなっているのでしょう か。ギリシア人は怠け者でドイツ人ほど働かないとか、公務員にばらまいたとか、ポピュリズムに踊らされたとか、そんな説明でギリシア人を悪者に仕 立ててそれで視聴者が納得すると思ってるのでしょうか。テレビ見てる人はそこまでアホなのだと馬鹿にされているのでしょうか。

あのNYTさえ、ギリシアはゴールドマン・サックスにハメられたと報じていました。国の財政状態を会計操作で誤魔化してEU入りさせ、金利の低い 国債を発行させて、潜水艦やオリンピックで借金漬けにしてしまえ、後は緊縮財政(austerity)で搾り取ればいいという作戦はネットメディ アだけでなく、既成メディアでも広く報じられていました。NHKはそのような情報を流す気はないのでしょうか。

貸し手の責任というのは次のような意味です。ユーロ建てのドイツ国債とギリシャ国債が同じ年利5%でも、同じ程度の信用力があるとはとても言えま せん。でもギリシアがEUに入ったから似たような金利になり同等のように扱われるようになりました。国債以外の公社債や住宅ローンも金利が下が り、そんなのをかき集めてファンドにして世界中にばら撒いたんでしょう。サブプライムの頃と構造は同じです。ギリシアがデフォルトしたらEUが穴 埋めするだろうという暗黙の前提の下でモラルハザードが動いたとしか考えられません。リーマン・ショックからまだ立ち直れていない銀行が多い中、 金融危機が再発しても不思議ではありません。リーマン・ショックの時などハンク・ポールソンはドル崩壊と銀行倒産を回避するため戒厳令を敷くぞと 議会を脅して膨大な税金をぶち込んで救済しました。ギリシアのような小国をEUが同様に救えないはずはありません。出来ないなら何のための統合な のかという話になります。ユーロ危機はギリシアの問題ではなく、EUの問題、それもギリシアにカネを貸した銀行の問題ということになります。

皮肉なのは、ギリシア危機が騒がれている間、ユーロがドルと人民元に対して値下がりしているということです。ユーロ危機が騒がれれば騒がれるほと ドイツ車の売れ行きはよくなります。何故中国で日本車よりドイツ車が人気かというとブランド力とか品質とか色々あるでしょうが、ユーロが安くなっ たので、ドイツ車にお値打ち感が出ているからです。そんな風にドイツが儲かっている分をギリシア救済に使ってもいいんじゃないのと考えるのは私だ けでしょうか。どっちにしろ、緊縮策を押し付けてもギリシア経済が縮小するだけで返済の助けにもならないし、弱い者いじめをやっているとしか思え ません。スティグリッツさんの教えが浸透して最近ではIMFですら、緊縮策はダメだと言っているようです。ダメなものはダメなんです。

日本でもギリシアでもそうですが、公務員叩きはほどほどにしたほうがいいでしょう。地方に行くと産業が何もなくて高給取りと言えば公務員になって しまう地域があります。そのような場所で飲み屋をやっている自営業の人は公務員を叩けば自分の首を閉めることになります。国立競技場に群がる業者 も同罪。安倍さんの軍事費増大で儲かる三菱も同罪。民間で求められる効率を求めたら逆効果になるような産業もあります。大学なんてその最たるもの でしょう。他には例えば飲料水。民営化して外国の巨大企業に所有が移ってしまったら、日本人が求める質が確保できると思いますか?そこそこの給料 と仕事に対する誠実さが日本の飲料水の質を確保しているのではないですか?公務員を馬鹿にしていると後でしっぺ返しを喰らいますよ。

日本のテレビに出てギリシア問題を論じていた「専門家」の誰一人として、国民投票で圧倒的多数がNOと回答したのを予測できなかったというのが笑 えます。専門家なんてその程度です。リーマン・ショックの前夜、バーナンキを初め、専門家たちは口をそろえてサブプライム問題なんて大したことが ないと言っていました。竹中平蔵もそうです。一方、もっと(悪)賢いゴールドマン・サックスはさらりと売り抜けて儲けていました。テレビに出てく る専門家なんて聞くだけ時間の無駄です。

国民投票を行い、かつその票数を操作しなかったいう点でギリシアは日本よりだいぶマシです。さすが民主主義の発祥地だけのことはあります。でも、 チプラス首相はその民意を無視してさっさとEUと協議にもどり緊縮策を受け入れてしまいました。これは裏切り行為でしょう。

この成り行きは日本に対して大きな教訓を残していると考えられます。

まず、国民投票は受け入れてはならないということです。国民投票はアリバイ作りにすぎません。国民の声を一応聞いといたからね、というだけのこと です。何の意味もありません。NOといらいらを発散させる機会を与えてもらっただけです。

第二に、チプラスくらいの人でも脅かされて変節したり、買収されたりするということです。国民がNOと言ったんで交渉のテーブルには戻りません よ、と言ってしまえば、予測不能、制御不能の事態への引き金を行くことになります。そこまで勇気がなかったのかも知れません。彼の立場にいない人 に彼を責める資格はありません。まだ若いし残りの人生に未練があって当然です。

最後に、日本の平均的な政治家がチプラスよりずっと出来が悪いという事実を認識する必要があります。将来的には彼のレベルの政治家が日本にも出て くるかも知れませんが、先のことはわかりません。

(July 2015)


copyrights Takashi Wakui