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世の中はうそと不正でできている?

今年ももう終わりです。こんなスピードで一年が過ぎていくとは人生の短さを痛感します。師走の終わりにはもうひとつのラ ブジョイ彗星がやってきて楽しませてもらいました。ガンマ線バーストがあったり、超新星爆発があったり、近辺では彗星が飛来したりで、短い人生の 間の短い期間にもいろんな天文現象が起こっています。嘘と騙しの人間社会より、そっちの方に注意を向けて生きていくほうが気が楽です。ただ、この 一連の作文は嘘と騙しの話なのでのんびりと気が向くままに作文を続けたいと思います。例年通り、年の終わりにばたばたと一文を片付けます。

嘘と騙しということでは、先月の11月にNHKが表題の番組を放映しました。内容は下のとおりです。ホームページから引用します。

世の中はうそと不正でできている?

 食品偽装や論文ねつ造、公金横領…世の中は、あきれるほどのうそと不正であふれている。いったいなぜなのか? ハーバード大学などの行動経済学 者たちは驚くべき研究結果を発表した。「バレないと思えば大半の人は不正を働く!」「偽ブランドを身につけるとズルをしたくなる!?」「創造性が 高い人ほどうそや不正が多い!?」などだ。架空の「うそ不正撲滅研究所」を舞台に最新の研究成果をドラマバラエティーで伝えていく! 

残念ながら見逃しました。放映された22日は名古屋におらず、山で星を見ていました。録画もしていません。それほど興味がないので再放送されても たぶん見ないでしょう。というか、最近引っ越しして、テレビがつながっていません。見なくても、上の説明で大体想像がつきます。

おいおい、NHK、最近の嘘で最大なのは911事件の嘘だろ。そんなでかい嘘を見逃しておいて食品偽装ぐらいでお茶を濁すのかよ。 HIV/AIDSの嘘もでかいぞ。

というのが率直な感想です。でかい嘘は他にもたくさんあります。書ききれません。NHKの下っ端の社員がどう考えているかは分かりませんが、ディ レクターレベルは確信犯的にこのような心理戦をしかけているのだろうと、好意的に解釈しておきます。心理戦というかpsyopというか情報錯乱工 作です。その内実は、視聴者の注意を小さな嘘や不正に向けておいて、世界最大規模の嘘を見落とすようにさせる作戦です。ハーバードなんて権威を持 ち出せば、無知な視聴者はころりと騙されてしまうだろうと計算しているのでしょう。

2011年の作文で大昔に読んだ Sissela Bokの Lying という本を話題にしましたが、それがJFK暗殺の嘘に触れないのと似たようなものだと考えれば理解できます。目くらまし作戦です。

ハーバードの行動経済学者というのがどういう研究をしているのか細かくは知りませんが、以前、空港かどこかで平積みになっていた Freakocomicsという本を読んだことがあって、その系統の経済学なんだろうと想像します。Freakonomicsは結構面白かったで す。大相撲の八百長や、SAT(アメリカの共通一次試験のようなもの)のスコア捏造などの分析が記憶に残っています。ただ、その著者が嘘の研究の ためにランス・アームストロングの助言を仰いだというのを知って、なんだ、こいつらも結局ランスに騙されていたんじゃん、という感想を持ちまし た。統計学をちゃんと身につけておれば彼らのような分析は朝飯前なんでしょうが、その程度の分析力ではもっと大きな嘘は見抜けないということなん でしょう。SATの点数捏造などツール・ド・フランスの八百長と比べると子供だましですが、それでもツールの嘘の背後にはEPOの使用をめぐる製 薬業界の腐敗やがん治療そのものの腐敗が存在します。毒を薬として売り、その「副作用」に対する補償金をコストとして計上しているというビジネス モデルが製薬会社の存在の根幹にあることを考えるとツールの嘘なんて子供だましです。嘘の背後にはもっと大きな嘘が存在しているということです。 多くの巨大製薬会社は軍事産業の一角を形成しており、国の金を使って生物・化学兵器の開発もやってますから嘘の規模は際限がありません。

経済学という学問体系にも嘘があります。嘘というか大きなタブーが存在します。一つ目は、通貨創造のタブーです。信用創造は通貨創造と同一であり その権力の内実を論じることはタブーになっています。ドルとか円とか言えば聞こえがいいですが、今日の世界の主要通貨は、かつて軍閥が割拠してい た頃の軍票と変わるところがありません。政治権力による裏打ちがなければただの紙切れです。経済学はその権力構造を論じることを避け、簡単な数学 を使ってモデルを作ることで成り立っています。もうひとつは、シーマー・メルマンが以前紹介したビデオクリップで語っていたように、市場経済に過 剰に焦点をあて、軍事産業のような独占経済について目をつぶることで経済学が成り立っているという点です。世の中に流布しているマクロ・ミクロ経 済学の教科書は分厚いのが多いですが意外に中身が薄く、市場経済について大量のページを割くものの、独占・寡占市場についてはだんまりを決め込ん でいます。中央銀行が金利をコントロールしているところから判断するにいわゆる市場主義経済圏の金融産業は統制経済と言ってよいと言えるのに、教 科書では市場主義ばかりが強調されます。アメリカの政治言説では、共和党は一方で市場主義を礼賛し、他方で軍事産業という独占産業の最大の支持者 となっています。この矛盾に多くの人は気づいていないようです。

NHKの番組に戻るとハーバードの行動経済学は上述した主流の経済学の間隙を縫って生まれたもので末梢的なものです。タブーを正面から論じると研 究者としてのキャリアが作れないので小さな嘘をつつくことで成り立っています。読者の目を小さな嘘に向けることによって巨大な嘘から目をそらす役 目も果たしていると考えられます。

NHKが言う「論文捏造」というのは小保方事件のことを指しているのでしょうか。私はここ数年新聞の購読はしていませんが、図書館で朝日新聞が STAP細胞について結論が出たとでかい見出しで報じているのをちらっと見ました。放射能汚染についてまともな科学を報じない朝日新聞にSTAP 細胞問題の決着をつけてもらおうなんて毫も期待していません。科学は勝手に決着をつけるのでゆっくりじっくり待てばいいのです。小保方論文に関し ては笹井さんが自殺しているのですから、その背後を探ることこそ報道ジャーナリズムの仕事であるはずなのに、小保方さんを悪人に仕立て上げてそれ で決着をつけようとしているのを見ると背後に不気味なものを感じて当然でしょう。モノづくりで食べていけない日本はアメリカの後追いをして、軍事 産業や医療産業に目を向けています。医療の領域では再生医療は将来のドル箱です。小保方論文に報道メディアが飛びついたのは、金儲けを嗅ぎつけた からに他なりません。IPS細胞の研究を見ればわかるように、将来の国富がかかっているのでアメリカも日本も国がシャカリキになって研究開発に金 を注いでいます。小保方・笹井事件の背後にはそのような大きな政治力学が働いていると考えて不思議ではありません。小保方さんが一人で論文を捏造 した、で済む問題ではありません。

何故世の中にはここまで嘘が氾濫しているのか。そんなの明白です。組織の自己防衛本能です。原子力発電にしろ水素燃料にしろ科学的に考えて無理が ありますが、その無理を承知で単に金が回るからという理由だけで産業を打ち立ててしまうと、それを解体しようとする際には強固な反発があります。 嘘だろうが何だろうが屁理屈をこねて既得権を守ろうとします。政治的勢力はその既得権と手を結びます。

ここでちょっと思考実験をやってみます。大学の英語教育は全然効果をあげていないから、文科省が学生のTOEFLのスコアに応じて大学への補助金 を出すという制度を作るとします。そうなるとFreakoconomicsが論じていたような不正な得点捏造が多発するでしょう。一旦補助金をも らえば毎年一定レベルを獲得するためには毎年似たような得点を維持する必要がありますが、それは現実的に不可能だからです。まあ、文科省の官僚の 皆様は頭がいいのでそのような制度を設計することはないと思いますが、どうなんでしょうか。官僚組織も自衛のために仕事をしているふりをしないと いけませんから、不合理な制度が出来てしまっても何も不思議はありません。世の中、金がまわれば嘘だろうが不合理だろうが通ってしまうのが世の習 いであるというのが、残念ながら事実であるようです。

(Dec. 2014)


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