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木下黄太のウクライナ報告

書きたいことが次々に出てきますが、中断・延期して最近聞いた講演を紹介します。

木下黄太さんのウクライナ報告が一宮で開かれ行って来ました。入場料を払っただけの価値はありました。全く目新しい情報はそれほどありませんでしたが、現 場を見た人の話を聞くというのはとても有意義です。書物やブログから得る情報以上の何かを得ることができます。

ヤブロコフさんの本にチェルノブイリ事故から25年経ってキエフの学校の生徒の8割が病気であるという記述がありますが、木下さんの話はそれを裏付けるこ とになりました。現状は悲惨です。中学校の生徒の半分は体育の授業が受けられないそうです。キエフの名門小学校では、生徒の集中力を続かせるために興味深い体操をさ せていました。木下さんによると、初期の土壌汚染は東京ほどではなく、食物汚染も思ったほど高くないので、キエフで被曝した人が染色体を傷つけられ遺伝で 子孫に異常が発現している可能性が高いのではないかということでした。

木下さんは有料のメルマガを始めるということなので、彼が金銭的対価を求めている情報をここで全部公表することはしません。彼が発信する情報を手に入れたけ れば、彼の講演会に行くなり、メルマガに登録してください。中日新聞が取材して記事を書いたようですが、第三者の要約で満足しないで実際に彼の講演に行っ て、質問することを勧めます。そして自分の頭で考えることです。命がかかっているので、判断を他人任せにしてはダメです。

彼の話を聞いて考えたことを少し書きます。

木下さんのような人は、事故から3年経った今でも、いたずらに恐怖を煽るだとか、「放射脳」だとか、揶揄中傷に晒されています。しかし、もしキエフで起 こったことが東京で起こるとすると、あと2年ぐらいで人々の意識が変わり、それから3年くらい経つと政府の人間の意識が変わり現実を受け入れるようになる だろうと予測できます。もちろんIAEA=ICRP=WHO=UNのドグマは建前として残りますが、本音の部分ですべての人々の意識が変わり、放射能汚染 と自分の健康被害状態を直接に結びつけるようになります。そうなると木下さんのような人も、政府の中で影響力を持たざるを得なくなります。事実ウクライナ では、政府の高官の中に放射能の健康被害について積極的に発言している人が多くいます。反原発運動で勢力を伸ばした「緑の党」系の活動家も政府の中に入り 込んでいます。しかし、そうなるためには医師が立ち上がらなければなりません。ウクライナでは医師達が危機的な現実について声を上げ始めてから、すべてが 変わったそうです。木下さんの感触では、日本で同様な経過を辿るかどうかは予断を許さないということです。私も同感です。日本の民主主義が試されることに なるでしょう。ウクライナでは医者の中に女医の占める割合が高いということが大きな要因として考えられます。女医の割合がそれほど高くない日本では、同様 な進展がないかもしれません。

キエフのチェルノブイリ博物館はもともとは消防署でした。その目的は、チェルノブイリ事故の収拾に投入されて殉死した消防隊員の功績を称えるためでした。 チェルノブイリ事故の全貌を記録保存するための博物館ではありません。日本では福島ではなく、東京の消防隊員が突撃部隊として投入されました。それ以前 に、ベントに向かったFukushima 50も多大な貢献をしました。彼らの功績を称える博物館を日本はいつ設立するのでしょうか。一体彼らの内の何人が国のために犠牲になったのでしょうか。 チェルノブイリ博物館では、犠牲になった消防隊員の顔写真が展示され歴史に名を刻んでいます。日本の英雄たちは同様の扱いをうけることになるのでしょう か。靖国神社を巡って、色々議論するより、このような事例を元にゼロから日本という国の本質について考えたほうがいいのではないでしょうか。

東京都知事選に出馬した細川さんがどの程度、東京の汚染状況を理解しているのか、わかりません。ただ、彼が、原発問題は日本の存亡がかかっている大問題だ と、はっきり主張しているのを聞きました。そんなことは物事をちゃんと理解しているひとにとっては自明ですが、まだ事故から3年しか経っていないので、東京 の汚染を自分の健康の問題として理解できない有権者が沢山いても不思議ではありません。あと数年経ったら圧勝出来ても、2014年だと難しいのかも知れま せん。東京の有権者が賢い選択をしてくれることを祈るしかありません。

(Jan. 2014)

追記:

質問した人の中には疫学的な厳密さを要求するような口ぶりの人がいて、木下さんは自分はジャーナリストであり学者じゃないと繰り返していました。ちょっと喧嘩腰にも聞こえましたが、彼は常時不当な攻撃に晒されているのだから仕方ありません。ICRPのドグマに疑問を感じずに今まで来てしまった人も沢山いるのでしょう。ちょっと考えれば一人一人の初期被曝量なんて正確に計測できないので疫学の計算もまともに出来るわけがないというのは自明ではないでしょうか。教科書に合わせて論文を量産するのが科学者の仕事ではありません。まともな科学を目指すなら、現実に健康被害に苦しんでいる人の症状を記録したり、地理的分布を調べたり、バイオプシーをしたり、要するに事実から出発するしかないのではないでしょうか。ICRPの教科書に合わせて疫学研究するなんて頭が悪すぎます。木下さんの話によると、実際ウクライナでは汚染・被曝の状況を一番はっきり把握する方法は、そこに住んでいる人々の健康状態を調べることだという当たり前の事実を研究者は当然のこととして受け止めています。私は、いわゆる「文系」人間ですが、一応、高校時代には天文学にも惹かれたので、物理学や数学には深い尊敬の念を持っています。医学や薬学なども「理系」なんだから、物理学のように厳密な学問なんだろうとぼんやり考えてきましたが、最近は、ウイルス学、感染症研究、放射線疫学などなどのイカサマぶりに呆れています。まあ、大学には他にもイカサマ学問が沢山あるので皆さん気をつけてください。



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