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オーディオ業界のぼったくり

最近自宅のオーディオシステム(hifiシステム)を新しく買い換えました。古いのが故障や寿命で使えなくなったので仕方がありません。私は音楽が大好き な人間ですが、オーディオ装置にこだわりは全くありませんでした。とは言っても、ラジカセやミニコンポでは満足できないので、アンプやスピーカーは別々に 購入してきましたが、今まで一番安いグレードのもので十分だと考えてきました。そこそこ良質な音が鳴るからです。私の友人に、西洋古典音楽を専門にしてい る人がいます。音楽の理解は私とは比べ物にならないくらい深いのですが、彼は総譜は沢山所有していてもCDはそれほど所有していません。再生装置もこだわ りがあまりなく私と同程度の最低限の装置で満足しているようです。調査をしたわけではありませんが、このような人は大勢いると思います。最近では、音楽が 大好きだけれど、Ipodで満足という若い人達が多いでしょう。

しかし、今回、1本数千円という激安とも言えるスピーカーを通販で買い、それが今まで私が所有したシステムの中で最高の音を鳴らしてくれたので、高級オー ディオという世界を覗いてみたくなり、機会があるごとに色々な店で試聴して来ました。そして遂に最近中古ではあるものの一本70キロ(台座含む)近い本格 的なスピーカーを買ってしまいました。その過程で経験したことを綴ってみたいと思います。私が書いている一連の作文は、嘘と真実と腐敗をテーマにしている ので、その線に沿って書こうと思います。

最初にスピーカーを試聴した店では、まず最初に予算を聞かれました。1本10万円程度だと適当に答えたら、11,2万する欧州製の小さな箱のスピーカーを 勧められました。持参したCDをかけてみると、なめらかな音は出ますが、迫力がありません。低音が絶対的に不足しています。1本7千円の自宅のスピーカー より駄目だな、と思いましたが、口には出さず、別のもっといいのを聞かせてくれと要望を出すと、今度は、欧州有名メーカーの1本100万以上するデカイの を聞かせてくれました。これは明らかにすばらしい音を出していました。それから少し世間話をして店を出ました。

この店は何万もする高額なスピーカーケーブルを売っています。他にも、詳細は書きませんがオカルトまがいの製品も扱っています。何か胡散臭いものを感じた ので、ネットで調べると、銅線ケーブル専門の卸業者が、オーディオ業界を糾弾する文章を載せているのを見つけました。その人は沢山のケーブルメーカーの製 品を、楽器屋やオーディオ専門店に卸しているのですが、オーディオ専門店の中には、客に一本何万円もするケーブルを薦めておいて、自分では一番安物を使っ ている腐敗した業者がいるというのです。私が持参のCDを試聴したこの店もひょっとしたらそんな店なのかもしれません。ちなみに私が使っているスピーカー ケーブルはホームセンターで手に入る普及品です。そこそこ太く公称純度も高いのでそれでいいと思っています。一本数万なんてそんなカネ出す気はありませ ん。スピーカ1本よりケーブル1本の方が高価だなんてありえません。

他にも数回に分けて合計5軒まわって試聴しました。私の場合、市内は自転車で動きまわるのでこのようなことが簡単に出来ます。その結果、たどり着いた結論 は、でかくて重くて高価なスピーカーは良い音がする。小さいのは駄目。小さくても低音が出るとうたっているのがあり、確かに出ないことはないが、物理的に 無理がある。低音はやはりでかいスピーカーで出すのが自然である、という当たり前といえば当たり前のものでした。

最後に訪れたのが大須でした。大須といえば、名古屋の秋葉原です。オーディオ専門店が数軒あります。そこの一軒でデカイのを視聴させてくれと頼んで出てき たのが、現在所有している、馬鹿でかくて馬鹿重い国産メーカーの製品でした(この店にはもっとでかくてもっと重いのもありましたが、大邸宅に住んでいるわ けじゃないので購入対象からは外しました。)確かに、中古品を買うのは、経年劣化の問題があるので躊躇われましたが、2日にわたる2回の試聴を経て購入に 至りました。現状の音質が10年維持できるなら上出来、その後は同じ金額を払って音質が維持できるなら喜んで払うつもりです。家具としてもりっぱな製品な ので、追加投資にためらいはありません。

現時点ではスピーカーといえば外国のメーカーが日本メーカーを圧倒しています。これは不思議といえば不思議です。というのは私が買った中古の国産スピー カーでも現時点で新品として発売されている欧州の有名メーカーの高級製品と比べて音質の面で、全く劣っていないからです。クラッシックを聞くなら本場欧州 のがいいとか、日本の技術者は生を聴く機会が少ないから、すぐれたスピーカーなど作れない、などなど、あまり根拠のなさそうな議論も聞かれますが、論より 証拠、実際聴いてみれば、20-30年前に日本のメーカーが世界のトップレベルのスピーカーを作っていたということがわかります。そして、そのスピーカー は今でも世界のトップレベルの性能を出していると思います。言い換えれば、スピーカーは数十年であまり進歩していないということでしょう。現在のほうが、 コンピュータのシミュレーション技術が20年前より格段に上なので製品開発もやりやすくなっているはずですが、製品の質にそれほど進歩がありません。ス ピーカーをめぐる基本的な技術は数十年前に十分確立されていたのだと考えられます。

最初に試聴したあの胡散臭い専門店だけでなく後に訪れた家電量販店でも最初に視聴させてもらえるスピーカーは欧州の有名メーカーのものであることが多く、 それもあまり大きくないものでした。それでも1本20万というのがザラです。2本で40万になります。多くの人が売れ筋だからというので、かなり無理して 購入し、しばらくしたらもっと大きくて、低音がよく鳴る1本50万以上のものに進んでいくのだと想像します。日本のメーカーなら同等品が新品でも半額以下 で買えるのに何故店が売りたがらないのか、不思議と言えば不思議です。想像するに、買う側に舶来崇拝意識がまだ残っているのと、欧州の有名スピーカーメー カーはその代理販売を日本のオーディオメーカーに任せているので、代理店が儲かるには、日本のメーカーの安いスピーカーを沢山売るより、消費者の舶来信仰 に便乗して、舶来品を高く売るほうが楽だからなのではないでしょうか。

最近買った馬鹿重いスピーカーについて少し書きます。

これは密閉式なので台座と一体になった高剛性の箱にスピーカー3個を配置し、箱自体はびくともしません。振動板しか震えず、箱の共鳴は徹底的に排除されま す。一方、最初に買った1本数千円のスピーカーは箱全体が震えバスレフポートが前向きであるにも関わらず後ろ向きに音がばんばん漏れます。ですから壁に当 たって前方に跳ね返ってくる音が大量にあります。一方、現在所有している重い奴は後ろ側に音が殆ど漏れません。箱の中の詰め物が吸収しているようです。集 合住宅で使用するにはこちらの方がいいと考えられます。音場の調整については難しいことはよくわかりませんが、密閉式の方がやりやすい気がします。それか ら密閉式の方が中にある電気回路の寿命も長くなるのではという期待があります。中古を買ってしまったので、自分に都合のいい願望かもしれませんが。

中音と高音用の振動板には炭化ホウ素が使われています。声やソロピアノやその他楽器の音色の再生がリアルなのは、この素材に起因すると考えています。振動 板は高音用の場合特にその硬さが重要になります。高周波で振動させても変形しない硬い材料が必要です。欧州の某有名メーカーはダイアモンドを使った振動体 を開発して高音用のスピーカーに使っているくらいです。炭化ホウ素はダイアモンドに似た性質を持っているそうです。

ホウ素と聞くと私の場合、原発で核分裂反応を止めるために、中性子を吸収する元素として使われるという事実を最初に思い浮かべます。福島事故以前には全く 知らなかった情報です。このスピーカーについて色々調べると、製造工場が福島の郡山にあったことが分かります。ここまで書けば知っている人はすぐメーカー の名前が思い浮かぶでしょう。ちゃんと調査したわけではないので全く想像で書きますが、このメーカーは原子力関連技術をこのスピーカーの開発に使っているかもしれません。欧州や北米のスピーカーメーカーは中小企業が多いのですが、日本のこのメーカーは巨大な資本を背景に当時としては最先端の計算機シミュレー ションを取り入れ、素材も系列企業の原発関連のものを流用し、猛烈な勢いで世界最先端のスピーカー技術レベルを達成してしまったのだと想像します。い づれにせよ、このスピーカーとの出会いは、私にとっては原発事故との関係でとても興味深いものとなりました。郡山の工場は2005年ごろまではスピーカー パーツを供給していたようですが、もうすでにアフターサービスを停止しています。密閉式のこのスピーカーはとても頑丈に組み立てられており素人が簡単にい じって分解できるようなものではありません。代替パーツも手に入らないので、壊れたらお終いです。

このスピーカーは低音を出しにくいという感想がネットで多く聞かれます。私はそう思いません。現状で低音用のウーファは元気に動きます。ただ、定期的に ウーファを使っていないと周りのエッジが硬くなる傾向があるらしいので、時々、重低音を多く含んだ音源を鳴らしてエッジが固まらないようにしています。 ネットで検索すれば音源ファイルはすぐ見つかります。以前使っていたスピーカーはエッジがウレタンだったので、新品のウレタンを手に入れて張り替える以外 再生する方法はありませんが、このスピーカーの場合、そのような方法を使ってエッジが固まるのを遅らせようとしています。

このスピーカーを買うまではサラウンドとかホームシアターというような、後ろにもスピーカーを置いて全方向の音響環境をつくることに多少興味があったので すが、今はかなり薄まりました。楽器の音色を生々しく再生できるので、前2チャンネルだけでも臨場感があります。目の前でチェロが鳴っているように聞こえ ます。音程をきれいに出すように演奏しない楽曲の場合特にリアルさが増します。音楽を聞くというより、音色に注意を払うのは何だか邪道であるようにも思え ますが、音がリアルなんだから仕方ありません。こんな世界があったのかと驚いています。

オーディオ業界の話に戻ります。

最終的に、重要なのは、自分の耳を信じることでしょう。多くの人が、小さくてバカ高いボッタクリ品を買わされてしまうのは、自分の耳を信用せず、店員の巧 みな話術とブランドに幻惑されてしまうからです。最低限の音響工学の知識も騙されないためには必要でしょう。巷では、オスプレーが日本の防衛には必要だと か、原発は安くて安全だとか、嘘をばらまいている屑のような御用学者が偉そうにしています。そいつらと比べるとオーディオ業界の嘘はかわいいものですが、 毎回数十万ぼられるわけですから、最低限の自衛は必要です。福島後にばらまかれた放射能については何も言わないくせに、がん検査をして早期発見し、胃を切 りましょうと勧める癌専門医も同類です。このようなセールストークは枚挙に暇がありません。皆さん騙されないようにしてください。

付記:重くてでかいスピーカーを薦めてきましたが、中音と高音を正しく再生できる小さなスピーカーにサブウーファを追加するというやり方があるのに今気づ きました。ただ、この場合、組み合わせたスピーカーシステム一式を視聴する必要があると思います。

そこそこ満足できるシステムを作るのに大金は必要ありません。私が大学の部屋に置いているシステムは、スピーカー1本3000円、サブウーファ5000 円、アンプ5000円ほどです。全部ハードオフで買いました(値札が残っているスピーカー以外はうる覚え。確かなのはすべて1万円以下だったというこ と。)アンプが安いのは半分壊れているからです。音はきれいに鳴ります。

(April 2013)




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