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神と陰謀論

「陰謀論」とか「陰謀論者」ということばは、通常、政府公認の公式説に疑問を持つ人々を十把一絡げに攻撃するために用いられます。その起源については、以 前、研究の余地があると書いたことがありますが、もうすでに出ているようです。

deHaven Smith  "Conspirary theory in America"

JFK暗殺の公式説はリー・ハーヴィー・オズウォルドの単独犯行であるというものですが、そんな戯言を信じる人はもう今日では殆ど残っていないでしょう。 しかし、当時はインターネットもなく、メディアを買収すれば、簡単に国民を騙すことが出来ました。公式説に疑問を持つ人を、「陰謀論者」ということばで、 馬鹿にするという方法も、その頃CIAによって考案され、メディアを通じて一般社会に広まりました。物事を正しく理解している人にとっては、JFKの暗殺 にCIAが関与していることは疑いの余地はありませんから、そのような工作活動はCIAによるもみ消しであると考えるのが自然です。真実が自分の側になけ れば、まともに議論すれば負けますから、相手を罵倒することでしか反論(?)できないのです。

論理的に考えれば、そのような意味で使われている「陰謀論」ということばの胡散臭さは明白ですが、洗脳が深くて未だに理解していない人がいるようです。私 は最近英語使用者が多く集まるパーティで、ボストンマラソンのテロ事件は政府当局の自作自演の可能性が高いと言ったら、あるアメリカ人に「陰謀論者」呼ば わりされました。彼は、私の議論を聞こうともせず、お前は、アポロ11号が月に着陸したというのは信じるのか?と訊いてきました。ボストン・マラソンテロ の公式説に疑問を持つような「陰謀論者」なら、アポロの月面着陸がNASAのでっち上げであると主張する頭のいかれた連中と同類だと考えたのでしょう。 ネットを眺めていると、そのような雑なレッテル貼りは、工作員が広めて、あまり物事を深く考えない一般人の間に浸透させていることが見て取れます。ネット というのは諸刃の剣ですね。

そこまでアホでなくても、「陰謀論者」をせせら笑う連中は少なくありません。政府機関は複雑であり、縦割りが普通で、連携も取りにくいので大掛かりな陰謀 を成功させるのは容易ではない。何でも背後に陰謀を読み取ろうとするのは、スパイ小説の読み過ぎだよ、中世ならいざ知らず、現代社会は複雑なので様々な偶 然が重なって陰謀のように見えるだけで、本当はそうじゃない、と心底から信じている人もいるようです。そのような人は、バカな「陰謀論者」より自分の方が 知的優位に立っていると考えているかもしれません。何でも神様や悪魔のせいにしてしまう無教養な大衆より自分の方が偉いんだと思っているのでしょう。

確かに、生物の進化が偶然の積み重なりであり、神様がゼロから設計したのでないことは科学的に明らかになっています。その事実を理解できない人が米国に多 く存在するというのも、世界的に広く知れ渡っています。911事件やボストン・マラソンテロや、JFKの暗殺についての公式説を疑う人々を、そのような無 知蒙昧なアメリカ人になぞらえて、自分はそんなアホではない、と過剰に反応しているのかも知れません。

ここで神を話題にするのは奇をてらっているのでも何でもなく、陰謀論というのは、陰謀をデザインする人間を想定するので基本的に神を想定するのと同じ事で す。日本人にとって神とは、恐ろしい存在、偉大な存在ならなんでもいいので、世界を誰(何)が創造したかという疑問は神の概念とは何の関係もありません。 しかし、ユダヤ・キリスト・イスラム教のような一神教の場合、その神は世界の創造者でなければなりません。こんなに複雑で美しい世界が偶然の積み重ねで出 来たとは考えられない、世界を超越する神によってのみ可能になったのだ、という議論はアメリカに住めば嫌というほど聞かされます。日本に住んでいるなら、 その神とやらを作ったのは一体誰だよ、と言って相手にせず、無視することも可能ですが、アメリカにいると、多勢に無勢なので劣勢を強いられます。(イスラ ム圏に住んだらもっと大変でしょう。)

しかし、最近では、さすがのアメリカも進化論をちゃんと学校で教えなければならないので、神による世界創造説は、intelligent designという新しい装いをまとって再登場しています。神という言葉を使うと宗教を科学に持ち込むことになるので、何かわからないが知性を持った何ら かの存在が世界を設計(デザイン)し、創造したのだと、言い換えた訳です。

という訳で、天地創造者としての神を信じる人が多いアメリカでは、陰謀説を信じる人が多くても不思議ではないはずですが、実際はそうではありません。 CIAが考案した議論を封じるためのレッテル貼りとしての「陰謀論」ということばがメディアを通じて多くの人に浸透しているからです。私の印象では、その ような人は神の存在を信じている人の中に、多い気がします。本来ならば、世界貿易センター爆破解体事件は誰かの陰謀であると考えるのが自然であり、検出さ れた爆薬の組成から考えて米軍が関与していたと考えるのが自然なのですが、アメリカ人で神を信じている人達の多くは、自分の政府がそんなことをするはずが ないと信じこんでいます。彼らは、アメリカの「民主主義」をナイーブに信じており、その信仰は幼い頃教会の日曜学校で習った天地創造者としての神への信仰 と重なります。学校や教会で教わったことに何の疑問も持たずに大人になってしまったような人達です。

そのようなアメリカ人の一人と関わり、嫌な経験をした覚えがあります。その人は、数年前、私がランス・アームストロングのドーピングについて語った時、 「お前のような陰謀論者はどうしようもないな」と一言で切り捨てましたが、ランスが告白した今となっても、私を「陰謀論者」呼ばわりするのでしょうか。も う長い間会っていないし、口を交わしたくもない相手ですが、興味津々です。その彼は、その数年前、神の存在について議論した時、神を知らない哀れな異教徒 である私に憐れみの一瞥を放ったものでした。

神と陰謀論については、ここで終わりなら、話は簡単なのですが、まだ先があります。

911事件についての真理究明運動の中心的人物がDavid Ray Griffinであることは疑いを得ません。彼は、事件当初アメリカ政府が公表した公式説を信じたのですが、しばらくして、Paul Thompson の Terror timeline などの研究に触発され、2004年に New Pearl Harbor を出版した後、今までにすでに10冊近い著作を911事件の究明に費やしています。911事件についてのドキュメンタリ映画として著名な Loose Change も David Ray Griffin の監修を受けています。

その彼が神学者であるというのは、とても興味深い事実であると考えます。

個人的な話をすると、私が、911真理究明運動に目覚めたのは、David Ray Griffin の Let's get empirical という講演をネットビデオで聴いたからです。色々調べたら、彼の New Pearl Harbor を日本語に訳したきくちゆみという人がいるのを知り、彼女にメールを書いたら、Richard Gageの www.ae911truth.org を教えてくれ、ああ長い間騙されていたんだ、と初めて気が付いた次第です。今となっては、遠い昔の話ですが、未だに騙されている人が沢山いるので、仕方な しに、大学の英語の授業で毎回取り上げています。New York Timesが一面トップで取り上げたり、NHKが7時のニュースで放送してくれれば、私がそんなことをする必要がないのですが、腐敗した政治勢力に買収さ れた屑メディアが真実を伝えるなんてありえないので、諦めて、毎学期授業で取り上げています。大学のメディア研究者こそ率先して話題にすべきですが、彼ら はアホなのか自己検閲しているのか、カネをもらって黙っているのか、全然協力的ではありません。

David Ray Griffinの神学者としての仕事については私はよく知りません。ただ、一口に神を信じると言っても、猛烈に複雑なニュアンスを含むものなのだ、と彼の 講演を聞くと感じます。神ということばは、とても曖昧であるので、ひょっとしたら、彼がユダヤキリスト教的な神を信じていない可能性すらあるかもしれませ ん。

彼は深いユーモアのセンスを持った人で、私にはとても印象に残った言葉があります。ある講演会(確かサンフランシスコで開かれたもの)で、聴衆の一人が、 「911真理究明運動が広がり、米国政府が、国民に向かって真実を打ち明ける時がやってくるかと思うか」と問うたのに答えて、否定的ながらも、「NIST は物理学的にはありえない説明を世界貿易センター倒壊について行った、彼らがそんな奇跡を信じているなら、我々も奇跡を信じようではないか」と答えたので す。こんな含蓄のある言葉を咄嗟に発することが出来る人はザラにはいません。神学者なので尚更です。

私は個人的には神についての議論に興味がありません。神ということばがあまりにも曖昧であるので、そんなものをめぐってぐだぐだ議論しても意味がないと考 えるからです。ただ、David Ray Griffin という神学者の存在を知り、神学者に対しての考えを改めることになったのは確かです。しかし、世界中に何万何十万何百万ものジャーナリストや国際政治の専 門家や歴史研究家やアメリカ学者や軍事専門家、などなどが存在するにも関わらず、21世紀の世界史においてもっとも重要な事件と考えられる911事件につ いて正しい理解を持つことができず、その解明の仕事を一手に引き受けてきたのが、退職して年金暮らしをしていた神学者だったというのは、強烈な皮肉です。 福島原発事故についてもそうですが、いわゆる「専門家」と呼ばれる連中がいかに無能なのかがよくわかります。そして、真実というものが、それを発見した り、伝えたりする人の、属性とまったく関係ないという事実を再確認させられます。

(July 2013)




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