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選挙について

前の作文でアメリカの大統領選をコケにしたので、釣り合いを取るために日本の選挙について書きます。そうしないと、あいつは「反米だ」とか「あいつはアメ リカ嫌いだ」とか頓珍漢なことを言い出す輩が出てくるからです。物事をそのような対立でしか見られない人が多いから世界はここまで狂った状況になってし まったので反省してもらわねばなりませんが、とりあえず予防線を張るために日本の悪口を書いておきます。

日本の選挙では基本的に鉛筆で支持する候補者名を書きます。この方法だと、票の数え直しが簡単にできるし、投票した記録が残るし、何も問題が無いように思 えます。しかし、これも簡単にクラックできます。次の方法は私が書物を通して知ったものですが、同じ情報はインターネットに普通に転がっているでしょう。

まず、動員する有権者を同じ部屋に集めます。仮に30人とします。最初の1人に投票に行かせます。その際、その人は、無効になる紙切れを投票箱に入れ、空 白の投票用紙を動員された有権者が待つ部屋に持って帰ります。2番目の人は、皆の前でその投票用紙に予め決められた候補者の名前を書かせられます。そし て、その投票用紙を持って、投票所に行き、箱に入れ、自分がもらった空白の投票用紙を部屋に持ち帰ります。3人目以降は同じ事を繰り返します。この方法を 使うと、最初の一人は無効となりますが、29人同じ候補者に票を投じたことになります。組織票を確実に確保したい産業界や労働組合はこの方法を使っている でしょう。大都市など動員できない浮動票が多くを占める選挙区では勿論使えませんが、中央から公共事業を取ってくる議員が落選してしまえば、経済的に大打 撃を受けるような地方では、このような汚いやり方で組織票を維持していても不思議ではありません。

日本のやり方はこのような欠陥がありますが、先に書いたように、票の数え直しができるし、記録が残るので決して悪い方法であるとは言えません。アメリカで この方法が使えなくて、パンチカード式の投票機械を使っている選挙区があるのは、候補の名前を書けない文盲の有権者に配慮しているのと、上に書いたよ うな秘密投票を不可能にする抜け道を防ぐ目的があると考えられます。

アメリカの原始的な投票機械を技術的に進化させると、タッチパネルで投票させ、結果はコンピュータが集計するというやり方になります。2000年のフロリダ は hanging chads に代表される呆れた騒動を引き起こしましたが、タッチパネル式を使えばその解決にはひとまずなります。しかし、この方法は、もっと厄介な不正を誘発すると 考えられ、批判的な議論が今まで何度も提出されています。具体例を挙げると、Diebold Election Systems が開発したタッチパネル式の方法はジョンズホプキンズ大学の研究者によってセキュリティ関連の問題が多すぎると批判されています。1人の有権者が何度も投票できたり、集計に関わる人達が数を操作 したり出来るなど問題があります。そのような研究に基づいて、ドイツ政府はアメリカの投票機械製造会社を締め出すことを決定しました。 ドイツの考え方は、集計した数に疑念が生じた場合、票の数え直しをする必要があるが、タッチパネル式ではそれが不可能であるという点に集約されます。その ため投票機械製造会社はアメリカでは商売が出来ても、輸出には苦戦しており、倒産した会社もあるようです。

選挙にはこのような制度的技術的な欠陥があります。しかし、問題は他にも色々あります。次に書くことはひょっとしたら政治学の教科書に載っているほどの基本的なことか もしれませんが、放射能医学など素人が見ても奇妙な学説が公式説としてまかり通っている場合が往々にしてあるので、素人がこのようなエッセーで論じてみる 価値はあるでしょう。

私は前の総選挙で民主党に票を入れました。政権交代が実現し、鳩山さんや小沢さんが総理になれば、アメリカ一辺倒の軍事経済政策から離れ、欧州に近づいて もう少し自立した政策運営をしていくのではないかと期待したからです。今から考えれば大甘だったと考えざるを得ません。現実は、ばたばたとクーデタが続 き、今の野田政権はアメリカと核産業の傀儡政権のようです。政権交代を実現するために小選挙区制を導入したはずですが、別に政権交代を実現したからと言っ て、以前の中選挙区制と比べどのような利点があるのか全く不明です。草の根に支えられた小さな政党が当選しにくくなったので欠点の方が大きいのではないか すら思えます。アメリカのように、共和党と民主党しか存在しないような事態は、実質的にファシスト政権と変わらないので、日本はそうならないようにしなければなり ませんが、もうなっているのかもしれません。

名古屋大学の英語の授業では、最近、英語による発表を本格的に取り入れるようになりました。去年、法学部の学生に発表してもらったら、日本の法律の専門家 がベトナムなどの発展途上国に、日本式の選挙制度を移植しようとして法整備を進めているという内容の発表がありました。それを聞いて、なんとまあご苦労な ことよ、という感想を持たざるを得ませんでした。日本の選挙制度にこれだけ欠陥があるのにそれを輸出するというのは、なかなかの根性です。かなり呆れまし た。でもまあ、ベトナムならまだいいのかもしれません。ひどいのは、イラク、アフガニスタン、リビア、シリアなどの国への、いわゆる「民主主義」の輸出で す。アメリカが率先してNATOと米軍が武力を使ってやる「あれ」です。最近は傭兵の割合がどんどん増えています。正規軍が撤退したと言っても傭兵が代わりをやっているだけです。 

イラクには選挙がありますが、それを得るために失った代償が大きすぎます。フセインは独裁者でしたが、イラクの大学は中東の最高レベルであり、女性も多く 学んでいました。今では、女性は街も安全に歩けません。ガダフィが支配していたリビアでは、平均市民の生活水準がアフリカでトップクラスだったので、一般市民が 政権崩壊を望んでいたとはとても考えられません。リビアの現在の状況は無政府状態に近いようです。現地通貨はどうなったのでしょうか。イラクやリビアのような国々は資源の収奪と大国の覇権争いの犠牲になっただけなのに、その事実を理解できない人がアメ リカや日本に多くいます。大メディアのプロパガンダの威力はすごいものだと感心させられます。アメリカ流の二大政党政治に絡め取られた政治言説空間では、共和党は 中東に「民主主義」を広めるために積極的だが、民主党は弱腰であるから駄目だ、というような倒錯的な議論が出て来たりします。そこまで行くと脳が腐ってくるは ずですが、そのような議論に慣れてしまうと、それが当たり前になってしまうようです。独裁者を倒して「自由」と「民主主義」を広めるんだ、というのは 嘘ですから騙されないようにしてください。

さて、結論を書かねばなりませんが、とくにありません。こんな腐った選挙制度だけど、投票出来るだけましだと考えて、次も投票するかもしれません。その 際、原発廃止を主張する党や政治家に一票を投じることになるはずです。もう一度原発事故が起こると日本はほんとに終わってしまうからです。

(Oct. 2012)



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