takashi's pictureTakashi Wakui's Home           takashi's picture涌井隆の家

What's new

Profile                 

Classes 授業

Recent Publications

Animation
アニメーション

Bicycling 自転車

Stargazing 星見

Links リンク

Essays 文章 作文






















名大医学部生の英語力

名大の学部生の半分は工学部です。そのため開講されている英語科目の半分は工学部向けとなります。私が担当する英語も工学部向けの授業が多くなります。去 年はたまたま医学部生向けの英語を教える機会がありました。

医学部生の英語能力が名大生の平均より高いのは明らかです。しかし、思ったほど高くありません。出来る学生の能力は日本の大学生のトップレベルであるのは 間違いありませんが、平均はそれほどでもありません。勿論、医学部以外の名大生の平均よりは高いですが、絶対的な基準で見るとそれほど高いとは言えませ ん。これはちょっとした驚きでした。平均レベルの学生は、プロとして働き始める20代の半ばの時点で、最新の医学論文のアブストラクトを斜め読みして知識 を日々増やしていけるだけの英語力があるかというとちょっと心もとない気がします。トップレベルの学生は楽に出来るだろうと期待できますが、平均的な学生 は日本語で情報を取ろうとするでしょう。

このようなことを書くのは、「僕と核」というサイトでサイトの主(安念真吾さん)が、日本産婦人科学会に向けて抗議文を出しており、それを読んで日本の医学専 門家の英語力に不安を持ったからです。アドレスを示します。

日本産婦人科学会への抗議文:http://e22.com/atom2/jsog.htm

これは日本産婦人科学会の見解が科学的に間違っているという主張ではありません。安念さんは、アメリカで理工系の教育を受けた経歴を持ち、英語は全く問題 はありませんが、医学に関しては素人です。ですから、自らの研究に基づいて、日本産婦人学会の見解を批判しているのではなく、ただ、その学会の専門家たち が正しくICRPの勧告の原文を読めていないのではないのかと、指摘しているだけです。ICRPは原発推進寄りの任意団体で、放射能の人的影響を過小評価 する傾向があるのですが、そのICRPの勧告を誤解してさらに過小評価するのは危険ではないのか、という批判です。放射能関係の情報をツイッタで追いかけ ていたら、英語で書かれた医学論文の日本語のアブストラクトが、放射能の影響を過小評価する方向に曲解されていたという情報を見かけましたが、有りそうな 話だと思います。英語を英語として正しく理解できないと、自分の知識と思いこみで、誤解と曲解を犯すのが普通です。英語の読解の授業を教えていて日々遭遇 します。英語の授業なら、もっと勉強しようね、で終わりですが、ICRPの勧告を誤解するとなると大問題です。胎児における放射線の影響についての勧告な ので尚更です。単に英語が出来ないだけなのか、あるいは意図的に誤解しているのかという疑念も払拭できません。

近藤誠さんという慶大医学部の放射線科の専門家がいます。癌のお医者さんです。親が癌で死んだということもあり、彼の著作を沢山読んだ時期がありました。 今で も文庫本で沢山出ていると思います。団塊の世代に属する人でもうそろそろ引退しているかもしれません。彼は英語で書かれた膨大な数の医学論文を読み、日本 の癌治療に対して異議を申し立てて来ました。彼の著作を読んで受けた印象は、彼と論争する医者たちがそれほど勉強していないということでした。その理由を 推測するに近藤さんほど英語を読みこなせないので、最新の情報を英語で仕入れていないということなのだろうと思います。近藤さんは、自分より若い世代の日 本の医師たちの英語力低下も嘆いていました。日本語の教科書は英語の翻訳であり、それに全面的に頼ることによって誤解が生じることの危険性を指摘していま した。安念さんの指摘と同じです。

個人的な話をすると、私は親から医者になることを期待されて育ちました。漢字が読めるようになって最初に読んだ本の中には北里柴三郎の伝記があります。し かし、その方面には全く興味がなく、天文学とか文学に惹かれるようになりました。大学という世界に迷い込みましたが、今では医者にならなくて本当によかっ たと思っています。独立した開業医なら比較的自由がありますが、勤務医は学会の公式見解に縛られて、カルテに放射能の影響であると記すこともなかなか出来 ない状況に置かれています。そんな不自由はとても受け入れられそうにありません。医学部生向けの英語の授業でも、お前たちはそういう職業を選んでしまった んだと強調しておきました。

名大医学部生の話に戻ります。授業では、私が一連の作文で扱っている、911事件、HIV/AIDS問題、放射能の危険性、ワクチンなどの問題を扱いまし た。公式説が間違っていると主張するすぐれた論文や記事は山ほどあるし、ビデオの証言も沢山あります。沢山の文献にリンクを張っているサイトを紹介し、勝 手に面白そうな論文を各自見つけて読み、翌週発表してもらうからね、と課題を出すと、トップレベルの学生は、私が気づかなかった専門的な論文を探し出し、 見事に要約して見せました。本当は、すべて英語でやる計画でしたが、そこまで出来る学生がいない、ということに最初の授業で気づいたので日本語でやっても らいましたが、それでも日本人の学部生としては、トップレベルの出来でした。平均以下の学生の中には、学習態度がなっていない者もいて、あいつらには医者 になってもらいたくないと正直なところ思いました。トップレベルの学生は能力だけでなく学習態度や人間としての成熟度も高いという印象を持ちました。彼ら なら自分の主治医を任せてもいいかなという気がします。クラスの半分ほどはちょっと不安です。

医学部生というのは名大生に限らず、教師の言うことをよく聞くいい学生であることが多いのでしょうか。私が彼らに教えたことは、世界は嘘に満ちているとい うことでしたが、全く反論なしに学期が最後まで進みました。一人、911の真相について、それまで全く聞いたことがない情報だったので驚いたと個人的に話 しにくる学生がいましたが、他の学生は全く反論もせず、終わってしまったので、ちょっと拍子抜けしたという感想を持ったことは否定できません。一人一人 が、自分の頭で考えて、周りに情報を伝播していくことを期待するしかありません。既成メディアは全く期待できないし、それを研究している大学人もダメダメ だし、もう一人一人がメディアになるしかありません。

(Sept. 2012)



copyrights Takashi Wakui