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孫崎享とジョン・パーキンス (John Perkins)

孫崎さんの『戦後史の正体』という本が評判なので読みました。孫崎さんのことはツイッターで知りました。ツイッターというのは便利なツールで、キーになる 人物が芋づる式に出てきます。何らかの社会運動に関わっている人でツイッターを利用していない人はいないので、影響力のある人で、重要な情報を発信してい る人はかならず、目に留まります。大メディアの書評はまだ出ていないようですが、口コミでどんどん知る人が増え、すでに10万部を超えるベストセラーと なっているようです。お勧めです。孫崎さんは、元外交官であり、諜報の分野でも働いてきた人です。素人の聞き書きではありません。

孫崎さんは、戦後日本の政治家を、アメリカ追従かそうでないかに分類しています。一般的には吉田茂は毅然とした態度でアメリカと渡り合ったという事になっ ていますが、孫崎さんは具体的な証拠を示して彼がいかにアメリカ追従型であったかを論じています。また、アメリカに対して抵抗しようとした多くの政治家 が、汚いやり方で失脚させられて行ったことも詳しく跡づけています。岸信介については、とても興味深い解釈を提出しています。通説的な理解が非常に危うい ものであり、騙しの産物ではないかと気付かされます。この本を読むと、日本というのは独立国ではなく、アメリカの属国あるいは植民地であると考えたほう が、実情にかなっていることがわかります。汚いやり方というのは、アメリカ側が指示していると考えられる闇工作です。東京地検特捜部がかかわることもある し、大メディアがスキャンダルを演出する場合もあります。確証は得られませんが、闇工作には暗殺も含まれます。実行犯としてかかわるのは日本人です。 ロシアと日本の間の国境問題については、インド・パキスタン問題と同様で、植民地から撤退するときには、必ず紛争の種を残しておくという英米帝国の常套手 段であると論じています。

孫崎さんのこのような諸説は、311以前なら、「陰謀説」と して片付けられ、ベストセラーになることもなかっただろうと考えられます。しかし、311の原発事故を通じて日本の権力の中枢にいる人達が、日本国民の 安全と平和を守ることより、アメリカの意向を伺うことに汲々としていることを見せつけられたので、実は日本はアメリカの属国なのでは?と勘ぐる人がどんど ん増えているのだろうと想像できます。Speedi による放射能飛散予測を米軍には知らせたのに、日本国民には隠していたというのはその一例です。

アメリカが裏工作を使って世界の隅々を支配しているのではないかという疑惑は、実は、世界的には広く受け入れられています。それほど広く受け入れられてい ないのは、自国であるアメリカと日本ぐらいではないでしょうか。キューバはもちろん、チャベスが大統領であるベネズエラ、その他の中米・南米各国では常識 でしょうし、50年代にモサデック政権をアメリカのCIAがクーデタを起こして倒したという歴史的事実を知らないイラン人は存在しないでしょう。そのよう な陰謀説をどこかで聞いたとか、諸説紛々しているがそのような説もある、というようなあやふやな理解ではなく、歴史的事実として確信を持って理解している 人が多いという事です。

そのようなアメリカの世界支配の実態について、アメリカ人も最近どんどん気づき始めています。そのきっかけの最大のものが、911事件であることは論を待 ちませんが、ジョン・パーキンスの著作の貢献も小さくありません。彼の主著である、『エコノミックヒットマン』は出版当初、世界中の空港の書店で平積みに なり、超ベストセラーになりました。

『エコノミックヒットマン』という著書の内容については、著者のジョン・パーキンスの説明を彼自身の口から聞くのが一番でしょう。ネットビデオが沢山転 がっています。幾多のスパイ小説とこの著作が大きく異なるのは、パーキンス自身の回顧録であるという点です。彼は、エクアドルとパナマの政治権力の中枢に 接近し、世界銀行やIMFの融資を売る仕事をしていました。西側の銀行や多国籍ゼネコンは儲かるが、自国の一般市民のほとんどは、何の経済的恩恵も受けら れず、国は借金で貧しくなるだけ、ということに気づいた指導者は、外圧に抵抗しようとしますが、パーキンスの仕事はそのような指導者に賄賂まがいの経済的 便益を与えて腐敗させていくことでした。彼がぶら下げる誘惑に最後まで抵抗した、エクアドルのJaime Roldos (ハイミー・ロルドス)やパナマのOmar Torrijos (オーマー・トリホス)は、その後飛行機墜落などによる不慮の死を遂げています。その末路について、パーキンスは、明らかに暗殺であると断言しています。 彼は暗殺実行部隊をジャッカルと呼んでいます。

パーキンスのこのような証言について、確証がないだとか、「陰謀論」であるなどの批判は当然予想されネットではそのような言辞が散見されますが、暗殺を主 目的にする団体がホームページでその活動の詳細を公開するということなどありえません。仮に警察が暗殺者を現行犯で捕まえたとしても、跡がつかないように 行動しますから、暗殺の実体は歴史書に確実な情報として残ることなどありえません。歴史という学問の大きな落とし穴です。

パーキンスのこの本は、魅惑の女スパイが出てきたりするので、用心深く読まないと、架空のスパイ小説を読んでいるような気にさせられてしまいます。著者の 筆の力がそう させているのですが、例えば、パナマ運河の建設を日本のゼネコンが大統領のトリホスに売り込んでいたという事実がちらっと言及されたりすると、読者は現実 の世界に連れ戻されます。パーキンスは当然、日本に注文を横取られないように、様々な手段を使ってトリホスに取り入ったはずです。その詳細が明かされるこ と はありませんが、パーキンスの主張に懐疑的な読者は、このような情報の断片から自分の足を使ってその真偽を確かめることが出来るでしょう。日本の元ゼネコ ン 社員がどの程度真実を明かしてくれるか予測は出来ませんが。

孫崎さんの『戦後史の正体』もパーキンスの『エコノミック・ヒットマン』も、著者の実地体験に基づいているという点で、学者が書く歴史書ではありません。 実話に基づく歴史書です。我々は、大学人であろうとなかろうと、学者が書いた、歴史書の通説(公式説)に大きく惑わされています。大メディアもその通説に 基づいて、 多くの場合実情とは異なったイメージを作り上げています。我々一般読者は、彼らのような、いわば勇気ある内部告発者の主張に耳を傾けないと、世の中に起っ ていることの根幹を理解できずに終わってしまいます。

この2冊はもちろん2001年の911事件以後の著作であり、その事件との関係はそれぞれ著作の中で言及されています。

ただ、興味深いのは、両者ともその事件の真相について、著者がどのように考えているのかについての記述がありません。

書物として出版するためには、そのタブーについて語ることは出来ないということなのでしょうか。

その一方で、私がこの文章を書いている2012年9月の時点において、ネット上には、911事件の真相をめぐるホームページは山ほどあり、その中で Richard Gageさんの ae911truth.orgなどは、圧倒的な証拠を突きつけて、政府の公式説が嘘であると主張しています。孫崎さんやパーキンスさんがそのサイトを知ら ないなんてことはありえません。孫崎さんは「反米」なので、中国の回し者ではないかと勘ぐる人がいるようですが、彼はもともと中国語が出来るから外交官に なった人ではありません。彼のツイッタの書き込みを読んでいると英語に堪能であるという印象を受けます。その他、ロシア語やペルシャ語なども出来るので しょう。  

我々はとても奇妙な世界に住んでいます。王様が裸であると知っている人は多いのですが、なかなか口に出せません。口に出しても、大メディアが一面トップで 伝えないので、未だに「陰謀論」扱いになっています。

(Sept. 2012)

追記:2012年9月の時点で孫崎さんの本の書評は大新聞などの大メディアからは出ていません。これはパーキンスの場合と似ています。パーキンスをウィキ ペディアで 調べると、NYTやワシントン・ポストが一応書評らしきものを出したということがわかります。どちらも否定的な感想を述べたようですが、ウィキの記述を読 む限り、読むに値する内容ではないようです。このように大メディアが徹底的無視を決め込んだり、中身のない誹謗中傷でお茶を濁す場合、情報の信憑性が高い と判断できます。

追記2:John Perkinsを久しぶりに聴きました。以前にはなかったよくまとまったクリップがあります。1989年のパナマ爆撃についての話は信憑性が高いです。公式の歴史書にそのような記述がなされることは絶対にないでしょうが。

http://www.youtube.com/watch?v=xLe9u9SffO0



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