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福島事故FAQ

星の仲間たちに会ってたまたま原発事故の話になり、大メディアのプロパガンダに騙されている人がまだいるんだ、とちょっとショックを受けました。ちゃんと理解している人も仲間には多いのですが、沢山いるので中には勘違いしている人もいます。

その1:「原発事故の影響で死んだ人はいないんでしょ?」

そんなことはありません。The Daily Yomiuri という読売新聞の英語版には、

573 deaths related to nuclear crisis

という記事がのりました。検索すればすぐ出てきます。元の日本語の記事ではそこまではっきり書かずぼかしていたようです。私は英語の記事しか知りません。 そもそもFukushima 50についてアメリカのネットワークテレビであるABCは5人が死んで2人が行方不明だとかなんとか伝えていたし、秋田とか千葉とかのゴミ焼却場の清掃員 が重体になったという報告もあったし、注意を払ってツイッタを追いかけていればどんどん類似の情報が入ってきます。ニュースになるのは氷山の一角です。大 メディアは現状維持を旨としているので、本気で原発業界にとって都合の悪い情報を流すという意志はありません。反原発の立場の人達のツイッタを追いかけて リンク先の情報を読み取るしかありません。

その2:「広島が乗り越えたんだから福島だって10年経ったら蘇るよ」

そんなことはありません。広島原爆の放射能は1キロ足らずです。福島原発のは単位がトンです。2011年の6月あたりに保安院自らがセシウム137だけで広島原 発の168発分が大気に放出されたと発表してその数字が広く流布していますが、今年の5月に東電が、広島原発の 4023倍のセシウムが放出されたと上方修正しました。チェルノブイリの4倍だそうです。アーニー・ガンダーセンさんは福島事故をレベル8に認定するべきだと提案しています。チェルノブイリは10日で収束したが、福島はまだ収束していないし、4機が依然危機的な状況にあり、その他にも、間一髪で福島第一と同じ運命を逃れた原発が他にも沢山あるからです。広島の爆撃直後の人的被害は熱線と中性子線とガンマ線によるものですが、爆撃後に広島市内に入り、親族を探すために長時間滞在した人 の中には、吸引などによる内部被曝で数日・数ヶ月中に死ぬか、生き延びても一生被爆症に苦しめられた人が沢山います。福島周辺に今でも生活している人達は そのように広島で被曝した人達と何もかわりがありません。原発事故当初職場の大学で、「福島事故による被曝」という私が口にした表現にするどく反応し、そ のような重いことばを使うものではない、とたしなめてくれる同僚がいて驚きました。「文系」の教授だからゆえの無知なのでしょうか。大学人ですらこの程度で すから、一般人の物理をよく理解していない人達の間では、広島は惨事であったが、福島の原発事故は大したことがなかった、という頓珍漢な理解が広まってい るのかもしれないですね。やっかいなことです。

その3:「俺は自給自足の無農薬農家だから、何があっても生き延びる。健康食で放射能に勝てる」

そんなことはありません。星の観望地で出会った有機農家の人がこのように言ったのにはたまげました。福島周辺の有機農家は全滅ですね、かわいそうですね、 と私が言った後の反応なので余計です。IWJ (Independent Web Journal) の『百人百話』では福島周辺の自然農法の農民が怒りを押し殺して淡々と語っているのが聞けます。自然農法では 農薬や化学肥料を全く使わないので、カリウム肥料を多めに使ってセシウムの移行を減らすという方法も使えません。環境にいい自然農法ですが、福島事故のようなことが あるとその素晴らしさが仇になってしまいます。この人は、放射能についての正しい理解を持っているので、福島からは避難して別のところで自然農法を再開し たいと語っていましたが、私が関西の星の観望地で出会った有機農民は、放射能について危うい誤解をしていました。有機農家と一口に言っても色んな人がいるんだな と、人々の考えの多様さに目覚めました。

その4:「技術の粋を集めた原発」

そんなことはありません。民主党の副総理が大飯原発の再開にあたってそのような表現を使ったのが記憶に残っています。原発についてちょっと調べたら技術の 粋を集めたなんて形容は絶対にできません。このような基本的な理解もできていない人が、政治の中枢にいて、はったりをかますだけの核技術者にころっと騙さ れてしまうとは哀しいことです。高木仁三郎さんの『原発事故はなぜ繰り返すのか』は必読書です。新書で短く数時間で読めます。もんじゅのナトリウム漏れ事 故についての情報はあっと驚きです。平井憲夫さんの「原発がどんなものか知ってほしい」(ネット記事)も必読です。安全な原発は不可能ではないでしょう。 でもそのためには、あと何十回何百回と原発事故を経験して試行錯誤で技術を高めるしかありませんが、そんな時間は人類にはないし、犠牲が大きすぎます。事 故が起こっても十分に検証できないし、嘘つき隠蔽体質で情報は共有されないし、そもそも原子炉は一旦作ったら40年間改造変更できないので技術の進歩が遅 すぎます。40年前の宇宙探査機から弱い電波を拾うようなものです。

もういいでしょう。私も福島事故が起こるまで原発というものがこれほどまでにデタラメであるとは想像だにしませんでした。1999年のJCO臨界事故の時 の時に目覚めてもよかったのですが、たまたま一年の予定で日本を留守にしていました。文科省は小学・中学・高校で放射能怖くない教育をやっているようなの で、少なくとも私の学生だけは騙されないように教育しなければと考えています。大学生はまだ脳が柔軟です。霞が関のパワーエリート達が一番頭が 硬そうです。

Science Daily は原発の過酷事故は10-20年に一度起こると考えたほうがよい、というドイツの学者の研究を紹介していました。検索すればすぐ見つかります。次に起こる のは、どこかわかりませんが、韓国で起こると西日本がやばいことになります。私個人としては、日本でもう一度起こるのではないかという予感があります。
(Aug. 2012)



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