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広島国際アニメーションフェスティバル 2016

Hiroshima animation festival 2016

またまたやって来ました。
広島は暑い。日差しは名古屋より強いのではないかと思えるほど。名古屋の晴天率はかなり高いが広島はそれを上回るだろう。星を見たいのなら車でど れだけ都市から遠く離れられるか、どれだけ標高を稼げるかだ。名古屋が好きなのは山が近いからだが、広島も悪くない。大山の標高はかなり高い。台 風が東 海関東を通過したが、広島にいたので影響なし。
次のような標識を見つけた。名古屋にはない。夜なので見づらいが、「自転車は車道左側通行歩道では徐行」と書いてある。

hiroshima bike

主に観光客のために広域自転車レンタルサービスが始まっていて、Peacecle (ピースクル)というらしい。2年前にはなかった。

フェスティバル期間中の土曜日カープの黒田が本拠地で投げたのを後で知った。コンペを一日すっぽかしてでも黒田を見に行ったほうがよかったかもと 思う。私は一応メッツファンなのでヤンキーズは嫌いということになっているが、黒田とジーターと松井だけは好きだった。ヤンキーズの20億を蹴っ て3億の広島に戻ってきた黒田はかっこすぎるので応援したい。カープが日本シリーズで優勝 することを祈っている。古い球場のボロさを知っているので新球場も見てみたかった。

アステールプラザから原爆ドームまで15分のクルーズが出ているのを知って初めて乗った。最近被曝建築物として認定されたトイレや『はだしのゲ ン』に出てくる高校を船頭さんの案内によって知った。川から見る原爆ドームは初めてで印象深かった。

久里洋二さんのマンガ本を買った。彼の衰弱は2年前と比べると明らかで2年後には来れないかもしれないのでこれが最後の機会だと考えた。彼の漫画 の展示場では久里さん自身がやってきて、クッキーをもらった。彼は、毒入りだと言っていた。いかにも久里さんらしい。それを真似て、あんた明日に もころりと逝ってしまうかもしれないから買っておいてやるよ、と毒舌を吐いてやろうとも考えたが本人を前にして踏みとどまった。

閉会式のラギオニさんのことばに強く共感した。曰く、アニメーションは世界を変えることが出来ないかもしれないが、世界の暴力に対して小さな抵 抗はできる。このことばを二人の通訳はうまく日本語と英語に訳していた。

閉会式の日ホテルに戻ってテレビをつけるとリオのオリンピックも閉会式で、某国営プロパンダ局はリオ特集を延々とやっていた。広島アニメーション フェスティバルは話題にもならなかった。安倍さんご満悦のことでしょう。

以下、個々の作品について短く感想を書きます。

The rope, Liran Kapel:  砂を使った作品。光の当て方に工夫があり、光って見えるのが新しい。砂粒がはっきり見える。話や音楽や演出に目新しさはないが砂の見え方が新しい。

The Boyg, Kristian Pedersen: Oskar Fischinger 風。彼がCGを使えばこうなるだろう。

O Apostolo, Fernando Cortizo: 長編アニメーション。脱獄兵がサンティアゴ・デ・コンポステラの巡礼路をたどり財宝を探しだす旅に出る。ある村で毒を飲まされ朦朧とした意識の中死神の行列に参加させられ る。3日以内に十字架を別の人間に渡さないと呪いが解けない。3日以内に腐敗したカトリックの神父に十字架を渡し生き延びる。この村の村民は死神 で巡礼者を殺していたのだった。

Piano, Kaspar Jancis: どこかで見たことがある作風だなと思ったらやっぱりKasper Jancisでした。ビルの屋上からの飛び降り自殺は彼の永遠のテーマ。

Age of obscure 茫漠時代, Mirai Mizue, Onohana: 色がけばけばしい。この作品に限らず、色がけばけばしいのが多い印象。

The zebra, Viviane Boyer-Araujo: 色が鮮やか。Robert Desnos の詩に基づいている。

I have dreamed of you so much, Emma Vakarelova: これもRobert Desnos の詩に基づいている。色が鮮やか。

The Master Isand,  Riho Unt: 犬とチンパンジーが一つ屋根の下で生活している。二匹とも人間に飼われていたが飼い主はいない。チンパンジーは犬に対して暴君のように振る舞い、最後には飼い主の拳銃が事 故発砲して殺してしまう。自分も同様の最後を遂げる。気がめいる話。エストニアの民話に基づいているらしい。

Satie's "Parade", Koji Yamamura: サティの音楽に振りつけたダンス。ダンスとして見るとそれほど面白くない。バレエ音楽として作曲されたので他の振付も見てみたい。サティのエッセイからの引用があり興味深 い。斬新な試み。

About a mother Pro Mamu, Dina Velikovskaya: 子供に対して惜しみなく愛を与え続ける母親の姿。アフリカを舞台にアフリカの音楽を使う。絵は単純だがうまい。18日のお気に入り。

The sleepwalker, Sonambulo, Theodore Ushev: 秀作であるし楽しいのは間違いないが、ノーマン・マクラレンに似すぎで私の中では減点。たまたま川岸の方で昼ごはんを食べている時に彼が横にいてちょっと話しした。カナダ を拠点にしているが、ブルガリア生まれらしい。彼ほどアニメーション界で地位を確立すると色んなアニメーションフェスティバルに招かれたり業界の 雑用も任されたりするので殆どの映画をもうすでに見ていると言っていた。そこであえてその日のお気に入りを聞いたら、エストニアの犬と猿の話の作 品を挙げた。

Ossa, Dario Imbrogno: 人形アニメの骨格がバレエを踊る。

Anna, Alexia Rubod: 少女を狼とピューマが助ける話。3DCGだが、質感がリアル。

Gashapon Kou-lou-kou-lou, Wei-Yuan Chen: 権力に擦り寄り、群れたがる人間の習性についての風刺。権力者に金の延べ棒を渡して綿飴を受け取る。そのために列を作って並ぶ。コインを入れてガシャポンの粗品を受け取っ て喜ぶ人々。

Mirror, Anna Lytton: 胸と背中をアニメーションの手がなぞる。ボタンやハンガーがアニメーションで登場。魅力的なチェロの伴奏がつく。美しい作品。かなりお気に入り。

Eternal flame, Keigo Ito: 抽象アニメ。

Sabogal, Sergio Mejia Forero, Juan Jose Lozano: 国家の最高レベルでの腐敗と戦う弁護士の話。コロンビアの2000年代を扱う実話。Sabogal という名の弁護士は架空の人物であるが、実在した人権擁護弁護士の何人かに起こった実話を合わせて話を作っている。テレビニュースの映像はすべて本物。実在した事件と人物 が題材になっている。皆さん、この国の腐敗をコロンビアの国内問題と考えてはダメですよ。アメリカの連邦政府とウォール街が密接に関係している し、フロリダのブッシュ家とも関係しているでしょう。南米中米は日本と同じく米帝の属国です。

Cesium and a Tokyo girl (セシウムと少女), Ryo Saitani, 才谷遼: 東京の放射能汚染を真面目に扱った映画が作られたのは素直に喜ぶべきことだが、なぜこのような子供じみたお話を作らないと劇場用長編映画にならないのだろうか。長編映画を 作るためにはこのような他愛のない話をでっち上げるしかないのか。上に書いたSabogalのような場合だと中身の濃い深刻な話を何十時間も続け ることができるのだが、そのような本物の話が東京あるいは日本には転がっていないから九官鳥探しでお茶を濁すのだろうか。原発はアンダー・コント ロールなどとほざく安倍と同等の幼稚園レベルに落とすしかないのか。例えば、ミミという女の子は東京のものを食べ続けて舌が痛いと言っている。こ れは明らかに放射能汚染したものを食べているからでしょう。テレビを見ているだけでも口内炎の薬の宣伝が福島以降多くなったことがわかるので、製 薬 会社やまともな医者は放射能汚染が深刻であることを知っているはずです。だのにこの映画ではその問題の追求がない。ネットで調べれば、東京の水が 飲めなくなって関西に移住した女性がいることがわかる(www.zakumi23.com)。なぜそのような女性を題材にしてドキュメンタリを作 らない のか。放射能汚染は卵子を傷つけるので、口内炎の対症療法ではどうしようもないくらいはわかってるはずでしょう。上映の前に監督の才谷さんは ちょっとした演説をぶちました。この映画の最初のシーンは彼の先生である岡本喜八の『肉弾』を意識したそうです。こういう話を聞くとこの人映画オ タクだなと思います。別に映画オタクが映画を撮っても何も問題はないのですが、そういう話は私にとってはトリビアに過ぎないし、どうでもいいこと です。それに『肉弾』という映画の真剣さを矮小化しているように受け取られても仕方がない。この映画は久里洋二さんが原発を爆破させる映像で終わ らせるべきだったんでは?政治的なメッセージはもっと強く押し出さないとダメですよ。九官鳥が見つかる見つからないなどどうでもいい。そんな話に しなければ長編映画をつくれないならもう短編でいいでしょ。アホくさ。長編がつまらないから私など短編ばかり見ているんだから。つまらない短編も 山ほどあって、面白いのはほんのひと握りなのは長編と同じかもしれないとは思うけれど。

The Christmas Ballad, Vanocni balada, Michal Zabka: ボヤールが遺した台本に基づいて制作された。ロボット兵士が少年と対峙する。実は中に人間の兵士がいて彼は少年に同情を感じ二人でクリスマスを祝おうとするが、彼らは他の ロボット兵士に取り囲まれる。

Mrs. Metro, Aggelos Papantoniou: 地下鉄に置き去りにされた赤ん坊を乗客は無視しようとする。泣き続けるので新聞をやぶって口を封じさえする。巨大な女性車内アナウンス係が現れ赤ん坊を圧殺した後、駅に着 いたことを知らせる。現実世界の風刺。弱い子供は死んでよし。大人は自分の人生を生きるので精一杯。他人の子供など死んでよし。ましてやシリアの 子供などどうでもいい。

Yul and the snake, Gabriel Harel: 兄弟の窃盗団がボスに戦利品を貢ぐ。ボスは徹底的な専制を敷いている。兄弟の弟はいじめられるが、蛇を使い復讐する。兄弟はお互いを許し合う。暴力的な組織の縮図を示して いる。私はこの映画に投票した。観客賞は取れなかったがデビュ賞か何かを取った。秀作であるのは間違いない。

Stone soup, Clementine Robach: 貧しい村人は石のスープで我慢しようとする。停電が起こり、各々食材を持ち寄り美味しいスープを皆でわかちあう。心温まる話。

Zepo, Cesar Diaz Melendez: 森の中で傷ついた男を見つけた少女は猟師風の二人連れに助けを求める。しかし、そのうちの一人が凍った湖に穴をあけ少女を落とし溺死させる。口封じに殺すのは世界で日々起 こっている。重いテーマを砂アニメで作ったのがちょっと意外。

Among the black waves, Sredi chernih voln, Anna Budanova: コンペで見た時はそれほど印象深く感じなかったが、賞をもらったのでちょっと書く。最初見た時は、アシカ(セイウチ?)と結婚する男の話で、世界中によくある異類婚礼譚を 作品にしたのだな、ぐらいにしか思わなかった。最終日に見返してみると、視覚表現が気になった。あの質感はどのようにして出したのだろうか。木炭 を使い、削ったのか。最後の処理はデジタルだろうが、質感はアナログな道具を使いカメラやスキャナーで取り込むことが多いからだ。


Tank, Raoul Servais: 1916年に戦車が初めて実戦に投入される。それはそれまでの塹壕戦を残虐な形で無意味にする。塹壕の中の兵士にとっても戦車の中の兵士にとっても。戦争において末端の兵 士は使い捨て。

Noevus, Samuel Yal: 磁器で出来た人形が踊り粉々になる。ダンスアニメ。映像の迫力がすごい。自然のタイムラプス撮影も使われている。

Master Blaster, Sawako Kabuki: 性への讃歌。お尻がこれでもかこれでもかと出てくる。音楽はまあまあ。

Tik Tak, Ullo Pikkov: 彼の作品はみんな好き。これも例外ではない。グランプリを取って欲しい。時計修理工の仕事場にネズミが動き回る。ついに捕まるが修理した時計がネズミに変身。そのうちに時 計がばらばらに集まってきて修理工となる。奇抜な話。

Tigers tied up in one rope, Benoit Chieux: 韓国の昔話に基づいているらしい。笑える話。秀作。

Documentary "Film Adventurer Karel Zeman", Tomas Hodan: 必見のドキュメンタリ。

Opossum,  Paul Chichon: コーヒーマシンには実はフクロネズミが入っていた! 微笑ましい秀作。

First snow, Prvni snih, Lenka Ivancikova: 冬の冬眠に備えるハリネズミ。ストップモーションアニメ。動きはいまいちだが、質感がリアル。山の雪の美しさがよく出ている。今年雪山を経験した ので親近感を感じる。ハリ ネズミは狐に襲われかけるがそれを上から狙う鷲が狐を倒しハリネズミは助かる。

The lost breakfast, 失われた朝食, Q-rais キューライス: 女にも見える男が朝食をアメリカ風朝食を作る。髭を剃りその髭をティッシュに集め、その上にティーバッグを置く。突然カラスが部屋に飛び込んできてルーティンが狂い、 ティーバッグを置くティッシュがないためわざわざまた髭を剃る。すべての歯車が狂って頭がおかしくなる。あるあると納得。日常生活への洞察が深 い。

A memory, record and present, きおく きろく いま, Hiroyuki Mizumoto 水本博之: 長崎に近いキリシタンの村出身の95歳のシスタが目撃した原爆投下を語る。インタビュをコマごとに村の住民に色を塗ってもらってアニメを作る。シスタの話はそれなりに面白 い。アニメーションとしては中身なし。

Look at me only わたしだけをみて Tomoki Misato 見里朝希: 自己愛の強い女の子と付き合う男の悲哀。青春を感じる。このような正直な作品はとても新鮮。女の子の顔が怖くて現実味がある。秀作。コンペに残すべき。

Cheburashka goes to the zoo, Makoto Nakamura, 中村誠: これはチェブラーシカを借りて作った日本版。よく出来ているが不思議な感じ。

gymnasiumany, geometricube, Yoshihisa Nakanishi, 中西義久: 前者は複雑なゾイトロープ、後者はルービックキューブをアニメーションにしたもの。幾何学アニメーション。こういうのを作れる人は数学に強いのでしょう。頭の中で思い浮か べる能力があるのでしょう。たいしたもんです。

The demon, 鬼, Shin Hosokawa 細川晋: 以前広島大会で見たことがあるが詳細は忘れてしまっていた。鬼はどんな理由であれ殺人を犯したものが天の裁きとして鬼になることを受け入れる、と鬼は主人公に説明する。そ れにも関わらず、主人公は鬼を村人が恐れているとして対峙する鬼を無防備にも関わらず刺し殺す。その結果として彼は鬼となり、妻に別れを告げる。 村人は鬼を恐れる必要はなかったし、主人公は鬼を殺す必要はなかった。この話は戦争の寓話として巧妙にできている。

A tender soldier, 優しい兵隊, Kaoru Maehara 前原薫: カメラは兵隊の足だけを写す。兵隊は死体の指を踏みつけることを厭わない。だが、花は踏みつけない。短いがよく出来た話。

GAKI Biwa-housi, GAKI琵琶法師, Reiko Yokosuka 横須賀令子: 餓鬼が琵琶のコードをコンセントにつなぐ。演奏をし始めるとヘビメタになる。演奏を終えると団子とお茶が出てくる。

Regina Pessoa Retrospective, レジーナ・ペソア特集: 名前は知らなかったが 彼女の作品は記憶にある。初期の作品は漆喰やコピー用紙を彫って質感を出している。パソコンで出来そうな気がするがなかなか難しい物のようだ。ポルトガルの地方都市で貧し く育った少女が絵画を専攻したまたま出会ったアニメーションでオスカーにノミネートされるまでなる、というシンデレラ・ストーリーが心に残った。 日本作家のプログラムを見るために途中退出。

Sirop de namaquemono, ナマケモノシロップ, Mai Tominaga 富永まい: 以前見た記憶がある。シロップを舐めてSakeというのが笑いを誘う。歌はフランス語で字幕が英語。

Taku Furukawa Retrospective 古川タク特集: 彼の作品は最近のものを多く見ているので過去の作品を見たくて会場に来た。久里洋二さんのスタジオで『殺人狂時代』の制作に参加したのは知らなかった。オノヨーコを個人的 に知っていたから、ビートルズへの思い入れも強かったんだろうなと感じた。「コーヒーブレーク」は傑作だと思う。知的な人で飄々と生きてきた感 じ。70年代はヒッピーをやっていたらしい。企業戦士にならず筆一本で生きてきたから最近作っている政治風刺もできるのだろう。

Lisa Tulin and/or Lasse Persson Retrospective リーサ・トゥーリン/ ラッセ・パーソン特集: 小さなアニメーションスタジオを20年間以上続けてきた。雇われ仕事が多く自分の作品は一年に1分程度のペースで作っているが生活はできている。 自称クロスドレッサー。男としても女としても違和感を感じないらしい。興味深い話だったが途中で居眠りしたので聞き逃した部分がある。 Hetero という映画については彼自身がヘテロセクシュアル集団をカルトとみなしているという発言があったがちょっと違和感を感じた。確かにその作品ではボッティチェリのビーナス似 の女の子が崇拝の対象になっているのでそういう作家の意図が出ているのだが、男のゲイの世界で似たような美男崇拝はないのだろうか。だいたい人間 はそんなに違わない。ヘテロが大多数の世界に住んでいるからメディアが美女崇拝に加担していることが肥大化されて見えるがそれをカルトと呼ぶのは ちょっと違うでしょ。まあ、そんな質問をぶつけたかったが生憎質疑応答は別の部屋で行うという。その開始時刻まで待てなかったので別の会場に行っ て他の映画を見た。

Peripheria,  David Coquard Dassault: 荒廃した公団住宅に犬が住みついている。通常は外にいるが人気のない集合住宅を走り回ったりする。ボールを見つけてサッカーをしたりもする。ジダンは移民としてこのような 公団住宅でサッカーをして育った。ある日サイレンがなり、建物は制御爆破解体される。中にいる犬はすべて死ぬ。2001年9月11日の世界貿易セ ンター同時多発テロはこのような制御爆破解体で倒壊した。火を消すために建物に入っていった消防士たちは殺された。この映画の犬と同じ。あの事件 の責任を誰も取っていない。アメリカ議会はサウジアラビアに責任を押し付けるという茶番を演じていて笑える。

The empty, 空き部屋, Dahee Jeong: グランプリを取った映画。最初見た時はそれほど印象深く感じなかったが再度見ると秀作だと思う。ホコリが出て行った女を形作るという発想が奇抜。本が本に語りかけるという のは過去にどこかで見た記憶があるのでそれほどいいとは思わなかった。ただ、本が外国のものであっても韓国語の翻訳を見せるのはいいと思う。日本 人なら原語の表紙を見せてしまうかもしれない。そして作品全体を無国籍調にしてしまうのだろう。韓国人はその辺は韓国語にこだわるのがよい。日本 の作家は世界のマーケットを意識するあまり無国籍調にしがちだが、大和言葉にこだわって欲しい。アニメーションだからと言ってナレーションを避け るのもよくない。日本語のナレーションをつけてちゃんと英語に翻訳してもらえば世界に伝わる。

Manoman, Simon Cartwright: 主人公のグレンはPrimal Therapy を受講して、叫び暴れまわるが心の病が治るかというと治らないで自殺してしまう。勢い余って、駅のプラットフォームで客を電車に轢かせてしまったことが影響しているはず。 しかし、 彼の友達は裸で暴れ回りグレンを追う気配はない。人形の表情が絶妙にできている。賞をもらうべき作品。

Impossible figures and other stories II, Marta Pajek: 女が卵を3つ落として割ってしまう。4つめはかろうじて捕まえる。これは流産を暗示している。最後に卵が孵化して赤ちゃんが生まれるかと思いきや黒い獣のようなものが出て くる。彼女はそれにおそろしい一瞥を加える。男が何人かいた模様。クローゼットに隠れていて女に倒れこむシーンがある。アニメーションのキャラク ターの視線や仕草がここまでの印象を残す作品を他に知らない。アニメーションの人物は実写映画の俳優と比べて抽象化されているが、この映画はそう ではない。ちょっと特異な映画。もう一度見たい。

The Gossamer, Natalia Chernysheva: 刺繍をしているおばあさんが負傷させてしまった蜘蛛を助けて治療する(接着剤で足をくっつける!)それに恩義を感じた蜘蛛がお返しに刺繍の巣を作る。観客賞候補ナンバーワ ンでしょ。ロシアはすごい。(やっぱり観客賞を取った!予想通り。)

Veil, 幕, Yoriko Mizushiri 水尻自子: 彼女のいつものスタイル。今回のテーマは接触と挿入。ぷにょぷにょ感というかふにゃふにゃ感というか何とも言えない。パステル調もいつもどおり。

Erlking, Georges Schvizgebel: 彼のいつものスタイル。ピアノ演奏がそれほど巧くなく、シューベルトの歌曲のほうが良かったんではという気がする。動きのここちよさが以前ほどではない。力量が落ちてきて いるのか。大家であることはまちがいないが、コンペ最後の作品としてはちょっと力不足。

Akira, Katsuhiro Otomo, 大友克洋: 重い短編アニメーションばかりを沢山見ているとときおり長編映画のゆるやかな物語の進行に脳みそを委ねたくなる。昔見たが詳細は忘れている。東京でオリンピックが開 かれる 直前の設定になっていたとはすっかり忘れていた。Akiraとは最終兵器のことか。絶対エネルギーと言われてもちょっとわからない。

Rocks in my pockets,  Signe Baumane: ラトビア出身の作家が祖父祖母の世代に遡り一族の歴史を語る。一方的な喋りまくりで絵は添え物のような感じ。語りの情報量が多いので文字を追いかけていることが多く絵に十 分注意が行き渡らない。アニメーションに集中するためにもう一度見たい映画。話は壮絶としかいいようがない。こういう映画は作られるべくして作ら れたもので、その重さに圧倒されるのみ。主人公の祖母と叔母の人生が特に壮絶。ソ連とナチス・ドイツの間で翻弄されるラトビアを個人ひとりひとり が背負ってしまう。それに村社会の偏見、女性差別が加わる。ひとりひとり狂うべくして狂う人生を送る。ソ連時代はカルテを国が管理するので厄介。 国家は薬産業とグルになっている。ポケットの石とは溺死による自殺を指す。
(August 2016)


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