フェーン 「聖母子を描く聖ルカ」 1602年

フェーン 「最後の晩餐」1592年

 フェーンは、現在ではこの『愛の神アモルたちのエンブレム集』の作家として主に知られています。しかし彼の活動の本拠地であったアントワープに行けば、現在でもファン・フェーン通りという名前で残り、アントワープ司教座聖堂には大型の絵画が三枚(祭壇画と壁面装飾用絵画)も飾られています。
 このエンブレム集がよく知られるようになった20世紀以前では、フェーンの名はルーベンスの師匠として知られていました。イタリアで高名な博識芸術家フェデリゴ・ツッカロに師事した影響が強く、その画風は落ち着いています。
 さらに詳しいフェーンの伝記は拙論を参照してください。

書誌事項
著者名 Andrea Aiciatus
書名 Amorum emblemata,
figuris aenis incisa
studio Othonis Vaeni
Emblemes of love,
with verses in Latin, English, and Italian.

出版・頒布事項 Antverpiae : Venalia apud auctorem, 1608
形態事項 247 p. : ill. ; 15 x 20 cm
注記 Engravings by Cornelis Bol.
Imprint in colophon: Typis Henrici Swingenij
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学術情報
BA19844679
本文言語コード ラテン語, 英語, イタリア語

 アモルというのはキューピッドとして日本では知られています。このかわいい子供姿からは想像するのが少し難しいのですが、愛の神の出自、姿、性格、年齢はギリシア・ローマ文学では統一されたものがないといってよいほど多岐に渡っています。ラテン文学では、愛の神はクピードーかアモルと呼ばれています。本書ではクピードーではなくいつもアモルという名前で出てくるので、こちらの名前を使うことにしました。
 アモルは、ここでは小学生低学年男子の姿で、人生経験に浅いうぶな子供として登場します。その無邪気さ、そして本人がどれだけ自覚しているかはわかりませんがその強烈な力ゆえに、周囲の人々や動物たちは、平穏であってくれればよい日常生活がかき乱されるという設定です。
 エンブレムというのは、銘題、図絵、解説で一セットになったものをいいます。この一セットを複数集めたものが、エンブレム集です。それぞれの作家にはある特定の意図をもって、エンブレムを集めていますが、その配列は私たちの感覚からすると、かなりルーズです。したがってエンブレム集はどこから読みはじめてもよいかわりに、全体を通読しても漠然とした感じしかもてないと思います。これは、百人一首で経験する感覚に似ています。

作品 『愛の神アモルたちのエンブレム集』

 作家 フェーン

エンブレム 電子テキスト一覧
オットー・ファン・フェーン
『愛の神アモルたちのエンブレム集』