現代詩 1995年度特定研究報告論文

インターネットと現代詩:

調査と予備的考察

        

長畑 明利  


1.

 日本のコンピューター環境においても限定的にインターネットが普及しつつある。ニュースメディアは連日インターネットに関する特集を組み、企業はありとあらゆる宣伝媒体を駆使して、その効能を煽り、書店にはインターネット入門のためのハウツー本が並んでいる。従来のメディア形態に変わる新しい、革新的な伝達媒体として喧伝されるこのコンピューター・ネットワークに関する過剰な宣伝とお祭り騒ぎは、またしても、人工的に作り上げられた「流行」によって消費者の購買欲を煽る後期資本主義時代の企業の経営戦略の現れに他なるまいが、その商品化のためのプロセスはともかくとしても、テクノロジーの革新がもたらす技術革新としての効能は否定しようのないものであり、それに対してことさらに背を向ける、あるいは(Thomas Pynchon の言葉を使えば)「ラッダイト」となってその普及に対抗することが必ずしも意味ある選択であるとも思われない。日本でもすでに大学や企業などでは電子メイルを通じた海外との通信がなかば日常化し、インターネットを利用した(例えば洋書の)カタログ販売も徐々に普及しつつある。ことを学術研究に限れば、オンライン上のディスカッション・リストへの参加、諸大学の図書館を通じた書誌検索、ネットワーク経由の論文の配送、アーカイヴ化された文献資料の利用等々、その恩恵にははかりしれぬものがある1。回線の問題、法律上の問題等いまだ改良すべき点が多いとはいえ、この新たなテクノロジーが我々の日常生活の空間に定着するのは時間の問題という情勢ではある。
 それでは、コンピューター・ネットワークの発達がもたらした(あるいはもたらしつつある)このような状況は、文学作品の産出と受容に対していかなる影響を及ぼし得るのだろうか。芸術諸ジャンルは、印刷技術、タイプライター、写真、映画等の発明とそれがもたらした影響について考えてみれば直ちに見て取れるように、過去にも技術革新に敏感に反応してきた。また、新聞、ラジオ、テレビなどの新しいメディア媒体による影響を被ってきたことも思い出されるところである。ここでは Heidegger、Mumford、McLuhan、Kenner らが論じてきたこの芸術と技術の関係性について突っ込んだ議論をする余裕はないが、日本がこれから目の当たりにしようとしている情勢がすでに実現していると言えそうなアメリカにおける現代詩の状況を、この問題の一つの具体例として考察してみたい。


2.

 日本よりもネットワークが普及しているとはいえ、アメリカでもそれほど多くの詩人がコンピューター・ネットワークを利用しているわけではないようである2。もっとも、インターネット上には、英語で書かれた現代詩に関する数多くのサイトを見出すことができる。オンライン上の詩のサイトとして最も充実したものと呼んで差し支えないと思われる The Electronic Poetry Centerのリンクによって辿れるものを中心に、それらをまずは概観してみることにする。(資料は96年1月14日現在のもの。)

(1) The Electronic Poetry Center (http://wings.buffalo.edu/epc)
インターネットにおける現代詩関係の資料及び創作活動の一つの中心と目されるサイト。State University of New York at Buffalo 及びインターネット上の他の場所で作り出されたエレクトロニクスによる詩と詩論の資料のための中心的ゲイトウェイ。「現代詩に関する広範囲に及ぶ資料へのアクセスをできるだけ容易なものにすることを目指す」。以下に紹介するサイトの多くも EPC と協力関係にある。このセンターは、後述の RIF/T という電子雑誌を出しており、EPCLive というテレビプログラムを企画し、現代詩に関するビブリオグラフィー(Biblioteca)を掲載し、アーカイヴを備え、朗読会その他に関するスケジュールを載せ、Poetics と呼ばれる現代詩に関するディスカッション・フォーラムの記録を掲載している。インターネットで結ばれている詩人及び研究者のアドレス・リスト(Online Directory of Poets)もあり、またインターネット上の他の現代詩に関するサイトへも接続されている。小出版社、サウンド、グラフィックス等の資料を含む電子図書館へも接続されている。

(2) W.W.W. Poetry Project (http://cnsvax.albany.edu/~cf2785/index.html)
 The State University of New York at Albany の Chris Funkhouser と彼の学生による構築。後述の DIU、Passage、We Magazine などの雑誌、Allen Ginsberg 他のインタヴゥー、Purkinge というグループによる "Collaborative Poetry" (共同作業による詩あるいは連詩)などにリンクする。

(3) Grist On-Line (New York) ("http://www.phantom.com/~grist")
 Anabasis、Room Temperature、Cyanobacteria という雑誌に掲載される詩、小説からの抜粋、美術作品などを掲載する。詩集その他の出版物、朗読会、学会、インターネット上のサイト等の紹介も行う。ハイパーテクストを使った作品や視覚詩などのヴィジュアル・イメージを用いた作品が多い。

(4) Internet Poetry Archive (North Carolina) (http://sunsite.unc.edu/dykki/poetry/about.poetry.html)
 The University of North Carolina Press が UNC Office of Information Technology と提携して作成した現代詩のアーカイヴ。「新しい読者が無料あるいは低額の使用量で詩を読むことができ、また詩を教える教師や詩について学ぶ学生に、詩人とそのテクストを紹介しまた学ぶ新たな方法を提供する」ことを目標とする。現在は Seamus Heaney と Czeslaw Milosz のアーカイヴのみを提供するが、彼らを含む8人の詩人のアーカイヴ構築が当初の目標とのこと。テクストに加えて音声とグラフィックスを提供することができるインターネットの特性を活かして、当アーカイヴは、それぞれの詩人の詩のテクストに加えて、(原詩が外国語の場合)原詩の英訳、朗読のヴィデオ、作品についての詩人自身の解説、詩人の写真、詩に現れる地名を示す地図、専門家による詩人の略伝及び書誌をも掲載する。

(5) Institute for Advanced Technology in the Humanities (Virginia) (http://jefferson.village.virginia.edu)
 1992年に University of Virginia に、Thomas Jefferson の建学の精神に則って設立されたインスティテュート。当大学の情報工学と図書館施設を結集して、諸芸術、人文科学及び社会科学への情報工学の応用の点で全米をリードする地位にあると謳う。後に紹介する Postmodern Culture という電子雑誌を出版し、それをインターネット上にも掲載する。芸術、人文科学、社会科学に関するハイパーテキストを利用したアーカイヴを作成し、それらは "The Life of Adam and Eve: The Biblical Story in Judaism and Christianity"、"Identity in the Age of Mechanical Reproduction: Technologies of Assimilation in the American City, 1880-1940"、"Noun Classification in Swahili"、"Pompeii Forum Project"、"Piers Plowman"、"Bell's Path to the Telephone"、"The Rossetti Archive"、"Sixties Project" などを含む。また当インスティテュートは、大学図書館の The Electronic Text Archive と提携して、英仏独羅日語の電子テクストの公開、さらには教育及び政府機関や企業へのコンサルティング、プログラミング、データ・サーヴィスも行っている。

(6) Alternative-X (gopher://marketplace.com:70/11/alternative.x)
 フィクション、詩、マニフェストその他の革新的作品の発表の場を提供するサイト。「革新的な」("altered") スタイルのエクリチュールを利用する同時代の作家、読者、ネットワーク・サーファーが、国際的地域を舞台に常時拡大する文化労働者(art-workers) や 芸術家関係者 (artist-associates) のネットワークを連結し、互いの伝達を促進し、集まる場を提供するという目標を掲げる。アヴァン・ポップの小説家、言語詩人、サイバーパンクのエッセイスト、ビートのリポーターなどの作品が集まる。

(7) Best-Quality Audio Web Poems (Rhode Island) ("http://www.cs.brown.edu/fun/bawp/home.html")
 詩人・小説家の朗読の録音を提供するサイト。組織的に様々な詩人の朗読を集めてそれを提供するというよりは、サイトの所有者である詩人が個人的に自分たちの朗読を公表する場という性格が強い。詩の内容もアングラ的。

(8) Leaves Unbound (http://www.inforamp.net/~cayley/inleaves.html)
 ハイパーテクストを利用した "machine modulated poetry" (あるいは "cybertextual works")を作成する詩人 John Cayley のサイト。現在ケイリーが行なっている "Indra's Net" (あるいは Hologography) と名付けられたプロジェクトに基づく作品を掲載する。そのハイパーテクスト版のダウンロードも可能。

(9) Poems Pace (http://www.teleport.com/~rawdirt/poemspace.html)
 Bob Phillips というオレゴン州在住の詩人の作品を掲載するサイト。視覚詩とそれに類する詩が多い。フィリップスのインスタレイションの模様を知らせるゴファー・サイトに接続する。

(10) Mudlark (http://www.unf.edu/mudlark)
 Mudlark という電子雑誌のサイト。編集者 William Slaughter (フロリダ在住の詩人)。フロリダ在住の詩人の作品を掲載する。比較的読みやすい詩が多い。

(11) Nate Dorward's U.K. Small-Press Poetry Scene Online Page (http://ac.dal.ca/~ndorward/homepage.html)  Dalhousie University (イギリス)の英文科の大学院生 Nate Dorward のサイト。ドーワードが研究するイギリスの小出版社(small press)から作品を出版している詩人たちに関する情報がある。イギリスの small-press poetry 一般に関する書誌、朗読会やイヴェントに関する情報、small-press から出版する詩人の一人 J. H. Prynne に関する書誌などを掲載する。

(12) Persica Ezine (http://plant.peachweb.com/persica)  PeachWeb Plantation という chat system のメンバーから寄せられた作品を集める電子雑誌のサイト。短編小説、詩、アートその他を掲載する。会員制。

(13) CAPA-Contemporary American Poetry Archive (http://camel.conncoll.edu/library/CAPA/capa.html)
 読者や研究者のために絶版になった詩集を掲載することを目的とするサイト。アーカイヴに掲載される本はダウンロードも自由にできるが、著作権は著者が有することをうたってあり、複数部数の複写がなされる場合は代金を支払うこととなっている。また絶版だった本が再版される場合には、その本はアーカイヴから外され、代わりに再版の広告を掲載するという。商業用出版社、大学出版、小出版社(small press)から出版された本がアーカイヴ掲載の対象とされ、自費出版、自費出版専門の出版社から出版された本は対象とされない。

(14) Jim Rosenberg のホームページ (http://www.well.com/user/jer/index.html#menu)
 ハイパーテクストを用いた "interactive poems" を作る詩人 Jim Rosenberg のホームページ。ハイパーテクストによってリンクされる複数のテクストを重ねて提示する "diagram poems" を掲載し、磁気テープを利用して複数の声をかぶせて録音した作品("poetry for simultaneous voices")、言葉を用いたインスタレイション ("Word Installations")についての解説(これらも間もなくサイトに掲載される予定とのこと)、及び伝統的フォーマットに則った詩がある。

(15) ViSuAL pOeTry (http://wfmu.org/~kennyg/visualpoetry/visualpoetry.html)
 視覚詩の作品を集めたサイト。Susan Bee、Henrik Drescher、Johanna Drucker 、Kenneth Goldsmith & Joan La Barbara、Dick Higgins、Bill Luoma、Blair Seagram らの作品を掲載する。そのうち Kenneth Goldsmith & Joan La Barbara の 73 Poems は、視覚テクストに音声も加えられている。

(16) Poetry on the Web (http://www.geocities.com/Paris/1416/)
 アクセスしたものが自分の詩を投稿できるサイト。ホームページの作り方のマニュアルがあり、それに従って作った自分のページをリンクさせることができる。

(17) Poet's Park (http://www.soos.com/poetpark/)
 低コストで詩人にホームページ作成のための場所を提供するサイト。同名詩の雑誌としてそれぞれのホームページをリンクさせる。環境保護のためにあらゆる出版社が電子テクストに移行することを主張する。アーカイヴには Rexroth、Bukowski、Kinnell、Ferlinghetti らの詩が載せられている。

(18) Howl/Drive Project (http://www.cwrl.utexas.edu/~slatin/20c_poetry/projects/gh/)
 Austin, TX 在住の詩人 Mike Henry のサイト。自分の詩 "Drive" を掲載し、それを Allen Ginsberg の "Howl" と比較する。またギンズバーグの詩についてのコメント、ギンズバーグからのリスポンスなども載せる。

(19) A Possible State of Electronic Poetry (http://www.ucet.ufl.edu/~artur/exhib.html)
 コンピューターを利用した視覚詩を掲載するサイト。作品に加えて、理論に関するエッセイも掲載する。

(20) Stroll of Poets (http://www.ccinet.ab.ca/stroll/)  カナダの Alberta の Stroll of Poets Society のサイト。詩の雑誌 e-poem (第2号)を載せ、テクストにオーディオ・ファイルをリンクさせた実験詩も掲載する。

(21) Random Haiku Generator (http://www.2d.org/Haiku/haiku.html)
 英語俳句のサイト。アクセスしたものが自由に投稿でき、また投稿された俳句を読むことができる。投稿されたもののうちおよそ30パーセントが、シラブルの数が誤っているため削除されたという。現在投稿された俳句は4169行を数えるという。

 こうした現代詩に関するサイトとは別に電子雑誌 (electronic journal) と銘打たれるものも数多く見出される。以下にそのいくつかを挙げる。サイトの表示を見れば分かるように、(22) から (34) までは、上記の Electronic Poetry Center のページにぶら下がる格好となっている。

(22) RIF/T: Electronic Space for New Poetry, Prose, & Poetics (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/rift)
 Kenneth Sherwood & Loss Pequeno Glazier の編集。サイトは State University of New York at Buffalo にある。詩を掲載するのみでなく、前の号に対するリスポンスのセクション("Derivations/Deviations" と題されている)、詩人の個人のサイトへのリンク("Chapbook Extensions" )及び書評を含む。これまでに4号が出ている。実験的な詩風を特徴とする。第4号は "Transpoesis" 特集号と銘打たれ、翻訳と翻訳についての論攷を載せる。

(23) Brink/ Plymouth, Devon, UK (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/brink/.index.html)
 Alexis Kirke 編。"Editorial" にこの雑誌の6項目の目標を載せる。(a) コンピューターネットワークに接続していない詩人の作品をネットワーク上に載せる。(b) HTML を利用した詩("Hyper Poetry")を掲載する。(c) ネットワーク上により多くのイギリス人の詩人の作品を載せる。(d) 詩と散文の未来について論じた論文を掲載する。(e) 米国の小出版社が出している雑誌を引き寄せる(イギリスの小出版社の雑誌は数多く所有しているので)。(f) グラフィックスとマルチメディアのファイルを取り込む。(原文には番号はついていない。)創刊号が出たばかり。

(24) Dark Ages Clasp the Daisy Root(Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/dark)
 Andrew Schelling & Benjamin Friedlander 編。現在第4号のw.w.w. 版を準備中。"Editorial" として、Charles Olson、Mark Tayler からの引用を用いたポストモダンについての思索を掲載する。

(25) DIU / Albany (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/diu)
 「架空大学(Imaginary University)の描写を目指す週刊のニューズレター」と銘打たれる。DIU とはその "Description of the Imaginary University" の頭文字。唐突に作品が始まり、それぞれの作品の末尾にはイニシャルかファーストネームのみが付けられている。Imaginary University のシラバスも掲載する。感想等の送り先として State University of New York at Albany のアドレスが掲載されている。第1号は1994年7月4日発行。これまでに28号が出され、それらすべてが Web 上に掲載されている。第28号は1995年7月刊。

(26) Experioddi(cyber)cist / Florence, AL (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/exper)
 アンダーグラウンドのアート、科学その他(サイバーカルチャー)を扱う雑誌であることを示唆し、実験的な作風の詩と散文を掲載する。これまでに1号から8号までを掲載している。

(27) Inter\face / Albany (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/interface)
 創作された作品の発表と流通のためのオープン・フォーラムであることを謳う詩の雑誌。State University of New York at Albany 発行。これまでに9号を掲載。

(28) Passages: A Technopoetics Journal / Albany, NY (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/passages)
 DIU が掲げた「架空大学」を発展させたと思われる「架空大学都市("imaginary univercity")」の描写を進展させることを目指し、「詩とテクノロジーを理論的にかつ/あるいは直結させる首鎖」となることを謳う。第1号は1995年3月1日発行。マニフェスト的な詩と散文を掲載。現在第2号(1995/3/19 発行)までを Web 上に載せる。State University of New York at Albany に本拠を置き、リスポンスの宛先は DIU のそれと同じ。

(29) Poemata - Canadian Poetry Assoc. / London, Ontario (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/poemata)
 カナダ詩協会の機関誌 CPA Poemata のニュースレターに掲載された告知欄("Announcements")、レポート、書評を Web 上に乗せたもの。作品そのものは掲載しない。現在第10巻6号を掲載中。

(30) Juxta/Electronic / Charlottesville, VA (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/juxta)
 Ken Harris & Jim Leftwich 編。現在1995年6月刊の電子版第1号を掲載。詩と散文を集めるが、 "Articulating Freedom: Three Brief Notes Regarding the Contemporary Underground/Otherstream" と題された巻頭の作品が示唆するとおり、実験的な作品が多い。

(31) TREE: TapRoot Electronic Edition / Lakewood, Ohio (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/tree)
 "independent, underground and experimental language-centered arts" を掲載する電子雑誌。編者が "Micro Press" と呼ぶほどの小出版社から出版される、主として「言語詩」への関心を反映させる作品を掲載する各地の雑誌とチャップブックの書評(紹介)を載せる。プリント版は Cleveland Review に掲載されている。Burning Press 発行。1992年8月第1号発行。これまでに6号を発行。季刊。Louigi-Bob Drake 編。

(32) TREE: TapRoot Electronic Edition (Hypertext) / Lakewood, Ohio (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/treehome/treehome.html)
 email 版の TREE の w.w.w. 版。雑誌名とチャップブックの著者名の索引がつく。またプリント版の目次も掲載する。

(33) We Magazine / Santa Cruz (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/we)
 オールバニー、ニューヨーク、サンフランシスコ湾近辺、サンタクルーズで活躍する11人の詩人の編集による詩の雑誌。現在17号(Vol. 1 - 18)を掲載している。

(34) Witz / Toluca Lake, CA (Texts) (gopher://wings.buffalo.edu/hh/internet/library/e-journals/ub/rift/journals/selected/witz)
 年3回発行の批評誌。詩その他の文芸に関するエッセイと詩集の書評を載せる。Christopher Reiner 編。第1巻第1号の巻頭には Steve McCaffery からの引用として、「Witz とは何か」と題された一文が掲載され、それがドイツロマン派によって用いられた概念であることを示す。書評で扱われる作品は「言語詩人」を中心とする。1992年創刊で現在第2巻第3号までを掲載。

(35) The Write Stuff (http://info.utas.edu.au/docs/ahugo/tws/)
 オーストラリア及びその他の地域から書評、インタヴュー、論文、短編小説、詩を発信する電子雑誌。"Light the candle and write!" をモットーとする。その意味は「作家になるために必要なものは鉛筆と紙と明かりだけ」ということで、そこには「インターネットを使った電子出版というエキサイティングなテクノロジーを駆使しているが、自分たちの活動の最も重要な焦点は、依然として、作家及び書くという行為なのだ」という主張が込められている。Giles Hugo と Anne Kellas 編。University of Tasmania にサイトを置く。様々な意味における「良い作家」と「良い書き物」をプロモートすることを目標に謳い、第1号の書評の対象は William Gibson から Forrest Gump にまで及び、また論文のトピックも O.J. Simpson から Aids まで多岐にわたる。各号それぞれ一人ずつの詩人と小説家の作品をフィーチャーする。第1号は G.W. Robinson という南アフリカの小説家と Michael Dargaville というオーストラリアの詩人が選ばれている。

(36) Postmodern Culture / North Carolina (Connect) (http://jefferson.village.virginia.edu/pmc/contents.all.html)
 North Carolina State University、Oxford University Press 及び University of Virginia の Insitute for Advanced Technology in the Humanities (上記 (4))の出版。印刷されたもの、email 版、Web 版の三種類のテクストを同時に出す。1990年9月発刊。年3回発行で、現在第6巻第1号までが出る。学際的研究のための電子雑誌であり、また伝統的な分析的論文からヴィデオのスクリプトその他にいたる新しい文学形式によって書かれたテクストまで様々な種類の書き物を提供することを謳う。論文と書評を主とする本格的な雑誌だが、Web サイトには "Special Collections" として "PMC [Postmodern Culture] Prize Pieces"、"PMC Popular Culture Columns"、"PMC Reviews"、"PMC Fiction and Poetry"、"PMC-Talk Archive"(ディスカッション・リストの記録)、"Related Readings" の各セクションがあり、"PMC Fiction and Poetry" には Bob Perelman、John Yau、Charles Bernstein らの作品が掲載されている(Bernstein の作品には朗読がつく)。また "Related Readings" のセクションには "The Surrealism Server"、"WebMuseum: Cubism to Abstract Art (1900-1960)"、"Literary Kicks (a collection of Beat Poetry resources)"、"Hyperizons: Hypertext Fiction" 等ポストモダン文学・文化一般の研究にとって有益な資料を備えている。また "PMC-Talk Archive" のセクションにはディスカッションの記録及びエッセイに加え、ポストモダニズムに関する講義のシラバスもまとめられている。

(37) Morpo Review (http://morpo.novia.net/morpo/)
 詩と短編小説を載せる電子雑誌。Robert Fulkerson の編集。詩は基本的にはテクストのみ。

(38) Lingo (http://www.crocker.com/~jongams/newhp/lingo/lingo.html)
 映画、音楽、写真、詩、その他(インタヴューを含む)を掲載する総合電子雑誌。Jonathan Gams 編。Hard Press 発行。現在第4号を掲載。詩は主としてテクストのみだが、第4号には poem-picture と名付けられる Philip Guston の視覚詩が掲載されている。


3.

 コンピューターの使用、そしてインターネットの利用は、詩作という行為に一体どのような変化をもたらしつつあるのだろうか。"Hypertext, Hypermedia and Literary Studies: The State of the Art" と題された論文の冒頭で、Landow と Delany は、従来のメディアとともに育まれた「テクスト」の概念が、線形的 (linear) であり、閉じられており (bounded)、固定されている (fixed) と述べてこれを規定し、ハイパーテクストはこれらの特質を超越するコンピューター利用として定義できると言う(3)。従来のテクストが一方向的に作られまた読まれたものであるのに対し、ハイパーテクストは非線形的、すなわち読む際に想定される順序を固定しないで作ったり読んだりすることができる。また従来のテクストが物理的な媒体に固着された変形不能のものであったのに対し、複数個のテクストのブロックとそれらを連結する電子的リンクからできているハイパーテクストは変形可能なテクストであるとされる。こうした新しい特性は、その学術的、教育的利用の可能性にとって極めて重要なものであることは、前掲のディレイニーとランドウの本が明らかにしているとおりであり、またそれらの特性を活かした小説、いわゆるハイパーフィクションも近年数多く出版されている3。だが、詩の世界においては、状況は必ずしもこの限りではないようである。ここでは、上記のサイトと電子雑誌の調査から次の4点を指摘しておきたい。(i) ハイパーテクストの特性を活かした新しいエクリチュールの獲得(非線形的・非連続的エクリチュール、相互的関係に基づく創作、視覚的・聴覚的要素の導入など)はネットワークの利用により部分的に進展しつつある。(ii) 詩人たちが自由な作品発表の場を獲得したこと(出版機会の平等、絶版本の維持など)の意義は大きい。(iii)しかし、 詩テクストの受容形態が変化し、それは新たな問題を提起している。(iv) 新しいエクリチュールを獲得するために必要な技術と環境へのアクセスの不平等の可能性があり、これも新しい問題となりうる。以下、これらの点について簡単に触れておく。

(i) 新しいエクリチュールの獲得

 コンピューターを利用することによって、詩人は今やフォントを自由に選択でき、絵画、写真、音声、ヴィデオクリップをテクストに取り込むことができるようになった4。つまり詩人は、これまで一般的には印刷所に依頼、あるいは精々共同作業たらざるを得ず、またその意図にも関わらず往々にして経済的理由から断念せざるを得なかった、テクストの視覚的・聴覚的効果の操作をある程度個人で行なうことができるようになったのである。そのことは、テクストの視覚性・聴覚性の重視という英米の現代詩(Modern Poetry)の一つの実験をさらに押し進めるという意義を持っている。Ezra Pound が言語による伝達を達成するための三つの主たる手段として挙げた "phanopoeia, melopoiea, logopoeia" (63) の概念を思い出すまでもなく、Jerome McGann も言うように、「文学作品というものは、精巧度の違いはあれ、それ自身つねにマルチメディアの形態なのである」("The Rationale of HyperText")。実際、William Blake、Stephane Mallarme ("Un Coup de Des") 、Guillaume Apollinaire(Calligrammes)、パウンド(The Cantos)、e. e. cummings、Charles Olson (Maximus Poems、Volume Three)、John Hollander その他の視覚的実験の伝統が示すように、現代詩における視覚の取り込みの歴史は短いものではないし5、また詩の音楽性を重視したフランス象徴派、楽譜を詩テクストの中に取り込んだパウンドや Zukofsky、オペラのリブレットをものした Gertrude Stein、Auden らが示すように、詩と音楽の接点も広い。パウンドの『キャントーズ』あるいはズーコフスキーの A は、視覚と聴覚と意味の総合芸術としての詩作の優れた例として挙げることができよう。
 コンピューターを利用した伝達形態、ことにネットワークを用いた作品の発表は、こうした詩の一つの理想を実現するための有益な手段となり得ていることは確かである。それは特に視覚詩人たちにとっては貴重なミーディアムであり、実際、(3)(8)(14)(15)(19)(23)(38) に、視覚詩人がこの媒体を積極的に利用している様が窺える。(15)(19) のように視覚詩の作品を集中して掲載しているサイトもある。また詩テクストへのイメージの導入に加え、詩の朗読を文字テクストに付随させることにより、これまではただ「読解」のみが可能であった詩の受容の現場に聴覚性を加えることもできるようになっており、(4)(7)(14)(20)(36) にその利用例が見てとれる。
 一方、すでに述べたように、ハイパーテクストの利用により、始まりから終わりに向けて一方向的に進行するそれまでの線形的エクリチュールから、一つのテクストから複数の方向性が開かれている非線形的エクリチュールへの移行もなされうる。またそのエクリチュールは必然的に「非連続的」なものとなる。行分けの如何に関わらず、詩のテクスト中に、別のブロックに繋がるリンクがあり、読者はそのリンクを選択してその別のブロックに移行することもできれば、リンクしないでもとのテクストを読み進むこともできる。従って、一つの作品を読む順序が一通りに決定しているわけでなく、読者の選択による複数個の読み方があることになる。もちろん読者はもとのテクストからリンクを伝って選択した別のブロックを読み終えた後、そのブロックからさらに派生する別のブロックへ行くことも、もとのテクストに戻ることも、最初に選んだブロックを先に読み進むこともできる。作者によって決定された唯一の読み方が存在しないという点で、ハイパーテクスト的エクリチュールは従来の「著者」の概念を衝き崩し、またそれゆえに「中心」のないテクストとして評価される。Kathleen Burnett はこのようなハイパーテクストのエクリチュールをドゥルーズ/ガタリの「リゾーム」の概念に結びつけているが、ディレイニーとランドウの著書が示しているように、ハイパーテクスト的エクリチュールは、しばしば主体と真理の中心性の解体を試みた西欧のポスト構造主義の思想と結びつけられている6。実際にハイパーテクストを利用した非線形的エクリチュールの詩の例は、(3)(8)(14)(22)などに見出される。
 こうした新しいエクリチュールの特性として、さらに、ネットワークにつながる複数の詩人が共同で一つの作品を作るという試みも挙げられる。ネットワークを用いた「連詩」の発想である。この試みは、本来コンピューターやネットワークを利用しなくても可能なものであり、日本でも『櫂』の例や、大岡信らが海外で巻いている連詩の試みなどがよく知られているが、ネットワークで詩人たちのコンピューターが繋がれることにより、連詩のためのよりよい環境が整ったとも言える。その例は (1) のEPC が関係するディスカッション・フォーラム "UB Poetics Discussion List" に見られる。

(ii) 自由な作品発表の場の獲得

 現状では、詩人にとって、これらのエクリチュールの革新よりはむしろ、作品発表のプロセスの変革の方が大きな意義を持つように思われる。詩人たちはいまや、コンピューター・ネットワーク上に自分の(あるいは自分たちの小雑誌の)ホームページを立ち上げ、自分の作品をそこに掲載することにより、自由に作品を発表することができるようになった。これによって、大手出版社や大手文芸雑誌が作品の出版や掲載をコントロールしていた従来の出版界・詩壇のヒエラルキー、あるいは出版に際してのイデオロギー的コントロール等を覆すことができると一部では考えられている。実際、EPC 及び EPC がサポートする現代詩関係のサイト及び電子雑誌の多くがアヴァンギャルドあるいは革新的な詩を掲載するものであり、またその多くは一般に small press と称される小出版社の雑誌である。(8)(9)(14)(18) のように、実験的な詩を作る詩人が個人で立ち上げているサイトもある。コンピューター・ネットワークの活用の意義はこの点において特に大きいのではないだろうか。数々の小出版社が出している雑誌をインターネット上に載せるための場所を EPC が提供していることの意義もそこにある。また EPCと は独立した活動をしている (13) の目的が、絶版になっている詩集の掲載であることもこの問題と密接な関係を持つことは言うまでもない。
 この作品発表のプロセスの革新は二つの観点から眺めることができる。一つは、近年の文学史におけるキャノン(聖典)論争との関連である。ディレイニーとランドウが文学研究について言うように、経済的理由を含む様々な理由で、アンソロジーや批評的エディションに載せられない数多くのテクストを、いまやネットワークの上にのせることができるようになっている。文学研究用資料のオンライン化が進み、それぞれの資料がリンクされれば、そうした資料がアンソロジーや批評的エディションに載せられることの特権的意義は相対的に薄れるはずであり、結果的に、既成のキャノンの組み替えをオンライン上で果たすことができる。少なくともネットワークを利用して、既成のキャノンに捕らわれない文学史を教師や学生が選択することができる。インターネット上の現代詩のサイトが担う意義もこれに比較しうるものである。詩におけるアヴァンギャルドの作品がキャノンからの締め出しを喰ってきたことは、EPC とも関係の深い「言語詩人」(L=A=N=G=U=A=G=E poets)らの作品が大出版社の出すアンソロジーにこれまでそれほど掲載されなかったことからも知れるところである。オンライン上にアヴァンギャルド、あるいは実験的な作品をのせることは、このような詩作品を閉め出してきた従来のキャノンとその背後にある作品評価をめぐる制度を解体する効果を持つことになろう。
 今一つの意義は、視覚面(及び聴覚面)が重視される詩作品の再評価である。New Oxford Book of Romantic Period Verse を編集することになったマッガンは、ブレイク作品その他のカラー版ファクシミリを入れたいという意向がかなわなかったことを述べているが ("The Rationale of Hypertext") 、やはり経済的理由を含む様々な理由から、従来全集や批評的エディションに組み入れられなかった視覚性を強調した作品をネットワーク上にのせることにより、読者、研究者がそれらの作品に接する機会を設けることができることになる。古典のテクスト編集におけると同様の意義が現代詩に関しても認められる。


4.

 こうしたネットワーク利用の積極的意味合いにも関わらず、詩におけるインターネットの利用に対するささやかな疑念が生まれぬわけではない。

(iii) 読者のネットワーク環境による詩作品の形態的多様性(作品の受容形態の不安定)

 ネットワークを利用して詩を発表する際の一つの問題点は、詩のテクストが、読者が持つコンピューターの性能、またそのコンピューターのネットワークとの接続の形態によって、さらには個々の端末の設定に従って、その相貌を変えるということである。例えばイメージを利用した視覚詩は、読者の持つモニターのカラー数、選択したスクリーンサイズなどに限定されて、作者が意図した色彩効果を発揮できぬ可能性があるだろうし、また通常の詩作品も、どのフォントを選択するかによって、テクストが持つ視覚的効果が異なるはずである。音声の場合も同様である。各自の利用するスピーカーの性能によって、復元される声の質が多かれ少なかれ変わるはずである。
 そのことは、例えば(8)の例にはっきりと看て取ることができる。Cayley の "cybertextual works" は、今のところはネットワーク上でこれを読むことができず、読者がそれぞれダウンロードして受容することになっているが(将来的にはネットワーク上に載せられる)、ハイパーテクストを利用した、テクストが自動的に開示されていく類の形態の作品である。プログラムをスタートしてテクストを再現すると、スクリーン上に自動的にテクストが現れ、また自動的に消えて次のページが開示される(読者が手動で読み進む方法を選択することもできるが)。その様は、テクストの内容それ自体が示唆するように、"ghostly" な感覚を与えるものだが、コンピューターのシステムの性能が変わると、その開示のスピードが必然的に異なるものとなる。同じテクストが性能の異なる環境で作動されると、作品が読者に与える「効果」に差異が生じるのである。
 言うまでもなく、この事態は、主として写真芸術を想定して考察されたベンヤミンの「複製芸術」の特性の一つとして数えられるものかもしれない。かつての絵画芸術がオリジナルであることによって持ち得た「アウラ」が、複製によって流通し、それゆえオリジナルであることが意味を持たぬ写真においては失われる。ネットワークを通じて享受される詩作品も同様に、オリジナルであるという特権とともに「アウラ」を失うというわけである。しかし、この現実に対しては二つの可能な解釈が考えられる。一つは、詩作品にはやはりオリジナルが存在し、それが複製化されるとする立場である。詩作品はあくまで詩人によってオンライン化される前に形成されるが、それはネットワークに乗った瞬間から詩人の手を離れ、複製可能にして変形可能な存在と化すとする態度である。これに対し、今一つの立場は、詩作品のオリジナルの存在を認めない立場である。そもそも詩において発信者と受容者の双方が相俟って一つの創作行為が完遂されるとし、詩の産出者の概念を拡大して、詩作を発信者と受信者の共同作業とみなす立場である。詩作という行為を、オンライン化(あるいは印刷)され、読者が個々にそれを読む前の言語構築のみに限定する立場、つまり詩の印刷のされ方、読まれ方は純粋な詩作行為の範囲外にあるという考えは依然として強いように見受けられ、オンライン化を積極的に押し進める詩人たちとの間にしばしば議論が戦わされているようである7

(iv) 機械的環境へのアクセスの不平等

 コンピューター・ネットワークが理論上もたらしうる積極的可能性にも関わらず、実際にインターネット上に乗せられた詩のサイト及び電子雑誌を概観してみると、実はこの媒体の特性を積極的に活用している例がそれほど多いわけではないということがわかる。実際には平常の詩テクストをそのままネットワーク上に載せたものが多い。その理由として考えられるのは、一つには技術的制約、今一つには詩テクストとイメージあるいは音声の混交という詩のスタイルに対する懐疑である。後者は前項で触れた、詩作行為そのものの捉え方の不一致をストレートに反映するものである。視覚性と聴覚性を取り込む実験を積極的に行なっている詩人の数がそれほど多いとも考えられないし、また、あらゆる詩人がこの実験に移行する必然性もない。機械を利用して視覚性・聴覚性を導入した詩を異なる文芸ジャンルとして敬遠する向きもないとは言えないと思われる。
 一方、前者の理由はテクノロジーの持つ社会的な意義に関わるものである。イメージや音声を詩テクストに導入するためにはそれなりの装置と技術的知識が必要であり、しかもインターネット上でそのようなイメージを操作できる環境はますます限られてくる(多量のメモリーをネットワーク上で利用することの限定性)。従って、ここにそうしたイメージ及び音声の操作に必要な環境を利用することができる者とできぬ者との差違、すなわち従来の出版機会の不均等に勝るとも劣らぬ作品発表・制作の技術的可能性へのアクセスの不均等の存在が浮かび上がってくる。例えばネットワークを作品発表のために十分に活用するための環境として、企業あるいは大学といった大きな組織の設備を利用することは有利な条件となろうが、そのような環境にない者は EPC のようなサイトの助けを借りなければ、オンライン上で革新的な詩作を行なうことはおろか、作品をネットワーク上に乗せることすらもままならない8。今後、インターネットを利用した詩作品の公表がより活発になっていくかどうか、またコンピューターやネットワークの物理的特性が可能にするより一層の革新性が生まれるかどうかは、こうしたコンピューターとネットワーク環境のさらなる整備にかかっていると言えよう。
 日本よりは大きく進んでいるとはいえ、アメリカにおいてもインターネットを利用した詩の活動はまだ始まったばかりと言った方が正しいのかも知れない。インターネットが詩に与える影響についてより明確に知るためにはより多くの時間が必要であろう。しかし、コンピューター・ネットワークと詩の関連性は、詩一般に関する数々の問題を提起し、現代詩の研究に一つの重要な切り口を与えてくれるものであることは確かである。


1. 文献中の Delany and Landow は文学研究におけるインターネットの可能性について詳しい。ネットワークの研究用利用の様々な可能性の中でも、特に電子図書館の構想は意義深い。大学図書館をはじめとする様々な図書館がその資料をデータベース化してインターネット上に載せることによって、これまではその図書館の来訪者のみに許された1次資料を各研究室で見ることができるようになることは画期的と言わねばならない。現時点でもすでに Dante Gabriell Rossetti の原稿、絵、手紙などの一部分がデータベース化されており(Rossetti Archive)、また、Jerome McGann ("The Rationale of HyperText") によれば、Emily Dickinson、William Blake のアーカイヴも構築中とのことである。本文中の IATH の欄参照。

2. 例えば、現代詩と詩論についてのディスカッション・グループ "UB Poetics Discussion Group" で、詩人の Ron Silliman は、"In fact, most of the poets in the US are not connected yet." と発言している (1/6/1996)。"Poetics" のディスカッションの記録は EPC で読むことができる。

3. ハイパーフィクションの作品は、例えば Hyperizon (http://www.duke.edu/~mshumate/hyperfic.html) で読むことができる。
4. HyperCard を用いた創作についての William Dickey の体験談を参照のこと。

5. 現代詩における視覚性取り込みの試みについては、文献中のMcGann, Black Riders を参照のこと。

6.Bernett の論文に加え、文献中の Joyce、Ulmer も参照のこと。

7. 例えば、"UB Poetics Discussion Group" における "worldwide web presses" をトピックとする議論(1996年1月)参照。

8. もっともホームページ作成のためのマニュアルを載せ、自由に自分のページを作ることのできる Poetry on the Web (16)、Poet's Park (17) のようなサイトもあるが。

文 献


ベンヤミン, ヴァルター. 「複製技術時代における芸術作品」. 高木久雄、高原宏平訳. 『複製技術時代の芸術』晶文社, 1970.

Burnett, Kathleen. "Toward a Theory of Hypertextual Design." Postmodern Culture 3.2 (1993): 28 pars. Online. Internet. 27 Oct. 1995. Available gopher://dewey.lib.ncsu.edu:70/0ftp%3Adewey.lib.ncsu.edu@/pub/stacks/pmc/pmc-v3n02-burnett.

Joyce, Michael. "Notes toward an Unwritten Non-Linear Electronic Text, 'The Ends of Print Culture.'" Postmodern Culture 2.1(1991): 45 pars. Online. Internet. 27 Oct. 1995. Available gopher://dewey.lib.ncsu.edu:70/0ftp%3Adewey.lib.ncsu.edu@/pub/stacks/pmc/v2/n1/JOYCE.991.

Landow, George P. and Paul Delany. Hypermedia and Literary Studies. Cambridge, Mass.: MIT P, 1991.

---. "Hypertext, Hypermedia and Literary Studies: The State of the Art." In Delany and Landow (eds.), Hypermedia and Literary Studies. 3-50.

McGann, Jerome. Black Riders: The Visible Language of Modernism. Princeton: Princeton UP, 1993.

---. "Radiant Textuality." n. page. Online. Internet. 10 Dec. 1995. Available http://jefferson.village.virginia.edu/public/jjm2f/radiant.html.

---. "The Rationale of HyperText." n. page. Online. Internet. 10 Dec. 1995. Available http://jefferson.village.virginia.edu/public/jjm2f/rationale.html.

Pound, Ezra. ABC of Reading. London: Faber and Faber, 1951.
ピンチョン, トマス. 「ラッダイトをやってもいいのか」. 宮本陽一郎訳. 『夜想』25 (1989): 16-24.

Ulmer, Greg. "Grammatology Hypermedia." Postmodern Culture 1.2 (1991): 19 pars. Online. Internet. 27 Oct. 1995. Available gopher://dewey.lib.ncsu.edu:70/0ftp%3Adewey.lib.ncsu.edu@/pub/stacks/pmc/v1/n2/ULMER.191.