■シェイクスピア『オセロー』Othelloについて

 

■テキスト

ここでは主に、『オセロ―』松岡和子訳、シェイクスピア全集13、ちくま文庫(筑摩書房、2006)を使用。

 

■質問

1  この劇の特徴のひとつは、公的要素と私的要素の混在である。第一幕第三場はその最初の例である。オセローとデズデモーナは、彼らの私的な関係(の定義)を公的な場所で表明しなければならない。その箇所では、主人公二人は無理に公的な場所(それも「国家緊急の事態」一幕二場)に引きずり出された印象がある(同時に国家が危機的事態のときに、対トルコ戦の戦略本部においてオセローに「なれそめ」を語るのを許すというチグハグ感!)。二幕二場冒頭では、トルコ軍に対する勝利の祝いは同時に将軍の結婚式の祝いでもあることが布告される。二幕三場では、軍人のポストという公的な問題に、デズデモーナが(取り成し役として、今回も「無理」な感じで)関係させられる。同様の現象は劇のその後の展開においても観察できる。デズデモーナの愛を疑い出したオセローは、「オセローの職業は失われてしまった」(三幕三場)という。またオセローが本国から帰国命令を受ける場面(四幕一場)では、ロドヴィーコーに対する公的な返事と、妻に対する私的な感情表明が混在している。五幕一場冒頭、イアゴーに傷つけられたキャシオーの声が響く。それを耳にしながらオセローはデズデモーナを殺害するため寝室(「情欲でけがれたお前のベッド」)へと向かう。これは、彼が公職上の責任を放棄する瞬間である。これらはこの劇において、いかに深く公的要素と私的要素が貫入し合っているかを示唆する。公的/私的という観点から、劇を検討してみよう。

 

2 劇冒頭、ロダリーゴーは「おまえがこのことを知ってたなんて」とイアゴーに言う。すなわち、彼だけが、主人公二人の特別な関係について知っていた(どのように知ったのか?)。一幕二場、イアゴーは「結婚のほうは/ちゃんとお済ませになったんでしょうね?」とオセローに質問している。これに対して彼は返答しないが、少し後で「夫としての立場」という。また少し後で、イアゴーはキャシオーに「結婚なさったんだ」というと、後者は「誰と?」と応じている。情報通のイアゴーでさえ、オセローの結婚の正当性・完全性には確信がないようにみえるのだが、どうだろうか。一幕三場では、オセロー自身、「私がこのご老人の娘御を連れ去ったのは/まぎれもない事実です。事実、結婚もしました」と述べる。しかし、その言葉自体が、彼の言う「結婚」は異例なものという印象を与える。このことについてさらに考えをめぐらしてみよう。

 

 

 


(C)Muranushi, All Rights Reserved.