■ジョン・ダン(John Donne)の言葉

■テキスト

湯浅信之訳『ジョン・ダン全詩集』(名古屋大学出版会、1996)より。

 

■言葉

 

悲しみは、向こうから来るが、愛だけは、/我々を呼びつけて、噛まずに、飲み込み、/連鎖銃のように、男をならべて薙ぎ倒すのだ。/愛はカマスのような暴君、我々の心は雑魚だ。78-79

 


僕の墓が、再び堀り開けられ、/新しい客人を収める時が来て、/(近ごろでは、墓も女にならって、/一人だけの寝床でなくなった)墓堀が、僕の骨に巻つけてある金髪の腕環を見つけたなら、そのままそっとして、/ここに眠っているのは、愛しあった二人で、/このような工夫をして、あの最後の忙しい/運命の日に、暫くここに来て、魂の再会を/楽しもうとしているのだ、と考えて欲しい。103

 


美女だけを愛でるひともいや、/誰でも美女の尻は追うもの。/醜い女を求める男も駄目よ、/判断力がからきしないから。126

 


春のような美人も、夏のような美人も、共に及ばない、/一つの秋のような顔の中に私が見た、あの美しさには。165

 


王様たちでも、(キスを)下から始めるのが早道だと考えるなら、/恋人だってそれに習って、足から上に上ればよかろう。206

 


足は最も偽装しにくい処、最も変化しない処でもある。/悪魔だって、足だけは隠せない、と人々は言っている。/足は真心を表わす象徴であり、じっと動かずにいるもの/なのである。寝床に真っ先に入って来るのも足である。206

 


足は君が求めてやまない処と、何らかの類似性を持ち、/その地図として十分に役立つものなのである。206

 


賢く疑え。271

 


神は無から我々を造ったが、再びそれを無に帰そうと、/我々はひたすら努力しているのである。427

 


人間以上のものにならなければ、お前は蟻以下である。429

 


彼女がどれほど我々に相応しく、どれほど不変不動で、/優しく、あらゆる点で評判がよく、また、あの大胆な/異端、すなわち、女は友情の対象ではないという説を/否定するのに適切な存在であったか 496

 


死が我々を成熟させるまで、我々は頑固な土塊である。527

 


ゴルゴタの丘の上で、/あの禁じられた知恵の木が、十字架と同じところに立って/いたのなら、その木の上に、/もぎ取るひともなしに、この魂はぶら下がっていたのである。538

 


如何なる動物でも、魚ほど、酷い目にあうことはない。/人間に対して、魚はど んな被害も与えず、悪意もない。552

 


ガブリエルが/キリストを彼女に与え、キリストが彼女をヨハネに贈る。まだ本当に母になっていないのに、子をなくした母だ。602

 


あなた[牧師]の中では、神の恵みと、ひとの罪が、出会うのである。630

 


ああ聖霊よ、私はあなたの宮なのである。/それなのに、泥の壁と固められた土からできている上に、/神を冒涜するような青春の獄火に焼かれて、/すなわち、傲慢と情欲の炎に焙られて、崩れかけている。608

 


 

 


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