国際多元文化専攻講義題目(2010年度後期2)

多元文化論講座 先端文化論講座 南北アメリカ言語文化講座 東アジア言語文化講座
ヨーロッパ言語文化講座 ジェンダー論講座 メディアプロフェッショナルコースの講義題目
日本言語文化専攻の講義題目 高度専門職業人コースの講義題目 文系大学院開放科目(pdf)

 

東アジア言語文化講座
◆講義名:韓国・朝鮮語表現論演習b
◇副題:日本語話者向け韓国語教育における諸問題(統語論・形態論・語彙論)
◇担当教員:飯田秀敏
◇開講時限:後期水曜2限
◇教室:北棟105
◇目的・ねらい:
 日本語話者を対象とする韓国語教育において教師が備えておくべき現代韓国語及び日本語の統語論・形態論・語彙論の基礎を整理し,教育現場で生じると考えられる諸問題を効果的に解決するための方法を検討することを目的とする。
 外国語教育において,目標言語と学習者の母語の統語論・形態論・語彙論に関する基本的知識を教師が備えていなければならないことは言うまでもないことである。しかし,これらの分野の研究成果をそのまま教育現場に持ち込むことは無用の混乱を引き起こすことにもなりかねない。学習の段階に応じて,どのように問題を把握しどのように解決に迫るべきか教材・教授法の両面から考察したい。
◇履修条件等:受講者は中級程度以上の韓国語能力を持っていることが望ましい。
◇講義内容:
 日本語話者を対象とする韓国語の教育現場でよく生じると考えられる統語・形態・語彙に関する具体的な問題をいくつか取り上げ,問題点の把握→問題点の解決に必要な統語論・形態論・語彙論の基礎知識の整理→問題解決の方策の方向付けで検討する。取り上げる問題点は,文構成(基本文型),用言の活用,時制,アスペクト,語彙構成などである。
 問題点の把握と基礎知識の整理は受講者の分担で行い,解法の検討は受講者全員の議論により行う。
◇成績評価の方法:平常点40%,レポート評価60%。
◇教科書,参考書等:授業で適宜指示する
◇注意事項:特になし。
◆東アジア言語論演習 b
◇担当教員:
柳沢民雄
◇開講時限:後期水曜3限
◇教室:文総522
◇目的・ねらい:言語類型論の基本概念を学ぶことを目的としている。特にロシア・ソヴィエトで発達した「内容的言語類型論」の概略を理解することを目的としている。
◇履修条件等:特になし。
◇講義内容:
 G. A. クリモフの『新しい言語類型学:活格構造言語とは何か』(三省堂)を読む。最近ようやく active languages を一つの言語類型として認知する傾向が見られるが、今期ではそれを最初に唱えたクリモフの著書を読む。ロシア語のできる学生はロシア語の原文で読んでもよい。
 講読は以下を予定している。
10月:活格構造の研究史
11月:活格構造理論の基本概念の定義
12月:共時態における活格構造
1月:通時態における活格構造
◇成績評価の方法:平常点(講読と意見の発表)とレポートによって評価するが、それぞれ7対3の割合で成績評価とする。
◇教科書:
G. A. クリモフ『新しい言語類型学:活格構造言語とは何か』(三省堂)1999.
◇注意事項:特になし
◆漢民族文化論 b
◇担当教員:楊暁文
◇副題:中国における1920〜30年代の文学と知識人
◇開講時限:後期月曜6限
◇教室:北棟105
◇目的・ねらい:
 I. 中国における1920〜30年代の文学とは何か、当時の知識人が何を考え、激動の時代をどう生き抜いたのかを理解する。
 II. 中国文学研究における方法論等を学ぶ。
◇履修条件等:前期(漢民族文化論a)から引き続き履修することが望ましい。
◇講義内容:
 中国における1920〜30年代の文学を対象として考える場合、種々さまざまな角度による考察が可能であるが、本講義では、受容と展開という視点からのアプローチを試みる。中国近現代文芸の草創期には、海外の文芸理論の紹介が盛んに行われていた。欧米からの直接的な受容も見受けられたが、アジアでいち早く近代化を成し遂げ、かつ漢字を共有する日本を経由して間接的にそれを吸収するケースが最も多く、そこに日本的な工夫が加味されたからこそ、中国のインテリの興味と関心を惹いたのではなかろうか。厨川白村の文芸理論専門書『苦悶の象徴』の中国語訳が魯迅と豊子ガイ [「ガイ」は立心偏に「豈」] により同時に出版されたのは、このことを雄弁に物語っている。『苦悶の象徴』が民国文壇にどのような影響を与えたか、中国の知識人はそれをいかに自分のものとしたのか、『苦悶の象徴』の受容過程に見出される文化的戦略とは何かなどについて、この講義を通して考えていく。
 I.『苦悶の象徴』の翻訳に見られる魯迅の意図や、白村理論を魯迅がどのように自らの創作にいかしたのかをめぐって、一部講読もまじえて講義する。
 II. 豊子ガイがいかに『苦悶の象徴』を受容し、展開していったかを分析する。
 III. 受講者がそれぞれ自らの研究テーマについて発表し、それについて全員で討論する。
◇成績評価の方法:出席(30%)と、研究発表(35%)、学期末の試験(35%)による。
◇教科書、参考書等:別途指示する。
◇注意事項:特になし。
◆現代中国語表現論 b
◇副題:中国語学の諸問題
◇担当教員:
丸尾誠
◇開講時限:後期月曜3限
◇教室:文総609
◇目的・ねらい:
 本講義では中国語学に関する中国語で書かれた論文(必要に応じて日本語で書かれたものを扱うこともある)の講読を通して、現代中国語における文法研究の方法論を身につけていく。
◇履修条件等:前期(現代中国語表現論a)から引き続き履修することが望ましい。
◇講義内容:
 ある言語事象について、その問題の所在を明らかにするとともに、形式・意味・語用・認知などの側面から、総合的に分析を加えていく。
 講義時には、一般言語学的な視点をも交えて、現代中国語の文法事項について相対的に論じる。一般言語学における言語理論が、往々にしてその特異性ばかりが強調されがちである中国語という言語を分析する際にどこまで有用かという問題についても併せて考えてみたい。履修の前提として言語学・日本語学・英語学などの知識をある程度有することが望ましい。従って、専門外の学生については、必要に応じて当該事項や概念・用語を調べてくることを別途課題として課すことがある。
 後期も前期同様、論文講読が主となる。
◇成績評価の方法:
 レポートほぼ100%。出席などによる平常点は成績評価時に、補助的に用いることがある。課題は原則として授業で扱った複数のテーマの中から選択できる形式とし、その中に「自分の興味のある文法事象」について自由に論じるものも入れる予定である。その場合、問題の発掘という点が、とりわけ重要となる。
◇教科書、参考書等:
 プリントを配布する。学界の動向をも見据えつつ、定期的に刊行される学術雑誌の新しい論文・著書に細心の注意を払い、必要に応じてそれを教材として使用することもある。
 取り扱うテーマに関連する個別の専門書・論文等については授業時に随時紹介するものの、中国語の文法を体系的に理解し、理論を構築していく際の前提となるものとして、以下に挙げるものに常日頃目を通して、文法研究の方法論を把握しておくことが望ましい。
 (1) 朱徳煕《語法講義》商務印書館(邦訳:『文法講義』杉村博文・木村英樹訳,白帝社)
 (2) 朱徳煕《語法答問》商務印書館(邦訳:『文法のはなし−朱徳煕教授の文法問答−』中川正之・木村英樹編訳,光生館) ※この (2) については邦訳本の方に訳者による詳しい注釈がついており、参考になるところが大きい。
 (3) 輿水優『中国語の語法の話 −中国語文法概論−』光生館
◇注意事項:特になし。
◆現代中国語表現論演習 b
◇副題:日中対照研究の可能性
◇担当教員:勝川裕子
◇開講時限:後期火曜4限
◇教室:文総522
◇目的・ねらい:
(1)主に中国語文法に関する諸問題を取り上げ、論文講読を通じて、問題の設定やアプローチの仕方等、文法研究の方法を学ぶ。
(2)言語教育への応用を目的とした日中対照研究の可能性を探る。
◇履修条件等:現代中国語表現論演習aを履修していることが望ましい。
◇講義内容:
 
 言語の表現形式はその言語を使用する民族集団の事象・現象・心象に対する認識を反映している。本演習では、中国語話者が、空間・時間・数量・否定・可能などに関わる事象をどのように認識し、それがどのように言語化されているかについて、統語的、意味的側面から探っていく。同時に、日本語表現との比較対照を通じて、それぞれの言語内部に見られる種々の現象を有機的に関連付けていきたい。また、中国語教育、日本語教育において、日中対照研究の成果をいかに応用していくかについても併せて考えていく。
 初回授業時に受講者の専門分野と関心のあるテーマを調査する。これに基づき、授業前半では中国語文法に関する個別的な問題を取り上げ、論文を講読しながら、全員で討論する。授業後半では毎回、受講者による研究発表(30分)とそれに対する質疑応答(15分)を行う。発表担当者には、授業で取り上げたテーマ、もしくは中国語・日本語における任意の言語事象を取り上げ、問題点の整理と独自の分析・考察を発表してもらう。(※発表の1週間前までにレジュメを作成し、教員の添削、修正を経た上で発表に臨んでもらいます。)
◇成績評価の方法:
 
以下の3点に基づき、総合的に評価する。
(1) 授業(ディスカッション等)への参加度(30%)
(2) 研究発表(30%)
(3) 学期末のレポート(40%)
※(2)(3)に関して、特に言語専門の受講者は、自身が関心を持つ任意の言語事象を取り上げ、関連付けて分析を深めていくことが望ましい。
◇教科書・参考書等:
 
講読用プリントを配布する。その他、取り上げるテーマに関連する個別の参考文献等についても、授業時に随時紹介していく。
尚、中国語文法の体系的把握や文法研究の方法論理解に役立つものとして、以下の文献を通読しておくことが望ましい。
(1) 朱徳煕 《語法講義》 商務印書館 (邦訳:朱徳煕著 杉村博文・木村英樹訳 『文法講義』 白帝社)
(2) 呂叔湘等著・馬慶株編 《語法研究入門》 商務印書館
(3) 陸倹明 《現代漢語語法研究教程》 北京大学出版社
(4) 徐烈炯・邵敬敏主編 《漢語語法研究的新拓展》 浙江教育出版社
(5) 大河内康憲編 『日本語と中国語の対照研究論文集』 くろしお出版
◇注意事項:
 
中国語論文も題材として扱うため、中国語がある程度理解できることが望ましい。
本演習は受講者の人数、関心等に応じて内容を調整し、演習形式で進めるため、発表・ディスカッションを通じた積極的な参加を期待する。尚、専門分野を問わず、言語に対する強い関心や意欲のある学生の履修は大いに歓迎する。

ヨーロッパ言語文化講座
ドラマ研究概論 b
◇副題:ドラマ/パフォーマンス研究入門
◇担当教員:村主幸一
◇開講時間:後期金曜6限
◇教室:
北棟107
◇目的・ねらい:

 (ア)ドラマの特性を捉える能力を訓練し、ドラマ(パフォーマンス)とアイデンティティ・テクノロジー・社会との関係を考察する視点を養う。(イ)この世のものとは思えない言い回しが頻出する英語論文を読む力をつけるための訓練をする。(この読みの力は研究にとても役立ちます。)(ウ)研究方法、論文の書き方について受講者から出た疑問をクラス参加者全員で考える。
◇履修条件等:
なし。
◇講義内容:
 (ア)については、論文や研究書を輪読形式で議論の要点を捉えながら読み進める。授業での課題は、当番を決め、その日に読み進んだテキストの要約(日本語)を作ってもらい、それを教員が加筆修正し、受講者全員にメール配布し、その日のテキストの内容理解を確認しながら進むという方法を取る。テキストの多くは英語で書かれている。教員自身が読んで面白く思い、また学生諸君にも面白く思ってもらえるようなテキストを選びます。前期とは異なるテキストを選びます。
 (イ)については、前期で得た知識を元に、研究を続ける中で各自がぶつかる問題をクラスで考えます。
 (ウ)のねらいについては、上記(ア)の作業を通して追求します。
◇成績評価の方法:
授業への参加(課題・提出物を含む)(30%)と学期末試験(70%)。
◇教科書・参考書等:
 参考書として−−(1)Performance: Critical Concepts in Literary and Cultural Studies, ed. Philip Auslander (London and New York: Routledge, 2003), 4 volumes. (2)Bert O. States, Great Reckonings in Little Rooms: On the Phenomenology of Theater (Berkeley: Univ. of California Press, 1989) (3)Michael Goldman, On Drama: Boundaries of Genre, Borders of Self (Ann Arbor: The Univ. of Michigan Press, 2000) (4)村主幸一「2つの演劇理論――Michael GoldmanとEric Bentley」『メディアと文化』第2号(2006)69-85頁(http://www.lang.nagoya-u.ac.jp/tagen/media/journal/200603/M&CVol2-Muranushi.pdf
◇注意事項:(1)前後期の両方を受講することを勧めます。(2)受講生と相談し、開講時限を変更するかもしれません。曜日の変更はありません。
◆ヨーロッパ都市文化論 b
◇副題:チャドウィックとディケンズを通して見るロンドン庶民生活
◇担当教員:
松岡光治
◇開講時限:後期木曜5限
◇教室:文総623
◇目的・ねらい:
 この授業は将来高校や大学で教養レヴェルの英語を教えるための読解力養成を兼ねている。真摯な受講生は、英語の文学作品やその他の文献の精読および多読により、 英語読解力が徹底的に鍛えられる。また、英語読解力の向上とは別に、人口に膾炙した問題でも、独自のアプローチをするために必要な新しい視点の発見に努めてもらう。
◇履修条件等:授業は英語文献の輪読および教員の解説が中心となるが、担当以外の箇所も真摯に予習する義務が課される。
◇講義内容:
 ヴィクトリア朝の小説家(特にディケンズ、ギャスケル、ギッシング)の作品には、当時の人々が都市に対して抱いていたアンビヴァレンスをイメージ化した言説が 充満している。ヴィクトリア朝の都市は、単なる背景を提供する場ではなく、綺羅星 のように光かがやくと同時に、悪夢のように恐ろしい空間であった。都市の繁栄の裏 面にあるスラム街、貧困、犯罪、売春、アヘン中毒などは、そうした都市空間の脆弱さを表象したものだと言える。授業では、このように近代人の意識が捉えた都市のイ メージをできるだけ多くの視点から考察するが、独自のアプローチをするための新しい視点の発見には学際的研究が必要で、授業とは別に様々な文化史および批評理論関 連の文献を読んでもらう。
 今年度の前期は、前期ヴィクトリア朝の作家で、2010年に生誕200年を迎えるエリザベス・ギャスケルの マンチェスターを舞台とする短篇小説と彼女の才能を見出したチャールズ・ディケンズのロンドンを舞台とした短篇小説を演習形式で読み、ヴィクトリア朝前半の労働者階級における様々な社会問題を考察する。
◇成績評価の方法:担当箇所の発表(30%)、質疑応答への参加(30%)、前期のレポート(40%)。
◇教科書、参考書等:
 最初の授業で指定されたウェブサイトから電子テキストをダウンロードし、プリントアウトしたものを使うこと。ギャスケルに関する情報については教員のウェブ・サ イト "The Gaskell Web" を、ディケンズについては「ディケンズ・フェロウシップ日本支部」のホームページを参照。
◇注意事項:
 この授業にはメーリング・リスト(urban@lang.nagoya-u.ac.jp)がある。正当な理由があれば授業の欠席を許可するが、担当箇所は事前にメーリング・リ ストに流すこと。

◆ヨーロッパ文化芸術論 b
◇担当教員:西川智之
◇開講時限:後期月曜3限
◇教室:文総522
◇目的・ねらい:
 世紀転換期ウィーンの文化・芸術について理解を深める。また、ドイツ語の論文を読むことで、研究のためのドイツ語力を身につけると同時に、ドイツ語論文の書き方を習得する。
◇履修条件等:
 ある程度ドイツ語を読みこなす能力が必要である。前期同じ時限に開講された「ヨーロッパ文化・芸術論b」から引き続き受講することが望ましい。
◇講義内容:
 ウィーン世紀転換期の文化・芸術についての論文を、丹念に読むと同時に、論文の目次や文献表など、ドイツ語論文を書く場合の基本的な決まりを身につけてほしい。
 扱う予定の文献は以下に挙げてあるが、どの章を読むかは、受講者の人数や顔ぶれを見て決めていく。少人数の授業になることが予想され、自宅での準備のためにかなりの時間が要求されると思うが、その点も覚悟して受講してほしい。
◇成績評価の方法:平常点。
◇教科書・参考書等:
・Juergen Nautz und Richard Vahrenkamp (Hg.): Die Wiener Jahrhundertwende. 2. unveraenderte Auflage, Wien/ Koeln/ Graz 1996.
・カール・E・ショースキー『世紀末ウィーン』(岩波書店)

◆ヨーロッパ文化分析批評論 b
◇副題:ヴィクトリア朝イギリス社会を読む──検閲をキーワードとして
◇担当教員:
上原早苗
◇開講時限:後期水曜2限
◇教室:北棟107
◇目的・ねらい:(1)論理的な思考力を身につける、(2)英語文献に慣れ親しむ、(3)十九世紀イギリス社会への関心を涵養する。
◇履修条件等:
 授業で配付されたプリントを丁寧に予習すること。また本授業は前期のヨーロッパ文化分析批評論aの応用・実践編なので、前期の授業も併せて受講することが望ましい。
◇講義内容:
 
ヴィクトリア朝イギリスは、福音主義運動の復活とともに所謂「リスペクタブルな」時代を迎え、グランディズムという名の検閲制度が支配した社会であった。そのため当時の社会・文化を分析するにあたっては、〈表現されえたもの〉だけでなく〈表現されえなかったもの〉をも念頭に置ながら、分析対象に向かうことが必要になってくる。この授業は、絵画および文学テクストを手掛かりに、〈表現されえたもの〉と〈表現されえなかったもの〉の境界線に注目しながら、十九世紀イギリス社会の一段面に光を当てようとするものである。具体的な授業の展開は以下の通り。

 1 「リスペクタブルな」イギリス社会──絵画を手がかりに
 2 ヴィクトリア朝の出版制度・検閲制度
 3 「危険な」文学テクスト、その「危険性」を隠蔽する編集者
 4 Thomas Hardy, Jude the Obscure を読む
 5 何が〈表現されえなかったもの〉なのか
 (キーワード:検閲、自己検閲、転覆されるジェンダーの非対称性)

 なお、授業では日本語文献だけでなく英語文献も扱うので、受講者は課題とされた箇所を予め丁寧に読んでおくことが強く望まれる。また授業の進め方としては、講義を行うだけではなく、受講者の発表、討論を通じてより大きな成果をあげたいと考えている。受講者には文献を批判的に読む、あるいは文献に批判を加えたうえで自身の論を構築する、という基本的な姿勢を身につけてもらいたいと思う。
 この授業の受講者として念頭にあるのは、文化研究の分析法を学びたいと思っている学生、イギリス社会・文化に関心のある学生、あるいは英語の文献に慣れ親しみたいと考えている学生だが、知的好奇心のある「勤勉な」学生であれば、誰でも受講することを歓迎する。
◇テキスト:プリント使用(以下に文献の一部を取り上げる)。
 1 Thomas Hardy, Jude the Obscure (London: Macmillan, 1912)
 2 Thomas Hardy, “Hearts Insurgent” (Harper’s Monthly Magazine, 1894-95)
◇成績評価:授業への貢献度+レポートの内容。

国際社会学演習 b
◇担当教員:鶴巻泉子
◇副題:国民国家とトランスナショナリズム
◇開講時限:後期月曜5限
◇教室:文総623
目的・ねらい:
 人の移動をめぐる問題を、@国民国家を基軸とした視点とAトランスナショナリズムを軸とした視点を通して、歴史的・社会学的な見地から考えることを目的とする。 講義と基礎的な文献精読を通じて、研究の大きな流れと視座や問題設定の違いを確認すると共に、従来の研究の分析枠組みを批判的に検討する新たな研究動向についても学ぶ。
◇講義内容:
 従来の社会学は国民国家という単位を分析の基本的な枠組みとして自明視する傾向があった。しかしグローバル化の進展と共に、人・モノ・情報の流れは加速化し、これまで自明なものと見なされてきた社会編成を大きく組み替えつつある。この授業では、人の越境移動に着目し、移動のダイナミズムとそれが提起する新たな問題を、国民国家とトランスナショナリズムという二つの視座を通じて考えてみたい。講義と演習形式の二本立てで進めるが、まず講義は以下の点を柱として進める予定である。

(1)国民国家にとっての領域性
  国家・領土・国民
  国境管理と国籍
  移民現象と移民政策
  マイノリティの社会的包摂をめぐって
(2)トランスナショナルな視座
  トランスナショナルな移住
  ディアスポラ
  トランスナショナルな空間とトランスナショナル・コミュニティ

 その後、参加者の希望と専門に応じて講読文献を選択する。現在のところ考えているのは以下のようなテーマである。

  トランスナショナリズムに関する事例研究
  強制移住
  越境的な社会運動や越境的メディア

 なお初回講義はガイダンスにあて、レジュメの作り方や文献・資料引用、ディスカッション・ポイントの提示などを説明する。
成績評価の方法:議論への積極的な参加(50%) と講読文献の担当発表 (50%)。
教科書、参考書等:文献リストを配布。
注意事項:欠席の際には前もってメール(tsurumaki@nagoya-u.jp)・電話(052-789-4798)などでの連絡を御願いします。

ジェンダー論講座
◆ ジェンダーと文学 b
◇副題:日中のフェミニズム\ジェンダー文学批評の流れ
◇担当教員:星野幸代
◇開講時限:後期木曜6限
◇教室:北棟107
◇目的・ねらい:
 日中のフェミニズム\ジェンダー批評を、文学批評を中心に読み、討論することによって、その批評史、傾向と様々な方向性、方法等を学ぶ。付随して、フェミニズム\ジェンダーの視点による中国映画批評に触れる。
◇履修条件等:中国語学習歴がなくても参加できるよう考慮します。
◇演習内容:
授業の進め方
 初回はガイダンス。テキストについて批評史的な位置づけを略紹/担当の仕方、レジュメの例/担当者を決める。 
 担当者は@該当する論文の論旨をまとめる。A論旨の上で重要な作家、作品、理論のうち補足が必要と判断したものについては、簡単な解説をつける。B自分の疑問点・意見、皆で議論したい点を提示。 以上をレジュメにして配布した上で、40分前後で発表する。その後、参加者全員で討論する。
 基本的に一〜二回ごとに一作品+論文を扱う(下に挙げるテキストのうち*とあるものは授業二回ずつ使う予定)。作品の順番は担当者の都合を考慮する。
○テキスト(順不同。*のものはそのいずれか一、二章を扱う予定)
☆購入の義務はありません。
☆これ以外でも、授業のテーマに合い、是非扱いたいテキストがあれば、それを自分の分担として発表しても構いません。
 劉亮雅「愛欲、ジェンダー及びエクリチュール――邱妙津のレズビアン小説」『クイア/酷児評論集』垂水千恵編、作品社2009
 レイ・チョウ「愛する女性 マゾヒズム、ファンタジー、“母なるもの”の理想化」(『女性と中国のモダニティ』田村加代子訳、みすず書房
 李小虹「婦女研究「学究化」進程中的若干問題」『批判与重建』三聯書店2000
*白水紀子『中国女性の20世紀』明石書店2001
 廖冰凌『尋覓「新男性」論五四女性小説中的男性形象書写』文史哲出版社2006
 戴錦華『中国映画のジェンダー・ポリティクス』お茶の水書房
*江種満子『わたしの身体、わたしの言葉――ジェンダーで読む日本近代文学』翰林書房2004
*金井淑子『身体とアイデンティティ・トラブル――ジェンダー/セックスの二元論を超えて』明石書店2008
 久米依子「吉屋信子――<制度>の中のレズビアン・セクシュアリティ」『少年少女のポリティクス』青弓社2009
◇成績評価:担当一回以上、欠席二回以下が単位取得の必要条件とする。発表7割、出席・発言による授業貢献を3割で評価する。
◇教科書、参考書など:その他、授業時に指示します。
◇注意事項:特になし。
◆ ジェンダーとセクシュアリティb
◇副題:クィア・ドラマ批評
◇担当教員:松下千雅子
◇開講時間:後期火曜3限
◇教室:北棟107
◇目的・ねらい:
 この授業の目的は、テレビドラマを題材にフェミニズム理論やクィア理論に基づいた分析を実践的に行うことにより、表象分析における理論の重要性についての理解を深め、応用力を養うことである。
◇講義内容:
 アメリカのテレビドラマ『Lの世界』は、レズビアンやバイセクシュアルの女性を描いたドラマで、2006年1月から2009年3月にかけて、全6シーズンがケーブル局ショウタイムを通して配信された。ロサンジェルスを舞台にしたこのドラマは、世界50カ国以上で放映されており、日本ではCS放送のFOXライフで放送された。このドラマは、アメリカTV史上、初めてレズビアンを主人公にし、彼女らのリアルな生活を赤裸々に描いたドラマとして注目を集めた。授業では、これまでのクィア研究の蓄積を踏まえ、その理論的枠組みの中で『Lの世界』シーズン1のエピソードを中心にドラマ分析を試みる。テレビドラマというメディアで、セクシュアル・マイノリティを表象するときの問題点などを明らかにするとともに、人種、宗教、家族など、現代のアメリカ社会が抱える諸問題について、セクシュアリティに関連してどのように読み解いていくべきかを検討する。
◇成績評価:授業への貢献度30%、レポート70%
◇教科書・参考書:
 Morland, I. & Willow, A. (Ed.). (2005). Queer Theory. New York: Palgrave.
◇注意事項:
 本授業では、セクシュアリティに関する事象を研究対象とし、セクシュアリティについての用語を用いてディスカッションを行う。そのことを十分理解した上で受講すること。『Lの世界』シーズン1をあらかじめ見ておくことが望ましい。
◆ ジェンダーと経済b
◇担当教員:新井美佐子
◇開講時限 : 後期木曜4限
◇教室:
北棟105
◇目的・ねらい:

・経済学あるいは経済事象にジェンダー視点から接近し、そこにおける問題点を理解する。
・文献の講読、レジュメ作成、ディスカッションへの参加を通じ、論文を書く、意見を交わすといった研究活動の基礎を修得する。
◇履修条件等:
特になし。前期開講の「ジェンダーと経済a」から継続受講することで上記「目的・ねらい」がより達成されると思われる。また、下記「注意事項」も参照のこと。
◇演習内容:
 経済学では、いわゆる主流派、非主流派の双方において、長らくジェンダー視点が欠落していた。このことを見直し、経済学やジェンダー研究の学問的発展につなげようとする動きが活発化したのは、1990年代に入ってからに過ぎない。本演習では、女性研究者を中心に、学派の相違を越えて取り組まれているこうした試み‐「フェミニスト経済学」‐について、国内外の文献から学ぶ。
 具体的には、前期開講の「同演習a」における理論的研究文献の講読を受け、実証的研究文献を取り上げる。実証分析の対象‐地域(国)、時期、等。つまり講読文献‐については、受講者の希望を考慮して決定する。
 毎回の流れは以下の通り。

 1. 報告者による講読文献のまとめ(要レジュメ)
 2. 用語・内容等に関する質疑応答や解説
 3. 報告者あるいは受講者が提示したディスカッション・ポイントについて議論 

 レジュメには、単に講読文献の抜書きを羅列するのではなく、講読文献の構成や内容が明瞭に捉えられるよう工夫を凝らして欲しい。またディスカッション・ポイントの提示に際しては、講読文献の内容を補足あるいは発展させるようなデータや文献、資料を添付するなどしても構わない(むしろ望ましい)。これらの作業は、テーマに関わらず、「論文を書く」‐既存研究の不足点あるいは批判すべき点を見出し、問題として設定し、適切な方法と過不足なく明確な論述によって解を示す‐ための訓練の一つとなろう。
 さらに、教員あるいは受講者が参加した関連学会・研究会に関する報告なども適宜行い、最新の研究成果の紹介に努める。
 「経済」という語がカバーする範囲はいうまでもなく非常に広く、特にジェンダーとの関わりが深いと考えられる分野に限っても、労働、子育て・介護をはじめとする社会的再生産、社会保障、あるいはグローバルな経済システム等、多様である。本演習でこれら全てについて検討することは無論不可能であるが、上記のような様々な経済領域が密接に関わりあっているということを常に念頭に置き、広い視野でジェンダーを理解するよう心掛けて頂きたい。なお、本演習を通じて、ジェンダー研究が、女性(とりわけ、いわゆる「働く女性」)のみの利益を追求・主張するものでは決してないことが理解されると思う。
◇成績評価の方法:毎回のディスカッションへの参加度(50%)、ならびに報告担当時のレジュメ/ディスカッション・ポイントの内容(50%)。
◇教科書・参考書等:上記「演習内容」を参照のこと。参考書については、演習中に適宜指示する。
◇注意事項:

 経済学の知識を備えた上での受講が望ましいことは無論だが、必須ではない。「経済」とは、われわれの「日常生活」とも言い換え得る身近な活動であり、そこにおけるジェンダー問題とは誰しも無関係ではないはずである。受講者の希望(言語、難易度など)を可能な限り考慮して講読文献を決める予定なので、専門分野を問わず、また単位が不要であっても、関心や意欲のある学生の真摯な受講は大いに歓迎する。
 なお、欠席する際には、メール等にて極力事前連絡のこと。

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(2010.3.26)