国際多元文化専攻講義題目(2008年度前期1)

多元文化論講座 先端文化論講座 南北アメリカ言語文化講座 東アジア言語文化講座
ヨーロッパ言語文化講座 ジェンダー論講座 メディアプロフェッショナルコースの講義題目
日本言語文化専攻の講義題目 高度専門職業人コースの講義題目 文系大学院開放科目(pdf)

 

多元文化論講座
◆ 多元比較表象論 a
◇副題:離婚の歴史図像学
◇担当教員:鈴木繁夫
◇開講時限:前期水曜2限
◇教室:
国言棟ラウンジ
◇講義内容、成績評価等:
 「未来はバックミラーのなかにある」(マーシャル・マクルーハン)という言葉があります。どのような事象も歴史的に把握しないと、事象の外貌にとらわれ事象の実態を見誤り、事象を自分で的確に意味づけることを忘れ、不適切な対処することになります。
 たとえば二組に一組が離婚するという風潮にあっては、「離婚」にたいして否定的な発言をすれば、頑迷な伝統主義者として影で一笑されます。しかし西洋古典時代ではそもそも結婚という制度が家系と家産を保持するための世俗的知恵であり、そこに愛情が想定されていなかったという歴史事実を知り、離婚手続きを複雑化したのは近代の西ヨーロッパの産物にすぎないことに気づき、個人的愛情や恋愛を不可欠とする結婚観は中世からロマン主義時代に培われた特殊で傍系の概念であることに熟知するとき、現に経験し実際に抱いている結婚も離婚も異なって見えてくるはずです。
 そしてその次に待ちかまえているのは、では自分はどう考えるかです。なぜなら現実の心情としては離婚に賛成だが、歴史的は反対といったような矛盾に自己を置くことになり、そこではじめて離婚を事象として把握できるようになるからです。このプロセスの上で「離婚反対」と唱えるか、賛成の側に回るかでは、重みが違ってきます。時代風潮に迎合する発想や意見は、現時点では正しいと映っても、それは無自覚のうちに歴史把握、そして自力思考を放棄していることにほかなりません。
 授業では、各回ごとに離婚をテーマとした視覚芸術作品を一つとりあげ、その歴史的背景をさぐっていきます。講義は、ロドリック・フィリプス『絆をほどいて』に沿って進行します。
 1. カトリックとプロテスタント
 2. 17世紀イングランドとニューイングランド
 3. 世俗化、啓蒙主義、フランス革命
 4. 近代初期の社会における正式の離婚と非公式の離婚
 5. 結婚挫折の意味とその文脈
 6. 19世紀:自由主義とその反動
 7. 社会問題としての離婚:1850年-1914年
 8. 20世紀と大量離婚の勃興
 9. 離婚増加をどう説明するか:1870年代-1990年代
 授業は講義とはいっても、ともに対話しながら考えていく形式で授業を進めていきます。また講義の約3回ごとに内容理解を試す小テストを行います。成績の評価は以下の基準にしたがっておこないます。授業出席(30%)、授業参加(35%)、小テスト(35%)。
 またオフィスアワーはとくに設けず、面談・質問はメイル(ssuzuki@nagoya-u.jp)で随時受けつけています。
 この講義のさらに細かい内容は以下のサイトにアクセスしてください(2007年4月7日以降)。http://www.lang.nagoya-u.ac.jp/~ssuzuki/ClassLecture/GraduateLecture.htm
 なお聴講は自由ですが、聴講生もかならず小テストを受けて下さい。
◇教科書:
Roderick Phillips, Putting Asunder: A History of Divorce in Western Society (Cambridge: Cambridge University Press, 1988)
◇参考書:
 日本語で読めるものに限定した。外国語の文献は講義の途中で随時紹介していく。
[全般]
・ドニ・ド・ルージュモン『愛について:エロスとアガペ』(上)(下) (鈴木健郎, 川村克己訳,平凡社, 1993年)
・ニクラス・ルーマン『情熱としての愛――親密さのコード化』(木鐸社, 2005年)
・マリリン・ヤ−ロム『乳房論』(平石律子訳, ちくま学芸文庫, 2005年)
・加藤秀一『「恋愛結婚」は何をもたらしたか: 性道徳と優生思想の百年間』(ちくま新書, 2004年)
・小此木啓吾(1984)『自己愛人間』講談社文庫
[歴史]
・R.フラスリエール『愛の諸相: 古代ギリシアの愛』(戸張智雄訳, 岩波書店, 1984年)
・ジョルジュ・デュビ−『中世の結婚: 騎士・女性・司祭』(篠田勝英訳, 新評論, 1984年)
・ラスレット『われら失いし世界: 近代イギリス社会史』(川北稔, 指昭博, 山本正訳, 三嶺書房, 1986年)
・ジョン・ミルトン『離婚の教理と規律』(新井明 他訳, 未来社, 1998年)
・ジョン・ミルトン『離婚の自由について:マ−ティン・ブ−サ−氏の判断』未来社 1992年)
・フランソワ・ルブラン『アンシャンレジーム期の結婚生活』(藤田苑子訳, 慶應義塾大学出版会, 2001年)
[資料集]
・デンツィンガー、シェーンメッツァー『カトリック教会文書資料集』(A・ジンマーマン監修, 浜寛五郎訳, エンデルレ書店, 1974年)
・『朝日新聞の記事にみる恋愛と結婚―明治・大正』(朝日文庫, 1997年)
・『朝日新聞の記事にみる恋愛と結婚―昭和』(朝日文庫, 1998年)
◆ 異文化接触論演習 a
◇副題:諸文化共生論概論
◇担当教員:田所光男
◇開講時限:前期金曜3限
◇教室:文総609
◇目的・ねらい:諸文化の比較研究の領域において修士論文・博士論文を執筆するために必要な知識を増やし、技法を高める。また口頭発表のやり方を訓練する。
◇履修条件等:なし
◇講義内容:
1)論文批評
 〈いい論文〉、〈よくない論文〉、とはどういうものかを考えてみたい。絶対にやってはいけないこと、最低限やるべきこと、こうするとよくなること、などを、実際の例にあたっていろいろ検討したい。具体的には、皆さんにとって当面の目標となる『多元文化』に掲載されている論文を、前期、各自が批評する。受講者の人数にもよるが、スピード・アップするため、今期は、一回に複数の論文を扱う予定。
2)諸文化共生の問題の検討
 現在、日本でも、中央省庁や地方自治体、ヴォランティア団体、また、大学などの研究・教育機関など、様々な領域で、「多文化共生」ということが盛んに語られている。しかし、この用語それ自体があいまいであり、「多文化」という直訳語はもちろんであるが、「共生」という言葉もどこかいかがわしい。もともと生物学の用語が人間社会に転用されているわけで、愛想はいいが、本当のところよくわからない。
差異をもった複数の集団の共生は、アラブ人とユダヤ人の場合に限られず、実現するのがきわめて難しい理想であろう。モロッコのイスラム教徒アブデルケビール・ハティビはこの種の共生の困難の一般性をこう指摘している。「いかなる国も、たとえその国に複数の言語や思考法が存在しないとしても、複数的な存在、文化のモザイクです。しかし、このような複数性はこれまで一度として(もろもろの集団、民族、男女、権力のあいだの)対等な関係として構成されたことはなく、つねに支配被支配の不均衡な関係によって統御されてきました。[中略]国を形作る異なる複数の要素の間にはつねに潜在的な軋轢が存在します。」〈仲良くやろう〉とか、〈みんな一緒〉というような言葉で示される共同性が隠すもの、抑圧するものがあり、美しく立派な共生を喧伝する公式の言葉に対し徹底的に懐疑的になる必要があることは確かであろう。
しかしこの問題はきわめて微妙である。一切の共生言説を警戒しようと説くこのハティビも、モロッコにおけるユダヤ人マイノリティの境遇を検討する場合には、自分の所属するムスリム・マジョリティの「正義」や「保護」を肯定的に述べている。それは、モロッコ出身のユダヤ人ヴィクトル・マルカが、フランス保護領時代のモロッコ社会を、植民者フランス人、次いでアラブ人、そしてはるか下にユダヤ人、と三階層で描き出し、独立後のモロッコにおいても、ジンミー言説は公然と生きていたと断言することときわめて対照的である。共生言説を批判する人もまた、自己の所属や自己の差異の問題を通る時、他者を排除しないためには共生言説を必要としてしまうのであろうか。
 全体としては次のようなプログラムを予定している。
 1 文化的差異に対する態度の三つのモデル
 (1)差別主義、明暗のコントラスト
 (2)同化主義、一面の銀世界
 (3)差異主義、多色刷り
 2 多文化共生への志向
 (1)同化主義で多文化共生は可能か
 (2)近代市民社会の公私の二分界
 (3)統合主義(リベラル多文化主義)における多文化の位置
 (4)多文化主義の目指すもの
 (5)文化相対主義の危うさ
 3 総務省研究会の「多文化共生」
 (1)かつての「協和」的同化との違いは?
 (2)視野の中心からはずされた人々
 結び:差異からの自由
◇成績評価の方法:諸文化共生にかかわる論文あるいは著書の評釈を一回、これが単位を取得するための最低条件である。
◇教科書、参考書等:教科書は、使用しない。参考文献は、受講者の関心に応じて、授業の中で適宜指示する。
◇注意事項:なし
◆ 主体形成論 a
◇副題:主体のあり方
◇担当教員:
松本伊瑳子
◇開講時間:前期木曜3限(13:00−14:30)
◇教室:文総609
◇目的・ねらい:主体は如何に形成されるのか。男性と女性、西洋人と東洋人等の主体意識の差異、およびその諸相について考える。
◇履修条件等:特になし。
◇講義内容:

 文学、心理学、哲学、宗教書、社会学等、さまざまなジャンルのテキストを読みます。各テキストが深遠な内容のうえ、ジャンルが多岐に渡るので、一体何を勉強しているのかと、最初は戸惑うかもしれません。しかし半年間続けて勉強すれば、各テキストが「主体」という1本の糸で結ばれていることが分かるはずです。
◇成績評価の方法:最低1度はレポートしてもらいます。そのレポートの出来具合(30%)と学期末のレポート(70%)。
◇教科書、参考書等:授業の最初に、テキストの一覧を示します。コピーを渡すか、各自で用意していただくかになります。
◇注意事項:必ず課題図書・コピーをあらかじめ読んでくる事。
◆現代文化思想分析論演習 a
◇副題:ミシェル・フーコーの思想1
◇担当教員:飯野和夫
◇開講時限:月曜5限
◇教室:文総609
◇目的・ねらい:
 西洋現代思想のテキストを読み解いて内容を理解するための基礎能力の養成を図る。また、テキストをフランス語または英語で実際に講読する機会も設け、思想関係の外国語文献の読解に慣れる手がかりとする。さらに、授業全体を通して、対象とするテキストの内容が持つ普遍性と、そのテキストが生み出された状況に由来する固有性に注目し、そのテキストの私たちにとっての意味や価値について考える。
◇履修条件等:
 フランス関係のテキストを読むが英訳を併用する。したがって、フランス語を既習であることは必須とはしないが、現代の思想、あるいはヨーロッパの思想に興味を持っていることを受講の条件とする。また、この授業に続けて後期開講の「現代文化思想分析論演習b」を受講することが望ましい。
◇講義内容:
 現代フランスの代表的思想家で、構造主義の代表者の一人とされるミシェル・フーコー(1926-1984)の思想について考える。具体的には順に以下の著作を題材とする。
 『狂気の歴史』(1961, フーコーの博士論文) 「第3部第4章 狂人保護院の誕生」
 『臨床医学の誕生』(1963)
 『言葉ともの』(1966) 「第9章 人間とその分身 第2節 王の場所/第3節 有限性の分析論」
各著作ごとに、飯野が内容の簡単な紹介・解説、参考文献の紹介などを行う。また、それぞれのテキストの一部をフランス語原典か英訳によって講読する。その際には、分担を決め、本文に即して内容を確認し、コメントを加えてもらう。テキストはプリントを用意する。この授業に続けて後期開講の「現代文化思想分析論演習b」を受講することが望ましいが、全体で1年の授業期間中に、受講者にはなんらかの形で本書に関連する内容(たとえば精神疾患、精神医学、恐怖など)で一回の研究発表をしてもらう予定。
◇成績評価の方法: 1) テキストの内容の理解力(フランス語力ないし英語力を含む)、授業中の議論への貢献度、2) 分担義務の達成度、3) 授業への出席状況、を考慮して総合評価する。おおむね 1) 40%, 2) 40%, 3) 20% の割合で評価するが、授業への出席が一定の割合に満たない場合は、評価以前に失格とする。
◇教科書・参考書等:講義内容を参照のこと。
◇注意事項:続けて後期開講の「現代文化思想分析論演習b」を受講することが望ましい。
◆ 国際文化学概論 a
◇副題:Geography and Mysticism I: Yoga
◇担当教員:Simon Potter
◇開講時限:前期木曜3限
◇教室:
国言棟ラウンジ
◇目的・ねらい:
 One aim, somewhat trivial, is to demonstrate that メyogaモ is not specifically breathing and flexibility exercises, but something far more involved. Another aim is to acquire some exposure to the main four types of Indian yoga and to read up on them.
◇履修条件等:There are no formal prerequisites, but a working knowledge of the English language will be very useful.
◇講義内容:
 This course will revolve around spiritual yoga with the idea of getting insights into culture as well as, perhaps, oneself. Some information about the geography of South Asia will be provided to establish an environmental framework, and there will be some explanation of what might be called the Hindu way of life. This will lead into an examination of the four spiritual yogas, during which time students will be encouraged not only to read about them, but also to try them. Special attention will be paid to raja or Patanjala yoga and to attaining samadhi. The course grade will be determined from an examination on the reading materials and related information which arises in class meetings (50%) and an approximately ten-page academic paper (50%).
◇成績評価の方法: Academic paper = 50%; final examination = 50%.
◇教科書・参考書等: Copies of reading materials will be made available for consultation.
◇注意事項: Wear loose, comfortable clothing so that there wonユt be any embarrassing situations.

 

先端文化論講座
◆ 先端文化思想論 a
◇副題:快楽敵視の誕生−西欧文明論の新たな構築に向けて
◇担当教員:
越智和弘
◇開講時限:前期火曜3限
◇教室:文総623

◇目的・ねらい:
 今日では世界のほぼすべてが西欧的価値に支配されている、という歴然たる事実の奥に潜む真実を探り出すことを目的と定める。講義はまず、西欧文明を、「もっとも進んだもの」と当然視しがちな見方はどこから来るのか、またそれは何によって正当化されるのか、という素朴な疑問をもつことから始める。つぎに、西欧文明がこれまで進歩し得た真の原因が快楽の敵視にあることを理解し、資本主義を支える禁欲のメカニズムが誕生し確立されていった過程についての基本的な知識を身につける。同時に、西欧文明の真髄を快楽敵視に見いだす現代思想家の有名な文献を読み解くことで、知識の裏付けをする。
◇履修条件等:前期授業aと後期授業bを続けて履修することが望ましい。
◇講義内容:
〔概要〕
 西欧文明が古代ギリシア・ローマの直接的継承者であるという言説を、批判的に検証し直す作業が講義の最初の主題となる。今から1500年程前ヨーロッパ文明は、それまであった高度に発達した文化を、いちど徹底的に破壊し尽くす中から立ち上がった。その大混乱のあとに生まれた文化は、継承すべき文化と、切り捨てるべき文化とを明白に区別し、その分断のうえに築き上げられたのが今日ある西欧文明だといえる。講義では、資本主義というグローバルな体制が、はるか中世に遡る時代から現代にいたるまで、女性的快楽を消去し尽くすという、西欧以外にはどこにも見られない価値観によって展開してきたことを明らかにする。
〔授業方法および計画〕
 授業は、問題を解説する講義を数回おこなったあとで、テクストを受講者が分担し発表するというセットをくり返しながら進める。ただし、講義および発表の回数等は、受講者の人数に応じ適宜調整する。講義は、その大筋において、越智著『女性を消去する文化』の内容に沿ったものとなる。読解用に使用するテクストは、南部生協で製本販売する。
第1回目:講義方針の説明、担当者の割り当て
第2回目:「ローマ帝国の崩壊とゲルマン民族大移動(1)」
第3回目:「ローマ帝国の崩壊とゲルマン民族大移動(2)」
第4回目: テクスト講読
第5回目: テクスト講読
第6回目: テクスト講読
第7回目:「女性恐怖のドイツ的起源(1)」
第8回目:「女性恐怖のドイツ的起源(2)」
第9回目:「女性恐怖のドイツ的起源(3)」
第10回目: テクスト講読
第11回目: テクスト講読
第12回目: テクスト講読
第13回目:「快楽敵視から誕生する資本主義(1)」
第14回目:「快楽敵視から誕生する資本主義(2)」
第15回目:「快楽敵視から誕生する資本主義(3)」
◇教科書、参考書等:
・越智和弘『女性を消去する文化』(鳥影社)
・ 講読用プリント製本
◇注意事項:特になし。
◆前衛芸術概論 a
◇副題:資本主義と音楽(1)
◇担当教員:
藤井たぎる
◇開講時間:前期火曜6限
◇教室:文総623

◇目的・ねらい:
 音楽の生産・消費のシステムと資本主義社会のメカニズムとがどのように具体的に相互に関連しあっているかを検討する。また、上述の議論のために必要な音楽の歴史についての知識を得ると同時に、現代の文化を批判的に考察するスキルを身につける。
◇履修条件等:単位を必要としない場合でも、単位を必要とする受講生と同等の役割が課せられる。
◇講義内容:

 芸術音楽の生産(作曲・演奏)および消費(受容)は、つねにすでに資本主義社会のメカニズムと相関関係にある。産業革命以降の資本主義の発展なしに、和声音楽の爛熟はあり得なかったし、ポスト産業資本主義の台頭と作曲家シェーンベルクの“12音システム”に端を発する和声音楽システムの崩壊とは相互にリンクしている。近代以降、音楽生産のシステムは思想や政治以上に、経済機構と密接に関わっていると言えるだろう。たとえばポピュラー音楽の生産者が、市場価値を生むために日夜音楽の生産に勤しむのは当たりまえのことだし、『のだめカンタービレ』ブームやヴィジュアル系クラシック演奏家の増産などに見られるクラシック音楽のサブカルチャー化も、そうした活動の末端現象であることは指摘するまでもないだろう。むしろここで検討したいのは、そうした誰の目にも明らかな現象ではなくて、ほとんど誰も聞かない(つまり市場経済とはまったく無縁な、あるいはむしろそれに対して明らかに警戒心と嫌悪感すら示していた)シェーンベルクの音楽とその末裔の“前衛音楽”が、図らずも、そしてまさにそうであるがゆえに、ポスト産業資本主義のメカニズムを表象してしまっているという逆説である。その意味で、マックス・ウェーバーが晩年、“音楽社会学”で和声音楽の発展を産業資本主義との関係から探求しようとしていたことは、きわめて示唆的である。
 以上のことを考察の枠組とし、音楽(あるいは“芸術作品”)の創作と経済機構との関連を明らかにしていきたい。毎回、受講者にはあらかじめ読んでおくべきテキスト・参考文献を指定し、それを授業での議論のたたき台とする。
◇成績評価の方法:
出席(50点)、授業への積極的貢献(50点)
 期末レポートは課さない。ただし、毎回、指定されたテキスト・参考文献をあらかじめ読んで、議論に積極的に参加できるように準備をしたうえで、授業に参加すること。
◇教科書、参考書ほか:
和泉浩『近代音楽のパラドクス―マックス・ウェーバー《音楽社会学》と音楽の合理化』ハーベスト社
 岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』ちくま学芸文庫
 岩井克人『貨幣論』ちくま学芸文庫
 岩井克人『二十一世紀の資本主義論』ちくま学芸文庫
 岩井克人『資本主義を語る』ちくま学芸文庫
 Charles Rosen, Arnold Schoenberg, Chicago / London: University of Chicago Press 1996
 Arnold Schoenberg, Style and Idea, edited by Leonard Stein (translated by Leo Black), Berkeley / Los Angeles: University of California Press 1975
 Slavoj Zizek, The Matrix: Or, The Two Sides of Perversion, in: The Matrix and Philosophy, edited by William Irwin, Chicago / La Salle, Illinois: Open Court 2002
 Slavoj Zizek / Mladan Dolar, Opera's Second Death, New York / London: Routledge 2002
 Leaving Home: Orchestral Music in the 20th century ~ A Conducted Tour by Sir Simon Rattle, Arthaus Musik (DVD)
 上記以外の文献は必要に応じて、適宜授業中に指示する。
◇注意事項:
 事情によって欠席する場合は、担当教員にメールで、もしくはTAや他の受講生を通じてあらかじめ報告すること。
◆現代民主主義特論 a
◇副題:ラディカルな民主主義について
◇担当教員:布施 哲
◇開講時間:前期木曜3限
◇教室:国言棟 A 会議室
◇目的・ねらい
 国内外の政治的、社会的動向を、人文社会科学の知識を下地に考察するとともに、逆に前者に照らし合わせながら後者に対して必要な理論的修正を加え得るだけの知性を磨く。
◇履修条等件:
 日本語の非常に高度な運用能力はむろんのこと、英文で書かれた専門書や評論を読み込むだけの英語力も必須。また、政治学や哲学の基本的な概念を、わからなければその都度、自ら調べて理解しようとする積極性のない学生はこの講義にはまったく向かない。さらに、「教科書・参考書等」欄に記載の文献は、学期中にすべて一通り目を通しておくことが強く望まれる。
◇講義内容:
 前期は、『希望の政治学−テロルか偽善か』(布施哲/角川学芸出版)を副読本として参照しつつ、講義を通じて読解を進めてゆく主たるテクストを第一回目の授業で指定する。
 後期は、前期での学生諸氏のパフォーマンス、理解度等を見極めたうえで、あらためて取り扱う文献と講義内容を決める。
◇成績評価の方法:
 出席:40%、授業への積極的貢献:30%、発表:30%
 (ただし、学生によって学期末にレポートを課す場合がある。)
◇教科書、参考書等:
・ ホッブス『リヴァイアサン』
・ マキアヴェッリ『君主論』、『リウィウス論』
・ カント『純粋理性批判』、『実践理性批判』
・ ヘーゲル『精神現象学』、『小論理学』
・ マルクス『経済学批判』、『ドイツ・イデオロギー』
・ ハイデガー『形而上学入門』
・ シュミット『政治的なものの概念』、『政治神学』
・ バーリン『自由論』
・ ロールズ『正義論』
・ 丸山真男『日本の思想』、『現代政治の思想と行動』
・ 藤田省三『天皇制国家の支配原理』
・ 京極純一『日本の政治』
・ 布施哲『希望の政治学−テロルか偽善か』
◇注意事項:
 今年度は開講曜日を変更したので注意されたい。意欲のない学生の受講は一切認めない。厳密な思考力の涵養と同時に、洒落やユーモアを愛する精神の柔軟さを求める学生の参加を大いに歓迎する。
◆現代先端文化分析演習 a
◇副題:モダンダンスと複製技術
◇担当教員:
山口庸子
◇開講時限:前期火曜5限
◇教室:文総609

◇目的・ねらい
 20世紀初頭に西欧で成立し、日本も含めた世界中で流行したモダンダンスの理想は、「自由」で「自然」で「健康」な身体であった。舞踊家たちは、踊る身体によって、世界や人間の有機的な全体性を回復できると主張した。工業化や都市化の進行、技術の発展などの社会的変化によって、無機的で人工的な領域が拡大しつつあるという危機感が、このようなユートピア的な志向を生んだのである。ところが、このモダンダンスの爆発的な流行には、実際には、写真や映画などの複製技術が深く関わっていた。本演習では、モダンダンスと複製技術の関わりについて、最近の研究を参照しながら検討したい。
◇履修条件:舞踊史の知識は特に前提としないが、整理された知識を与えられるのを待つのではなく、自分で考える意欲のある学生の参加を望む。
◇講義内容:
 上記の目的に関連する舞踊史・身体文化の文献を読み、また舞踊写真や映画を分析する。具体的には、次のような手順で進める(1)ドイツ語圏を中心とした、モダンダンスの歴史を概観する。(2)その際、身体文化の視点を導入することで、舞踊史の枠組みの相対化をはかる。(3)ベンヤミン、デブリン、バラージュ、クラカウアーらのテクストを取り上げ、同時代のメディア論的考察が、身体に注いだ眼差しを検討する。(4)彫刻/絵画・写真・映画の例を取り上げて、モダンダンスの成立と、視覚芸術・視覚メディアの関わりを検討する(5)補足として、日本におけるモダンダンスあるいは暗黒舞踏と視覚芸術・視覚メディアとの関係を、ドイツ語圏と比較して検討する。参加者には、文献の報告、ないしは写真や映像におけるモダンダンスの身体についての分析を担当していただく。
◇成績評価の方法:出席:25%、授業への積極的貢献:25%、発表:50%。ただし、参加者の状況によって変更することがある。
◇注意事項:講義予定表および文献表は、授業中に配布する。

 

南北アメリカ言語文化講座
◆現代アメリカ文化論 a
◇副題:Harlem Renaissance and the New Negro 1
◇担当教員:長畑明利
◇開講時限:前期月曜6限
◇教室:文総609
◇目的・ねらい:
 (1) 1920年代にニューヨークのハーレムを中心に花開いた黒人文化について、また、同時期に提唱された New Negro という概念について学ぶ。(2) アメリカ文化(ここでは文学、音楽、映画などを想定)についての基礎知識のおさらいをする。今回は1920年代の黒人文化に焦点をあてるが、これを機会に、他の時代、他の分野のアメリカ文学史・文化史の復習もしてもらう。(3) 今後、文化・文学の研究を進めるために必要となるやや高いレベルの英語読解力を身につける。
◇履修条件等:
 (1) 英語圏の文学・文化を研究対象とする学生を対象とするが、それ以外の学生の受講も認める。(2) ただし、基礎的な英語読解力があること、知的好奇心、研究に対する積極性があることを履修条件とする。(3) 後期同時限に開講される「現代アメリカ文化論 b」を続けて受講することが望ましい。(4) 英語の力をつけるために、高度専門職業人コースの授業として水曜2限に開講される「言語表現技術演習 a」(前期)、「言語表現技術演習 b」(後期)を併せて受講することが望ましい。
◇講義内容:
 (1) 前期は David Levering Lewis, When Harlem Was in Vogue を教材とし、また、Claude McKay、Countee Cullen、Langston Hughes、Jean Toomer、Zora Neal Hurston らの作品の一部を読みながら、ハーレム・ルネッサンスの歴史、背景、その主要人物の活動、その評価等を学び、またそれらを検討する。(2) 授業では、毎週各1章を扱い、担当者が (a) 内容の要約・解説、(b) 英語表現上の問題箇所の指摘と解説、(c) 担当箇所の内容についてのコメントを行い、教員を含む参加者からの質問に答える。文学作品等の引用については詳細に検討する。なお、担当者は前日(日曜)午後4時までにレジュメを授業ML に流すこととする。(3) 学期末にレポートを課す。また、1920年代の黒人文化に関連する映画及び音楽についての短いレポート各1本を授業のMLに投稿してもらう。
◇成績評価の方法:
 基礎的な英語読解力があることを単位認定の前提とする。そのうえで、授業点(報告の内容、テクストへの取り組みの度合い、議論への貢献度などを含む)50%、個別レポート類 10%、期末レポート40%の予定。
◇教科書:David Levering Lewis, When Harlem Was in Vogue (Penguin, 1997) [各自購入のこと]
◇参考書:
・Houston A. Baker, Jr. Modernism and the Harlem Renaissance (U of Chicago P, 1987)
・George Hutchinson, The Harlem Renaissance in Black and White (Harvard UP, 1995)
・David Levering Lewis, ed., The Portable Harlem Renaissance Reader (Penguin, 1995)
・本田創造『アメリカ黒人の歴史』(岩波新書)
・その他、必要に応じて授業HPもしくは授業MLで紹介する予定。
◇注意事項:授業HPを参照すること。
◆中南米言語表現論演習 a
◇副題:スペイン語・ポルトガル語言語文化圏対照研究a
◇担当教員:水戸博之
◇開講時限:前期木曜5限(受講者と相談の上、変更あり)
◇教室:
国言棟201(水戸研究室)
◇目的・ねらい:
(中南米言語表現論演習aでは、スペイン語圏を中心に扱う予定であるが受講者の諸条件を考慮し柔軟に内容を検討する。)
 スペイン語とポルトガル語、両言語を広い視野から総合的に対照し知識と理解を深めるための演習である。すなわち本演習において、これら2言語自体に対し様々な領域や場において接触する可能性のある受講者が、研究を進めるための方法論に言語学的基礎付けする機会を見出すことを目的としている。なぜならば、東海・中部圏はこれら2言語に対する社会的需要が高く、問題に対処するためには、単なる会話能力のみならず、高度な言語学的素養も求められているからである。
 本演習では、2言語への習熟が単位認定の基本的要件となる。しかしながら、近親言語であっても両言語を等しく、いわゆるバイリンガルに扱うのは実際には極めて困難であるので、まずイベリア半島起源の言語に関わる知見を広げてみようといった好奇心を第一に課題に取り組んで欲しい。
◇履修条件等:
 少なくともスペイン語またはポルトガル語いずれかの基礎的運用力。
 いずれか一方を主専攻言語、他を副専攻言語と本演習では呼称する。
 スペイン語またはポルトガル語話者の留学生諸君の受講も歓迎する。留学生諸君は単なるインフォーマントとしての演習への参加のみならず、日本語および近親言語との比較対照により、母語について新たな発見とより深い認識が得られるであろう。
◇講義内容(スペイン語圏関係を中心に):
 演習であることから、様々な目的や条件を持った受講者に対応するため、開講時点では特に定めない。以下に、過去2年の主要な内容を示すので参考にしてほしい。
 2007年度:文献の精読:ペルーの国民文化形成、メキシコ社会の変容等。留学生を交えた討論等。 
 2006年度:南米移民についての資料研究、発表、スペイン語文献の精読。留学生を交えた討論等。
 2005年度:スペイン語史・語学に関するスペイン語文献の講読と発表、討論。
  複数年度にわたり適宜対象としてきた演習内容:
 日本国内制作のスペイン語・ポルトガル語メディア
 日本国内のスペイン語話者、ポルトガル語話者の言語社会学的状況
◇成績評価の方法:
 スペイン語とポルトガル語2言語への習熟を前提に、次の3要素を中心に総合的に判断する。
 1)各自のテーマについての発表(学会・研究会等の発表も含む)。40%
 2)講読文献(スペイン語・ポルトガル語両言語)の精読による発表。40%
 3)副専攻言語(スペイン語またはポルトガル語)による作文演習(ネイティヴチェックを受けること)。20%
◇教科書、参考書等:
 最近使用した主要なものを掲載する。(スペイン語関係)
Jose Maria Arguedas, Formacion de una cultura nacional indoamericana, Mexico, 1998.
Milton M. Azevedo, Introduccion a la linguistica espanola 2 ed., Pearson Education (New Jersey), 2005.
Maria Asuncion Merino Hernando, Historia de los inmigrantes peruanos en Espana, Madrid, 2002.
◇注意事項:
 スペイン語とポルトガル語を扱うことを大前提としている演習である。
 演習aとbを履修することが望ましい。
 演習bからの履修も可。
 
◆現代アメリカ社会史特論 a
◇副題:社会理論と歴史研究の相互作用―近年の社会・文化史研究の動向と課題
◇担当教員:中野由美子
◇開講時限:前期木曜3限
◇教室:文総623
◇目的:この授業の目的は以下の二点である。
a. 社会・文化史研究を志す大学院生を対象とした「歴史研究」と「社会理論研究」のあるべき関係を論じた文献を精読する。それによって、歴史研究に関連する方法論や人文・社会科学の分野で広く用いられる基本的な諸概念を正確に理解するとともに、学際的な研究視角や近年の社会・文化史研究の動向と課題についても学ぶ。
b. 論文執筆に欠かせない研究計画書の作成方法や基本的なルールについて確認する。また、研究計画書に基づき、各自の研究課題に関するプレゼンテーションを行う。
◇履修条件等:社会学や政治学などが扱う社会理論と社会・文化史研究の関係について論じたピーター・バーク著『歴史学と社会理論』(詳しくは「使用するテキスト」欄を参照)を主に使用する。履修に際し、ジェンダーや階級、ヘゲモニー、心性といった基本的な概念についての基礎知識は不可欠である。
◇講義内容:
a. 社会・文化史研究に関する先行研究の整理と近年の研究動向
1960年代以降の日米欧における社会・文化史研究の興隆と課題について、基本文献の確認や近年の研究動向を踏まえつつ検討する。
b. 社会理論と歴史学
 歴史学の方法論に関する文献を精読し、歴史叙述に関する諸問題を探求する。とくに、「性とジェンダー」「コミュニティとアイデンティティ」「心性とイデオロギー」「口承と書字」「権力」などの中心的概念に焦点を絞り、「一般性」を重視する社会理論と「個別性」に依拠した歴史研究の相互作用について検討する。
c. 個別報告
研究計画書の作成と同計画書に基づく個別報告を行う。詳しくは授業中に説明するが、研究テーマの絞り方や研究スケジュールの作成例などについても復習する。また、文献の引用方法や注の機能など、学術論文の読解・執筆に不可欠な基本的なルールに関しても確認する。
◇成績評価の方法:
毎回の授業時に提出していただく課題(レジュメ、書評など) 50%
個別報告(研究計画書に基づくプレゼンテーション)     20%
期末レポート(研究計画書)                30%
◇使用するテキスト:
Burke, Peter. History and Social Theory. Polity Press, 1992. ピーター・バーク(佐藤公彦訳)『歴史学と社会理論』(慶応義塾大学出版会、2006年)。
その他の文献については開講時に指示する。第一回目の講義には必ず出席すること。
◇注意事項:
・この授業は演習形式で行うので、各自で事前に共通文献を精読し、毎回のディスカッションに参加することが単位取得の条件となる。
・原則として4回以上欠席した場合は、最終評価は「欠席」となる。
・毎回、参加者全員に共通文献のレジュメ(書評や簡単な課題の場合もありうる)の提出を求める。
・病気等でやむを得ず欠席する場合は、事前にメールで連絡すること。
◆社会言語学入門 a
◇担当教員:Liang Chua Morita
◇開講時限:前期火曜2限
◇教室:
国言棟1F演
◇目的:To create awareness and understanding of issues involving language in social contexts.
◇履修条件等:none

◇講義内容:Sociolinguistics can be loosely defined as the study of language and society. Sociolinguists and sociolinguistic research play an ever-increasing role in the world. Educators, curriculum planners, policymakers, as well as researchers, depend on sociolinguistic theories and principles. Sociolinguistics has deepened our understanding and helped solve numerous problems concerning various languages and societies. It has also contributed to enlightened attitudes towards social groups with less power, such as indigenous people and ethnic minorities in North America, and immigrants in Europe.
 In Japan, sociolinguistics has practical applications. A case in point is the debate over English education. Popular opinion has it that starting English instruction too early has adverse effects on a child and on his/her subsequent educational attainment. However, enlightened educators such as those at Kato Gakuen in Numazu, Shizuoka, have utilised sociolinguistic research and principles and successfully run a partial immersion programme which has produced excellent results. The study of sociolinguistics is equally useful to curriculum planners for ethnic minorities such as Brazilians and to dialectologists interested in regional dialects.
 The first semester is spent on giving students a firm foundation in the basics of sociolinguistics. The topics we will cover include multilingualism, social class, gender, standardisation, education and bilingual education. The second semester consists of student presentations on topics of their choice and some teaching again on topics preferred by students. In the past, students have given presentations on gender and the English language; language death; different varieties of English; different types of bilingual education; bilingual education and attitudes towards bilingualism in Japan; and on dialectology in Japan. The topics taught by the lecturer has included methodology for data collection and conversational versus academic language.
◇成績評価の方法:attendance, participation, preparedness for lessons and presentations

◇教科書:Romaine, S. 2000. Language in Society: An Introduction to Sociolinguistics. Oxford University Press.

◇注意事項:none

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(2008.12.11)