名古屋大学での勉強と生活

Wong Ngan Ling(国際言語文化研究科博士後期課程在学中)

 

99年3月28日筑波から名古屋市にやって来ました。名古屋大学国際言語文化研究科自分の研究したい分野である比較文化を学ぶことになったからです。日本語の教師を目指して来日しましたが、日本に住み慣れてくると日本語の勉強のみではなく日本文化にも興味を持つようになりました。日本人の行動、物の考え方、生活習慣、個より集団を大事にする文化、何ごとも丸く収めようとすること、相手をなるべく傷つけないようにする気配りなどは興味深く、私の研究対象になりました。特にコミュニケーションをとるときに、日本人の“間”の取り方が非常に上手であると感じ、沈黙する意味は何だろうと知りたくなりました。

多元文化論講座の多岐に渡る授業はどれも興味深いものでした。武田先生のユダヤ人問題、松本先生の自己形成論、中嶋先生の絵画・音楽の見方、長畑先生のアメリカの黒人問題、田所先生のフランスの多文化問題、松岡先生のコンピュターを使った論文の資料を収集する方法、藤木先生の映画論などは私の視野を広げ、ものの見方や考え方がさらに幅広くになりました。その上、必読文献という条件があり、自分の分野に関係のある“日本人の人間関係”、“間”、“沈黙”についての本で、日本人論などを読むようになり、修士1年の終わりに12冊の本を読みあげました。このような本を読むうちに、自分の研究したいこと、目的がさらにはっきり見えるようになり、さらに指導教官と自分の研究分野に近い先生と相談をすることによって、論文の大枠が把握できるようになりました。構想と中間発表で平井先生をはじめ、国際言語文化研究科の先生方のありがたい助言をいただいて、論文の内容を更に充実させることができました。論文が出来上がるまでは、浮き上ってきた難問と戦い、自分が書いた内容をよく検討したり、指導教官と自分の分野に近い先生からアドバイスをもらったりすることがとても重要でした。その他に、重要な時間と自己管理をうまくこなせすることでした。論文を書くことを苦しいことと考えないで、自分の責任だと思うと、気持ちが楽になりました。特に、論文の草稿を早く書き始めることが肝要です。そうすることで、論文の構造を必要なとき立て直すことができ、内容を書き加えるなどの余裕も出てきます。もちろんネイティブ・チェックを必要とする人、特に留学生の場合は、なるべく早めに論文を書き始めたほうがいいかもしれません。

中国語のことわざに「苦尽甘来」ということわざがあります。文字どおり、苦しんだ後、良いことなどがついてくることを意味します。私の場合は博士後期課程に入って、名古屋大学の推薦により国際名鉄育英会奨学金を頂くことになり、物心両面の心配がなくなり、勉学に全力を励むことができるようになりました。さらに、多元文化論講座の特徴を活かし、日本文化のみではなく欧米文化も研究すれば、知識を豊かにし、博士論文を書くために役に立つのではないかと考え始めました。このような考えから、名古屋大学と交換留学ができる欧米大学のリストを手に入れ、海外留学担当の先生に相談しました。交換留学は学部生のほうが多いが、今年から、名古屋大学と連係をし始めたばかりのイギリスのブリストル大学であれば大学院生を受け入れるということを教えていただいて、早速申し込みました。幸運なことに、留学の許可を頂き、今ブリストル大学に来ています。

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いつも曇っているロンドンのイメージと違って、ブリストルはこの夏は晴れの日が多く、18〜25度くらいの快適な気候で迎えられ、すばらしい第一印象でした。今住んでいる宿舎は街の中心から少し離れていて、学校まで歩いて40分、自転車で15分の静かなところで、勉強には適切な環境です。その上、近くに6面のテニス・コートがあり、運動が大好きな私は好機を逃すことなくテニス仲間を作って、多いに楽しんでいます。

4週間の夏休みの英語コースに参加することができました。学究的なライティングとリーディング(academic writing and reading)の勉強を主に行うもので、英語の文法の復習にとても役に立ちました。英語の発祥地で英語を学ぶことは何よりすばらしいことでした。またランゲージ・センターの先生方はとても親切で、気楽になんでも質問することができます。このコースの最後に自分の研究に関するレポートを提出することになっていました。私は‘Silence in Communication’というテーマでレポートをまとめました。2ページに渡る12問のアンケートをイギリス人、ヨーロッパ人(ロシア、イタリア、キプロス)、アジア人(日本、中国、台湾、インドネシア)の総計70人に回答をもらい、その結果を分析しました。アジア人は「沈黙が金なり」という信念がまだ残っているのに対して、ヨーロッパ人は沈黙に好感を持たず、「Silence is not golden」という予想通りの結果が出てきました。さらに深く、「ヨーロッパ人はコミュニケーション上で沈黙に対してどのような見方を持っているのか?」、「どんなときに沈黙をするのか?」ということが、私の今後の研究課題になりそうです。

一方、ブリストルの物価は高く、食料品を除けば、日本と変わらないくらいなのが初めはショックでした。新しい自転車を買う予定でしたが、日本円で5万円もするので、中古の自転車しか買えませんでした。イギリス全国にはサイクリング専用道路があり、自転車を買ったばかりの私はあちこち見回っていて、イギリスの深い歴史を秘めた建物、特に‘honey-coloured’の色に染まった建物、のんびりとした田園風景などを味わうことができました。

イギリスで一年間、短いですが、充実・有意義した留学生活が送れるよう、勉学も、スポーツ、旅行も満喫してから日本に帰ろうと思っています。多元のみなさん、Wishing you all the best in your doctoral and master thesis; and for the rest have a wonderful life in Nagoya.  

* Wong さんはマレーシア出身の留学生です。

(2001.10.22)