国際言語文化研究科での時間

中嶋 ゆう子(ヤマザキマザック、平成13年3月博士前期課程修了

 

現在私は、ヤマザキマザックという、工作機械メーカーに勤務しています。配属は、船積業務課という、海外への製品の輸出に関する業務を行う部署で、機械のこと、貿易の知識などを、少しずつ勉強しながら、毎日の仕事に取り組んでいます。

さて、国際言語文化研究科を卒業して、もう4ヶ月がたちます。2年間を振り返ってみると、あっという間だった気がしますが、とても充実した時を過ごすことができました。

私は、現代アメリカ表現科学講座で、自然を扱う文学、Nature Writing を主に勉強し、修論では、アメリカ自然保護の父、といわれるジョン・ミューア(1838-1914)のエッセイを取り上げました。

Nature Writing を専攻したのは、大学の卒論を、ヘンリー・D・ソローの「ウォールデン」で書いたことがきっかけです。その時は、アメリカの Nature Writing の伝統を考えあわせた卒論を書きたい、と考えたものの、結局、漠然とそう思っているだけに終わってしまい、もっと Nature Writing を勉強したい気持ちが残りました。しかし、大学院に入る前は、「自然」というのは、大きな概念なので、何か述べようと思っても、考えが拡散していくだけになってしまうと困る、と不安も大きく、緊張していました。

実際入学してみると、指導教官の加藤先生がきめ細かく、熱心に指導してくださり、また、いろいろな分野の講義を受講でき、それまでより視野が広がり、不安は不安としてあったものの、何とかなるかもしれない、という気持ちになってきました。

入学当初は、同じ講座の学生であっても、それぞれの専攻が様々で、それまでのような、同じ研究室の人とは、自分の勉強の悩みなど,話せば細かいこともすぐ通じる、という状況とは違ったため,とまどうこともありました。けれど、違うことを勉強していても、論文の進め方など、お互い相談でき、また、いろいろな分野を勉強している人がいるからこそ、自分のしていることを少し離れたところから見ることもできて、良かったのでは,と思います。

Nature Writing に話を戻すと、アメリカの作家、また、宮沢賢治など、日本の作家の作品にも多く接することのできた、加藤先生の授業は、準備は大変でしたが、とても楽しく、Nature Writing への興味を広げてくれました。授業以外でも先生には、実際に外に出て自然に触れる機会の企画や、紹介をしていただきました。

例えば、少し前になりますが、1999年のASLE-JAPAN(文学・環境学会)大会のエクスカーションでは、狭山丘陵の「トトロの森」でネイチャーゲームをする、という企画がありました。「トトロの森」とは、映画「となりのトトロ」の舞台のモデルになった場所で、ナショナルトラスト運動で保護されている里山です。ここで、散策とともに、五感を使って,自然を感じよう、という、「ネイチャーゲーム」を、「日本ネイチャーゲーム協会」の方の指導で、やってみることができ、とても印象に残る体験となりました。森の中で目を閉じて座り、聞こえてくる音に意識を集中させるゲ―ム、目隠しをして、木に触り、その木の枝振りや、周囲の様子などを説明してもらい、目隠しをとった後、木の感触や、先程の説明をもとに、どの木だったか、当てるゲ―ムなど、一つ一つのゲ―ムをした後では、森の中が、それまでとは違った様子に感じられました。その日は、蝉の声が響くとても暑い日で、正直、かなりくたびれましたが、じっくりとひとつの場所にいて、森の中の音や木の形、いろいろな植物や虫に意識を向けてみる、ということを通し、普段なら何気なく通りすぎてしまうような場所でも、少し五感に意識的になることで、それまで気がつかなかったことが見えたり、感じられたりするのだなあと、実感しました。

このように、Nature Writing のいろいろな作品を読めたことに加え、実際自分が自然の中へ出かけていく機会があったことは、勉強を進めていく上で、ためになっただけでなく、それまでの、一つのことに行き詰まると、前へ進めなくなりがちだった私の考え方をも、ほぐしてくれました。本からも、自分の体験からも、こんな世界があったんだ、と気づくことが多くあり、以前より、感情が自然に動くようになったような気がします。

さて、今となってみると、在学中に、もっと熱心にやってみれば良かった、と思うことも多くあります。しかし、大学院での時間、その中で感じてきたことは、確実に現在の私を支えてくれており、そのような時間を過ごせたことを、心からうれしく思っています。

(2001.8.9)