案ずるより生むが易し

松浦 暢子(国際言語文化研究科博士前期課程在学中

 

私は現在博士前期課程2年に在籍し、現代東アジア表現科学講座で中国語音声学を研究しています。

私は大学を卒業してから民間の会社で働いていました。中国語に関しては、学部生の時から第二外国語として選択し勉強していました。大学四年生の時、大学院進学を考えない訳ではありませんでしたが、結局勇気が足りず就職したのです。しかし、やはり中国語をより専門的に学びたいとの思いが強く、一念発起会社を退職し大学院に入学しました。

本研究科に入学するまでは、私のようないわば「出戻り」の学生は肩身の狭い思いをするのではないかと不安でした。ところが、入学してみると実に様々な年代、国籍、職業、経歴の院生が集まっていることに驚かされました。私のそれまでの大学院生のイメージは「学部からエスカレーター式に上がってきたエリート学生」というものだったからです。このような院生の多様さは国際言語文化研究科が学部を持たない独立した大学院であることだけがその理由ではないと思います。なぜなら私がもっと驚いたのは院生同士の関係、教官と院生との関係が非常に良好であるということだからです。特に本研究科は先端文化、多元文化などのこれまでの枠組みを越えた分野を専門とする先生方が多く、とても開放的な雰囲気があるからだと思います。教官との関係が研究の面でも非常に重要となってくるので、それが恵まれていることはとても素晴らしいと思います。また、私も現在ひしひしと感じていますが、研究はとても孤独な作業です。その中で同じ院生との交流はとても励みになります。皆研究テーマはそれぞれですが、同じ仲間として良い刺激にもなっています。

私は中国語の軽声について修士論文を書こうと、試行錯誤を繰り返しています。そもそも、私が大学院入学を思い立ったのも、独学の中国語が一向に上達しないため、その原因を探ってみたいと考えたからです。特に言語の「らしさ」はどのように学べばいいのか分かりませんでした。その「らしさ」である韻律的な分野を解明していく第一歩として、その一部を担っていると考えられる軽声を対象に選びました。指導教官の平井先生にはとても熱心に指導していただいています。平井先生は私たちが自主的に開いている勉強会にも参加して下さりアドバイスをして下さっています。研究の方法に関して、先生のご指導はとても実践的でためになります。そして先生の研究に対する姿勢にはいつも感服させられています。

私の将来の希望は中国語の教師になることです。そのため先生方の教授法を学ぼうと、初級中国語の授業を聴講しています。将来の自分の授業を想定して、改めて授業を受けることはとても有意義です。快く聴講を承諾して下さっている先生方にはとても感謝しています。

これから修士論文の追い込み時期になって、精神的にも身体的にもつらくなってくると思います。しかし、先生や仲間たちの助けや励ましがあるのできっと乗り越えていけると思います。

会社に勤めていたとき、自分に大学院で研究することが向いているのかどうか分からず、その不安が私を躊躇させていました。大学院に入学した今も、その答えは出ていません。しかし、私でも「やればできるかもしれない」という機会を与えてくれたこの研究科に入って本当に良かったと思っています。これから先の見通しはまだ全くと言っていいほど見えていませんが、その中で奮闘していくうちに道は開けてくると信じています。その信じる力をこの研究科が与えてくれました。

大学院は厳しいところと考えている方、そうとは限りません。実際は皆で頻繁に食事に行ったり飲みに行ったりして楽しんでいます。大学院に入ったら人生の選択肢が狭められるように考えている方、そんなことはありません。どんな環境に在っても自分で自分の道を決めることができます。いろいろと迷っている方、本当に、「案ずるより産むが易し」です。つらいことも確かにありますが、それを乗り越えてこそ本当の喜びが手に入ると思います。それをサポートする体制がここ国際言語文化研究科にはあります。仲間が増えるのは私にとっても心強いことです。ぜひとも本研究科に入って皆さまがそれぞれに自分の納得できる道を選択できるよう期待しています。

(2001.6.15)