東アジア言語文化講座
大学院生・修了生エッセイ集


高芃(平成20年度博士学位(文学)取得)
 「研究は孤独なもの?」

 「研究は、孤独なものです。」博士後期課程に入ったばかりの頃、先生に言われたこの言葉は、今でも鮮明に覚えています。
 二年前同じ桜を迎えるこの季節、博士後期課程を満期退学して帰国することを決めました。先生に最後のお別れを告げた時、「帰国してからも博士学位論文を書きます」と宣言しましたが、正直、当時の私には学位論文を仕上げる自信はほとんどありませんでした。
 そして帰国してから、結婚式の準備、家の内装工事などに振り回され、だんだんと研究から遠ざかってしまい、気がついた時には、すでに半年が経っていました。ある日、本棚においてある『多元文化』を手にしてみました。そこに掲載された自分の論文をしばらく眺めて、せっかくここまできたのに、このまま諦めるわけにはいかないと思い直し、再度論文を書き始めました。
 しかし、大学を離れて論文を書くのはそう容易なことではありませんでした。書いた論文をまず日本にいる指導教員に添付ファイルで送って修正してもらった上で、EMSで返送していただく、という形でやり取りをしていました。周囲に日本語をチェックしてくれる人がいないため、論文はいつも真っ赤になって返ってきます。自分を非常に情けなく思いましたが、細かいところまで直してくださった先生方の筆跡を見て、また、全力で応援してくれる家族の顔を浮かべると、「やはり自分がもっと頑張らなくては」とやる気が沸いてきました。「意味不明」という指摘に落ち込んだり、「ここは面白い指摘だ」というコメントに有頂天になったり、一喜一憂しているうちに博士論文が少しずつ完成に近づいていきました。
 先生方の丁寧なご指導がなければ、また家族の暖かい支えがなければ、博士学位の取得は不可能であり、そうした意味では研究は決して孤独なものではないと思います。
 もうすぐ桜の季節になり、新しい生活がいよいよスタートします。学位論文執筆の経験を通して、今後、同じことを自分の学生たちにも伝えていきたいと思います。

                                                        (2009年3月24日)