学習者の行動や発言に対する実習生の認識

 

河合由希江

 

はじめに

 本稿では、筆者の担当した初級後半のクラスの一授業を取り上げ、その問題点の考察を行う。

今回情報を得る手段としては、毎回授業後に行う「授業後アンケート」と授業中のインタラクションがあった。特にアンケートで得た学習者からの意見を中心に、クラス担当者で話し合い、クラスの目標を変更することもあった。授業中に実習生(筆者)が得ていた情報は、どのようなものだったか、得られた情報はどのように利用されていたのか、主観および客観的な視点を分化し、整理することで、われわれは情報を得る時どのような注意点を意識すべきなのかが見えてくると思われる。よって、本稿では、学習者から得た情報を実習生が取り入れていく過程を分析する。

 

1.コース参加者

 全体で12名のコース参加者のうち、初級後半レベルの参加者は5名だった。

内訳は以下の表のとおりであった。

【表1】学習者の特性

学習者

出身地

性別

参加日

LM1

アメリカ

男性

全日

LM2

アメリカ

男性

最終日のみ欠

LM3

イギリス

男性

前半3日

LF1

アメリカ

女性

全日

LF2

カナダ

女性

前半3日

 

2.対象とした授業の概要

 8月16日2限の授業の録画ビデオを分析の対象とした。この時間を対象に選んだのは、学習者の1人が「授業後アンケート」で不満足であったことを表したためである。この学習者は、どのような点で不満足だったのだろうか。授業中に実習生は、その学習者の様子をどのように捉えていたのかを改めて考察したい。

 

2.1 授業の概要と目標及び全体の流れ 

8月16日(月)2限 病院で 

参加者:全員

目標:病院での会話の理解と症状の説明ができるようになること

授業の流れ:

1.日本で病院へ行ったことがあるかについてのトピック提示

2.会話提示

3.会話の内容理解

4.文法確認 ~てもらえますか

5.文法確認 ~たら・・・

6.会話の読み合わせ

7.会話の穴埋め(医者に症状の説明をする 例「昨日から頭が痛くて・・・」)

 

2.2      ビデオデータ記録および刺激回想データ記録について

 分析対象となった授業の録画データは、文字化をした。文字化は言語情報のみではなく、しぐさや態度などの非言語情報も記述し、同時に、そのビデオを刺激として、実習生(筆者)が思い出せる限りの個人の内面情報の抽出をし、文字化資料に併記した。

なお、学習者の内面に関する刺激回想資料は得られていないが、3節に示す授業後アンケートの結果から、少なからずそれに近い情報が得られている。後に合わせて考察する。以下の【表2】に示した文字記録データは、上に示した授業の流れの1から4のところまでである。

 【表2】の見方は、左列より、時間軸、教師の行動、学習者の行動、教師の思考の順で並んで表示されている。

 

【表2】授業文字記録データ

時間

出来事/Tの行動

出来事/ L側

Tの思考

10:30

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10:35

 

 

 

10:37

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10:38

 

 

 

 

 

 

 

 

10:40

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10:42

 

 

 

 

10:44

 

 

 

 

10:47

 

 

 

 

 

 

10:50

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10:54

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10:56

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10:58

 

 

 

 

 

 

 

11:00

授業開始

1トピック提示

LM1の奥さんの妊娠を話題にする、板書「妊娠する」

LM3に病院に行った経験をきく

 

twist’の日本語を「ひねる」と説明。

板書

LM3の話題を拾う

 

 

 

LM1の質問を受ける「転ぶ」と説明。

板書「転んで背中をひねりました」

 

「痛かったですね」とコメント。

「痛いです」と言い換え。

「大変でしたね」とコメント。

「生まれて初めて」について説明

 

 

生まれて初めて病院へ行きました という表現を紹介。

LM3に対し「元気ですね」とコメント

LF2は?

「いいですね」とコメント

LM2は?

「‘not yet’ ‘never’でもいいすよ」とコメント。

「いいですね」

LF1は?

「いいですね」

 

「そうですね」と同調。

「保険」ということばを紹介

「保険は知っていますか」と質問

LM1に振る

 

保険があると被保険者の負担は3割だという話題

 

 

携帯を手にする 質問を聞きながら携帯をいじる

 

 

「そうですね」あいづち

 

病院の会話を紹介する

氏名の並び(苗字が名前の先にくること)を説明

 

2役割の説明 

語彙説明「看護婦」板書

 

サンプル会話1提示

体温計のアラーム音が鳴る

役割説明「医者」板書

サンプル会話2提示

「分かりましたか」

 

「三日分て何でしょうね」

説明

 

次のプリントを渡そうとするが見つからない

 

「3日間は3daysです」

説明

 

 

「分」板書

 

 

「分」説明を続ける

LM2LM3の方に目を向けられない。

プリントを探す

ある分のプリントを配布

LM2に「3枚で1人分です」

3 会話のテキストを読む

LM2の様子をうかがう

分からないことがないか尋ねる。

順番に語彙を確認していく

語彙の説明をする

don’t chenge’英語で提示 

 

再度サンプル会話の読みに戻る

 

 

 

4文法の説明に移る

〜てもらえますか

LM3に「立ってもらえますか」

立つように促す仕草

 

 

「今は説明できません。」もう少し後で。「〜てください」と同じと軽く説明。

「名前を書きます、お願いします」というキューを出す。テ形を言わせようとする。

「かって?か・・・」

書いて

「待ちます」板書

 

「買います」板書・・・テ形に変形させるようにキューを出していく

 

コンテクストを示して「急ぐ」→急いでもらえますかに変換する練習

 

動詞の分類を説明

2グループの動詞として「食べます」を変換するようにキュー

「見せる」

「みる」

 

ドリル練習

コンテクストに合わせて言う練習

レストランでウェイトレスに「もうちょっと待ってもらえますか。」と言うようにキューを与える

 

LM1に「します」を説明する

 

 

同じです。「もらえませんか」の方が丁寧だと説明

映画館にいると言う場面例。

映画館で前の席の人に座ってもらえないかと言う場面を説明

「もらえますか」が使える場面の確認

「怒っている」語彙使用

「もらえませんか」使用場面の確認

・・・「ゆっくり話してもらえませんか」の場面キュー

医者の発話では「もらえませんか」は丁寧すぎるということを説明。

 

LM1】が病院へよく行くと発言。奥さんの妊娠についての話題を振る。

 

LM2】【LF1】メモする

LM3】 スポーツの事故の話題 ‘twist’が分からない

「起きることができなかった」と言おうとうする。

 

 

 

LM2】 「事故」がわからずきき返す。LM1がaccidentと説明

LM1】質問 ‘fall down’ の日本語を聞く

 

 

 

全員板書をメモ

 

LM3】わからない

LM3】理解し「すごいいたい」と反応

 

LM3】「はじめて病院いった。一生」

 

LM1】→【LM3】「イギリスで?」

LM2】 英語で何か質問LM3もそれに答える

 

全員Tの説明に注目

 

 

 

 

LF2】 「まだ」

 

 

LM2】「まだです」と答えてから【LF2】 ’never had?’ と確認

 

 

LF1】まだです」

 

LM1】 日本の医療費の高さについて発言

 

 

 

 

LM2】 首を振る「保険てなんですか」

LM1】’health insurance’

LM2】 うなずいてメモ 【LM3】 メモ

 

LM1】 妊娠の人は保険が使えないが、政府から支援金が出るという話

LF2】 挙手 30万円は一回の出産につき一度もらえるのかという質問

LF2】 初めはTに向けて質問をしていたのがLM1に向けて話し始める

他の学習者はLM1の話をきく。

LがTをちらりと見ると、Tは携帯をいじってうつむいている。

 

 

LM1】→【LF2】 苗字と名前の順番が逆になるということを確認するような仕草

 

LM1以外、看護婦の説明に反応なし。’nurse’という板書に反応し、メモ。

全員会話を注意して聞く。

 

 

LF1】【LM2】うなづく。板書に注目。

 

LM2】 「分からない」という仕草

LM3】 三日分?

 

 

LM1】’for 3 days’ 英語に言い換え確認

LM2】 LM1の説明に反応

LF2】 まだよく理解できずLM1に質問

 

LM1】「三日間英語で何ですか」

LF2】「三日分は?」

LF2】 説明の途中までうなづいてきく。途中で止まる

LF2】「ブン 漢字は何ですか?」

LF2】理解

LM1】 笑い 

LM2】【LM3】よくわかっていない様子

 

 

 

 

 

 

 

【みんな】 テキストを目で追う

 

LM2】 首を振る

LM1】 薬を「食べる」ではなく「飲む」というのはなぜか と質問

 

LM2】 テキストのみを見る

LM3】「そのまま」と「ぼちぼち」は同じかをきく

LM2】 メモ

皆テキストに集中

LM2】 体を揺り動かしたり、ノートをめくったりする。

LF2】 「風邪」質問

LM1】説明「せき」なども一緒に

 

 

LM3】理解できないようす。

LM1】 立つそぶりをする

LM3】 立つ

 

LM2】「もらえますってなんですか」と質問çD

Tの話をきく。

 

 

LM1】 肘をみたり、そわそわする

 

LF2】「かって」

 

LM1】「かいて」

LM3】 うなづく

LF1】【LF2】 「まって」

LF1】メモの手を止める。

 

LF1】積極的にドリルに参加

LM2】 「呼んで」「読んで」が同じであることを確認しようとする

LM1】「急ぐはなんですか」

【他のL】  ‘hurry’

 

 

 

 

LM2】 「たべて」

LF2?】「見せて」

L】「みて」

LM2】 コンタクトが外れた様子 退出çF 

 

 

LM1】辞書を調べている

 

 

 

LF2】「もうちょっと待ってもらえますか」

LM3】うなづく

LM1】「します 英語で何ですか」çH

 

LF2】 「「待ってください」「待ってもらえますか」同じですか。どっちの方がいいですか。」

LM2】 席に戻る

LF2】【LM3】うなづく

LM2】映画館が分からないと首を振る

LM1】 ‘movie theater’と説明

 

Lの数人】「座ってもらえませんか」

LM2】 うなづいてメモ

 

LM3】うなづいて聞く

LM3】うなづく 【他のL】静止

【全員】「書いてもらえませんか」

 

 

LF1】「ゆっくりはなして・・・」

全員発話できる

 

 

LM2】【LF2】うなづく。

演出として携帯のアラームを鳴らそうと考えている。ç@

 

 

 

 

 

 

Twistを日本語で何と言うか適当なことばがわからない

LM2の言いたいことを日本語で言わせたい。

 

 

 

 

 

日本語でコミュニケーションできたと実感してほしい。

 

 

 

「生まれて初めて」を教えなくては!と教えることに一生懸命。

LM3が消極的な印象があったので、発話に積極的であることが嬉しい

 

 

 

 

 

 

 

≪後でつかおうと思っている携帯のアラームが鳴ってしまった≫消さなくちゃ。

 

Lと言語でのコミュニケーションをしなくては。

 

結構みんな病院にかかったことがないんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ会話に入らないと時間がなくなる。LM1が話題を出しすぎるので、そろそろ切り上げなくては。

反応が悪いなçA

 

 

 

 

 

 

 

 

 

微妙な演出だったな

 

 

 

うまく説明できないかも。不安。

 

 

 

あれ?プリントがない。çB

 

 

え、どうやったら分かるんだ?

 

え、漢字をきくのか?中国系だし、なるほどね。

 

あ、LM2、分かってないなあ。

 

しょうがない、次に行くしかないな。

プリントがない。

 

あ、ここで、「分」使える。

 

 

 

やっぱり難しいか。

英語はeatって言うんだっけ。LM2、LM3大丈夫かな。

全体で確認した方がいいな。

 

 

 

そんなことば、知ってるんだ

 

 

 

 

もっと準備しておけばよかった。çC

 

「立って」分からないんだな。

 

 

 

 

 

 

 

例で示そう

 

「書いて 言えないんだ。

 

 

 

 

 

 

LF1はこういうドリルで反応がいいなçE

 

いまいち盛り上がらないな。

あ、LM1でも「急ぐ」分からないんだ。

ちょっとテ形を確認した方がよさそうだな。

 

 

 

 

LM2、できるんだ。いいじゃん。

 

 

LM2どうしたんだろう。何か気に入らなかったかな。çG

 

LF1 反応いいなあ。

 

 

 

 

 

え、それ聞く?çI

 

 

 

そういう質問がくるんだな。LF2よくできるな。

こんな説明じゃまずいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「話す」のテ形やってなかった!

 

2.3      考察

 実習生が授業中どのようなことを考えていたかという観点で、上記のデータを分析、考察する。

 

@     演出のためのアラームの設定を気にする

これについては、見学者からの指摘もいただいた。筆者は、この日の授業で、病院での会話の演出をしようと考えていた。後で冷静になって考えるとどうしてあんなことをしようと考えたのか分からず、本当に愚かだと思うのだが、体温を測り終えた時に音が鳴るように設定しようと考えていたがなかなかうまくいかず、携帯電話を度々気にすることになった。表面的に授業をおざなりにしているとも見えた。筆者は時々携帯電話を見ている程度に周囲の目にも映っている程度のつもりだったのに、ビデオを見ると、まるで授業中に携帯メールを気にして、授業に集中していないかのようにも見えていた。思わぬ失態で、ビデオを見て恥ずかしかった。ビデオの中で、学習者が時々実習生の方に目を向けるが、すぐそらすような様子が見られたのは、授業者としてあるまじき姿勢であったためだったのかもしれない。本当に恥ずかしかった。

 

A     学習者とのウォーミングアップの会話のつもりが、盛り上がりに欠けた

これは、@とも関連する。筆者が授業中携帯電話をいじっていたことから、学習者からみた教師の態度がふてぶてしいものに見え、学習者が不快感を抱いていた可能性がある。

 

B     用意したはずのプリントがない

準備の仕方に問題があったと思われる。授業に対する準備不足のせいでもあろう。授業前にシミュレーションをする時間がなく、物の配置への配慮が欠けていたと思われる。

学習者からみて不快なものであるだけではなく、学習者の発話に実習生の注意が十分及ばない可能性が高い。事前の準備が必要だったと思われる。

  

C     準備不足を感じる

学習者の反応の悪さから、自分の説明が適切でないことを感じている。学習者のレベルをよく把握していない段階では、どのような質問がきても答えられるような準備の仕方が必要だったと思われる。信頼関係が気付かれていない段階では、なおのことであろう。

  

D     やや遅れを感じている学習者が質問をしたのに対し、即座に答えない

LM2が、主な学習項目についての質問をしたにも拘わらず、まず否定的な対応をしたことは問題があったと思われる。特に実習生自身が無意識に「今は説明できません」と発言している。最終的にはある程度の説明をしているのだが、学習者からの質問や要求を拒むような発言を無意識にしてしまうようなことは避けなければならないだろう。

  

E     LF1の反応を認識

学習者の中でもややおとなしめのLF1の反応が目に止まっている。前向きに取り組む姿勢にプラスの印象を受けている。

  

F     LM2の様子を見逃す

L,M2のコンタクトレンズが外れたことを実習生はビデオの観察で初めて知った。教室を全体的に見渡せていないことが露になっている。

  

G     LM2の様子を心配する

LM2がコンタクトレンズが外れてしまった様子を見逃してしまっているために、不用意にLM2を心配している。LM2が他に比べ日本語力が劣っていることを意識しすぎていたためにこのような心配をしたものと思われる。実習生自身が、席を外れた学習者を意識することは大事だが、全てその原因を自分に帰属させることは懸命なことではないと言える。

  

H     よくできるはずの学習者からの意外な質問

LM1他の学習者が分からないことを教える役割を果たすことが多い。だがLM1とて学習者の1人であり、学習したいという思いは抱いている。結局、実習生は他の質問を受けるうちに、LM1からの質問をなおざりにしてしまい、LM1が満足する答えの提示に至らなかった。

一つ一つの質問を大切にすることは、教師と学習者の信頼関係の土台を築くものと思われる。

  

I     学習者の質問への驚き

実習生に日本語能力に対する既成概念があり、あるレベルの話し方ができる学習者が理解している語彙を無意識に規定していたようである。よって、LM1が「する」の意味を聞いてきたことに対し、「え?それ聞く?」と言うような驚きの念を抱いている。が、「する」の活用ができ、する動詞の使用はできていても、「する」自体の意味が気になったのであろう。後で考えるとそれが理解できるのだが、あまりにも唐突でその質問をきちんと消化して対応できなかったことは問題である。

    

 

3.   授業後アンケート結果

3.1 授業後アンケートについて

 本実習では、各クラスごとに授業後アンケートを作成した。授業が終わるごとにアンケート用紙を配布し記入してもらった。回答は選択式で、部分的に記述式を取り入れた。記入には、筆者の印象としては平均1分程度かけており、長くとも3分くらいで記入できるものであった。

 質問の内容は、初めの2日と残りの5日で異なるものを使用した。ここでは、残りの5日で使用したものについて報告する。

1.授業の満足度 (パーセント)

2.選ばれたトピック、発話機会、得た知識(3択)、理解度(5段階尺度)

3.この授業で学びがあったか。 

 →はい と答えた人に それは何か それはどうしてか

 →いいえと答えた人に 既知のことだった/まだよく理解できていない(2択)

                          →それは何か

4.授業で不快だった点、不満だった点があったか

 →はい と答えた人に その原因

5.よく理解できていないことをみんなの前で発話させられたか

→はい と答えた人に どのように感じたか (7つの選択肢)

6.学習者の理解度を教師が把握していたか(2択)

7.教師の発話の理解(2択)

 その原因 発話の明瞭さ 発話の速度 使用語彙 その他(記述)

8.不要だと思った箇所があったか(2択)

→あった と答えた人に それはどんなところか

9.誤用訂正に関して

頻度(4択)、提示方法(3択)→適切でなかったと答えた人に 理由

10.教師へのコメント、フィードバック

 

3.2 授業後アンケート結果

アンケートは無記名にて記入してもらったため、学習者と一致させることはできなかった。Bの授業に対する満足度の40%が目立つ。

 

【表3】授業後アンケート集計結果

 

A

B

C

D

E

1.満足

70%

40%

92%

無記入

無記入

2.話題

とても

あまり

とても

とても

とても

2.発話

適度

少ない

少ない

適度

少ない

2知識

適度

少ない

適度

適度

適度

2理解度

3.学習事項

y.病院用語

n.理解不能

クラスについていけないと感じた。

y.たら

知りたいと思っていた文法だった。分かりやすく説明した。

y.語彙文法

y.病状名

4.不快不服

n.

y.分かりやすさ

授業がほとんど理解できなかったし、ペースが速すぎた

n.

n.

n.

5.未知のこと

n.

n.

n.

y.

n.

6.認識

y.

n.

y.

y.

y.

7.理解

不可

7.原因

無記入

速度、語彙

明瞭、速度、反復

明瞭、速度、語彙

明瞭

8.不要

n.

n.

n.

n.

n.

9訂正量

適度

気付かず

気付かず

適度

適度

9訂正法

適当

気付かず

気付かず

適当

適当

10.コメント

なし

なし

なし

なし

なし

 

3.2.2     アンケート結果 分析

 理解の度合に注目してみると、他の学習者が4を示したのに対し、学習者Bは2を示している。満足度も40%と他の学習者より低い。日本語力で他の学習者に引け目を感じているとすれば、クラス分けの時から、ゼロ初級クラスに入るかどうかで迷われた、LM2である可能性が高い。理解が困難であった理由には、進度の速さを挙げている。さらに、教師(実習生)が学習者Bの理解の度合いを把握していなかったと捉えている。他の学習者には、否定的な反応は見られていない一方で、学習者Bのみが極端に後ろ向きな姿勢でこの授業を振り返っている。

 

4.まとめ

 ここまで2節、3節でみてきた実習生、学習者の認識がどのようにずれていたのか。この授業で教師はどのような点を見落していたのか、どのような情報を生かそうとしていたのかを、分析、検討したいと思う。

 

4.1      学習者の不理解を積極的に感知しようとする姿勢

 これに関しても3節同様、学習者BがLM2であるという前提で分析する。実習生は、学習者LM2の授業内容の理解ができているのかを心配していた。それに反して、LM2は、実習生がLM2の不理解を把握していなかったと報告していることから、そこにズレが生じている。

 ビデオの記録には表れていないが、実習生は、学習者LM2に分かりやすい説明ができていると思えなかったため、不安のあまりLM2から目をそむけようとしていた。LM2に対して話し掛ける時以外は、他の学習者に話し掛けるような姿勢でいた。実習生自身が消極的な姿勢であったことが問題だったと思われる。LM2に適切なレベルの授業ができていないことへの後ろめたさが表面化してしまったのだろう。LM2のレベルを前提とした授業の準備をする必要があった。

 

4.2      学習者についての情報を逃さないで捉えようとする姿勢

 客観的に見て、学習者の情報を逃すまいとして聞く姿勢を見せることは、話す人の意欲を高めることになると考える。2.3のA例のように、実習生が学習者の話をきちんと聞かないことで雰囲気が消沈することもあるだろう。

 そこには、準備周到であることも含まれる。準備ができていることで学習者の発言に耳を傾ける余裕が生まれるといえる。

 

4.3      学習者に対するイメージだけで学習者への態度を変えない

 学習者に平等にあたることは当然のことである。しかし、不得手な学習者をかってに実習生が特定することで、その他の学習者が発話した時と差をつけてしまうことがある。あくまで平等な視点で判断しようとしていることが学習者に伝わらなくてはならないだろう。 

 

 

5.終わりに

 本稿では、実習生がどのような観点をもって物事を捉えて、それをどのように表出しているかが、学習者に不快感を与える可能性があることが示唆された。自分の見ていない学習者、自らの非言語行動や発話を意識することの重要性を改めて感じることができた。

 

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