4.1 ゼロ初級

4.1.1 学習者

4.1.2 担当・シラバス

4.1.3 反省

4.1.4 全体を通しての反省

4.1.1 学習者

今年度のゼロ初級クラスの学習者は以下の通りである。

学習者

国籍

性別

日本語学習歴

来日経験

備考

A

UK

F

ほとんどない

なし

JETプログラム参加

B

UK

F

まったくない

なし

C

NZ

F

ほんのわずか

なし

家庭教師について週1時間勉強した(期間は不明)

D

CA

F

週3時間を6週間

なし

JETプログラム参加

 Eメールによる事前アンケート(6月末締め切り)と、来日後、教育館で行ったインタビュー(8月11日)によって、上記の4名に決定した。学習者AとBは、日本語についてはごく限られた知識しか持っておらず、授業についてくるのが大変そうだったが、学習意欲は高かった。学習者Cは、日本語に多少触れた経験があるせいかのみこみも早く、クラスのリーダー格的存在であった。学習者Dは、4人の中では最も日本語に関する知識が豊富で、定着度もかなり高かったように見受けられた。

4.1.2 担当・シラバス

ゼロ初級は栗原由華、片桐恵理子、森博子の3名で担当した。授業は、1日目オリエンテーションの続きとして、大曾先生にひらがなの紹介をして頂いた。(Hiroko C Quakenbush & Mieko Ohso1999)『Hiragana in 48 minutes使用)各課については、栗原が3回、片桐が2回、森が1回の割り当てで担当した。尚、ゼロ初級においては、テキストにある「L6の不調を訴える」をあえて扱わず、余裕を持ったカリキュラムに設定した。21日のアクティビティ・ビデオ撮影は、ゼロ初級クラスと初級クラスの合同で行い、授業で扱った日常生活や仕事の場面で実際に使える会話を中心に、実際クラスの外でそれらの会話を実践した。22日には撮影したビデオを見せ、栗原が1コマ目にフィードバックを行い、2コマ目は森が日本文化の紹介を行った。


  ゼロ初級クラスのシラバスは以下の通りである。

1(9:30〜10:20)

2(10:30〜11:20)

3(11:30〜12:20)

14

Thu

オリエンテーション(全体)

ひらがな(大曾先生)

L1 自己紹介

(栗原)

ウェルカムパーティー

(全体)

15

Fri

L1 教室用語

(栗原) 

L2 注文する(1)

(片桐)

L2 注文する(2)

(片桐)

18

Mon

L3 買い物する(1)

(栗原)

L3 買い物する(2)

(栗原) 

アクティビティ

(片桐) 

19

Tue

L4 道をきく(1)

(片桐)

L4 電話する(2)

(片桐)

アクティビティ

皆で明石焼きを食べに行く

20

Wed

L5 電話する(1)

(森)

L5 電話する(2)

(森)

L7手紙をおくる(1)

(栗原)

21

Thu

L7手紙をおくる(2)

(栗原)

アクティビティ 

ビデオ撮影 説明と実施

アクティビティ

ビデオ撮影 実施

22

Fri

アクティビティー

フィードバック(栗原)

日本文化

J-POP『さくら』・箸(森)

フェアウェルパーティー

(全体)

4.1.3 反省

8月14日 1日目 2コマ 担当:栗原

内容: L1 じこしょうかい

簡単な自己紹介

ウェルカムパーティーで質問できるように練習する

反省: 挨拶の言葉は知っていたようで、かなりスムーズに進んだ。発音練習もうまくいき、予定時間の半分程度で済んだ。ほとんどは日本語で授業をしたが、表現の意味だけ英語で訳した。教師によって身振り手振りが異なるので、統一する必要を感じた。

8月15日 2日目 1コマ 担当:栗原

内容: L1 じこしょうかい

前回の復習

N1のN2 / 教室用語 / 〜です・〜ですか

はい・いいえ / いいえ、〜じゃありません

反省: 復習ではダイアログを読み、説明を加えただけだったが、他にもっと発展させられたかもしれない。時間がたくさん余りすぎ、教師がうろたえてしまったので教室に緊張感を保てなかった。時間が余っても何かできるように準備しておくべきであった。

8月15日 2日目 2コマ 担当:片桐

内容: L2 ちゅうもんする

数の数え方(ひとつ、ふたつ、みっつ…)これ/それ/あれ/どれ

反省: 数字は1〜99までは既習の人が多かったので、次の時間にやる予定だった「ひとつ、ふたつ、みっつ…」をこの時間に導入した。一応「とお」まで紹介したが、学生にとっては負担が大きかったようだ。大曽先生からも「いつつ」までで十分だとの指摘を受けた。「これ/それ/あれ/どれ」については、これらの語を使って日本語で何と言うか知りたいものを教師に質問するよう指示したところ、ひっきりなしに質問が続いた。結果的にはそのことが授業に散漫さをもたらしてしまった。

8月15日 2日目 3コマ 担当:片桐

内容: L2 ちゅうもんする

「ひとつ、ふたつ、みっつ…」の復習

〜と〜〜くださいひらがなの練習

反省: 2コマめで「ひとつ、ふたつ、みっつ…」をやってしまったので、その分余った時間をどのように活用してよいかわからず焦った。とりあえずカタカナ語の日本語読みを練習してお茶を濁したが、練習の意図が学習者に伝わっていなかったと思う。大曽先生からは単語ではなく、文の練習をするべきだったとの指摘を受けた。表現をひとかたまりのフレーズとして覚えさせることの大切さを全く認識しておらず、学生に膨大な数の単語を押し付けてしまった。そのため授業の終わりには、学生たちは疲れ果てた様子をしていた。

8月18日 3日目 1コマ 担当:栗原

内容: L3 かいものする

数の復習

100以上の数 / 形容詞 / いくらですか

反省: 数はまだしっかり覚えられていないようだったが、全体としては活発に進んだ。フレーズの口ならしが十分ではなかったように思う。学習者の理解が得られたことだけに満足し、使えるようになるまで練習しなかったので、もっと丁寧に進めるべきであった。

8月18日 3日目 2コマ 担当:栗原

内容: L3 かいものする

色 / 「の」 NのN、い形容詞の(大きいの)

〜あります / ありますか

もうすこし〜がありますか

反省: 「あります」の説明に”There is 〜”という英語訳を与えたが、買い物をする場面であったので適当な訳があったはずだった。学習者からhave=「あります」としてとらえてよいかというさまざまな質問が出されたが、準備していなかったため、十分にこたえることができなかった。関連事項についても押さえておくべきであった。

8月18日 3日目 3コマ 担当:栗原・片桐

内容: アクティビティ

L2とL3で習った表現を実際の場面で使ってみる。昼食を兼ねて、モズバーガーに行き、日本人の店員を相手に食べたいものを注文する。

反省: 学生たちは習ったことをアウトプットすることに精一杯で、かなり悪戦苦闘していた。無理もないことだが、合計額を告げる店員の言葉も殆ど聞き取れず、レジの表示を見てお金を出していた。しかし彼らの様子はとても楽しそうで、実際に注文することができたことに非常に満足感を覚えているようだった。学生たちが求めているのは「実際に使える日本語」なのだということを、改めて認識させられたような気がした。

8月19日 4日目 1コマ 担当:片桐

内容: L4 みちをきく

前回の復習(数字、色)〜はどこですか?

〜のとなり(みぎ/ひだり/まえ/うしろ…)です

ここ/そこ/あそこ/どこ

え?場所あてゲーム動詞の導入(テキスト P18、19)

反省: 「ここ/そこ/あそこ/どこ」はよく分かっているようだった。「え?」(Pardon me?)のイントネーションはやはり難しそうだ。ペアワークを行うと、一方のペアはすぐに終わり、もう一方のペアはもたつくといったことがあるので、終わったほうのペアへの対応を考えておく必要がある。1人、反応が少し遅い感じのする学習者がいたが、なんとかついてきていた。テキストの動詞を導入したがオーバーワークだったようで、みなうんざりしたような顔をしていた。

8月19日 4日目 2コマ 担当:片桐

内容: L4 みちをきく

日本の県の名前をあてるゲーム

〜へいきたいんですが

〜の〜ゆきにのってください

〜つめでおりてください

動詞の復習

ひらがなの練習

反省: 「〜のとなり(みぎ/ひだり/まえ/うしろ…)です」という言い方は結構定着していた。キーエクスプレッションを3つ選んで、地下鉄路線図を使って覚えさせようとしたが、大曽先生に練習が不十分だと指摘された。キーエクスプレッションは何も見ないで言えるくらいに練習してからペアワークに入らないと消化不良に終わってしまうということで、肝に銘じなければならないと思う。動詞はやはりほとんど頭の中に入っていなかったが、「食べます」だけは全員よく知っていた。

8月20日 5日目 1コマ目 担当:森

内容:L5 電話する(1)

復習項目:教室用語、こ・そ・あ、色のi-Adj.、位置表現、〜がいる・ある

導入表現:N1の〜(位置)にN2があります、います

項目としては電話するだったが、この日はコースの中日にあたるため、今までの学習項目の定着を図るためTPRを使用した復習を中心に行った。

反省:教室の前に設置したイスが学習者の方を向いていたため、「イスの前/後」を指し示すときに、少し混乱を招いてしまった。イスなど前と後の概念がある物を使用する場合は、教室空間全体を使って「前・後」を指し示すなど、混乱を招かないように気をつけなければならない。また、一定の長さの文を文節ごとに区切って話したり、助詞にアクセントを置いたりする傾向があった。不自然な日本語の話し方をしていては、学習者が日本語の自然なリズムがつかめないので、教室でも自然な話し方ができるよう意識的につとめるべきであった。

8月20日 5日目  2コマ目 担当:森

内容:L5 電話する(2)

導入表現: 時間 (半、午前、午後といった語彙も含め)、いま何時ですか、〜は〜(時間)にV、電話での表現〔もしもし〜ですが、しょうしょうおまちください、しつれいします、まちがえました、またでんわします〕

WBで時間表現を導入し、何度もリピートし、パターンプラックティスをした。その後、レアリアの時計を使用して、提示した時間がスムーズに言えるようになるまで練習した。また時間を尋ねる表現も導入し、リアルタイムの時間を聞いたり、既習の動詞と新しい語彙を使って学習者の一日を発表してもらったりした。最後に、テキストの該当部分のダイアログに少し手を加えたHOを配布し、教師2人でデモをした後、学習者同士で会話練習をした。

反省:単純な時間表現の反復練習を長い間やりすぎてしまったため、学習者が少々飽きている様子だった。定着させることは大切であるが、5分刻みに練習を変えたり、出来るだけ現実に沿った練習を取り入れたりするなど飽きさせないための工夫が必要である。また、ゼロ初級の学習者は日本語の語順に慣れていないため、英語と日本語の語順の違いに注意しなければいけないことを徹底して教えるべきである。その他時間の関係で会話練習が手薄になってしまったが、学習者全員がダイアログのHOを見ないで言えるようになるまで練習するべきであった。

8月20日 5日目 3コマ 担当:栗原

内容: L7 てがみをおくる

電話会話の復習

時間の復習

〜から〜まで

反省: 単語が多すぎたためか、学習者の口がついてこなかった。学習者のペースに合わせたクラスの進め方ができず、せっかくの意欲をうまく伸ばすことができていない。たくさんのことを学びたい気持ちを大切にしながらが定着させていくにはどのようにするべきかを考えなくてはいけない。

8月21日 6日目 1コマ 担当:栗原

内容: L7 てがみをおくる

時間の復習

〜までいくらですか

何日かかりますか − 1週間ぐらいです

反省: いつも教科書、黒板にある定型文を示しながら口頭練習をしているため、見ないで練習して本当に使えるかどうかを確認したほうがよいと大曽先生よりご指導いただく。「〜から〜まで」はこちらが簡単だと思っていた項目だったが、学習者には難しかったようだ。このようなこともあるということを考え、例文や英語訳を準備しておく必要があると感じた。

8月21日  6日目 2,3コマ 担当:森、栗原

内容:アクティビティ  ビデオ撮影<既習学習表現の復習>

今までに習った表現を実際の場面で使ってみる。予め実習生が作成したデモビデオを見た後、初級学習者と共に新棟の管理室、郵便局、コンビニエンスストア、そして最後に本山駅で大曾先生に連絡するという段取りで、学習者が実際に学習表現を使っている場面をビデオ撮影しながら進めた。(詳しくは4.4アクティビティーを参照)

反省:実際に学習表現を使ってみて、それが通じるという経験は学習者に手応えを感じさせるいい機会となったが、ビデオ撮影に関しては、雑音が多くて学習者の学習表現使用場面の音声を鮮明に記録されていないことが多かった。FB用にビデオ撮影をするのであれば、マイクを付けるなどもう少し工夫する必要がある。

8月22日 7日目 1コマ 担当:栗原

内容: 総復習

前日のビデオを見ながら、新しい言葉の確認

総復習

反省: ビデオで学習者の声がひろえなかったことや日本語が難しいなどで学生から質問が出なかった。こちらからいろいろフィードバックするために用意しておかなくてはいけなかった。今日は指示のまずさから何をやったらよいかわからない学生がいた。よい指示が与えられるようにしたい。

8月22日  7日目 2コマ  担当:森

内容:日本文化の紹介

前半は森山直太郎『さくら』をクラスで聞く。歌詞の英訳を配布し、日本人にとっての桜のイメージや桜の名所などを説明する。その他学習者それぞれの国の代表的な植物、花のイメージについても話し合う。後半は、用意しておいたお箸の使い方、日本式テーブルマナーの説明、箸ゲームに加え、学習者からの要望により日本の御手洗いマナーについての説明もした。

反省:日本の歌を紹介する際には、英語で説明をしたり英訳をあたえたりするなど、歌詞の内容理解を助けるものがあるとよい。また、左利きの学習者がお箸の使い方に四苦八苦していたので、持ち方の手本を示して教えようとしたが、教師自身が右利きであり、左利きのお箸の持ち方・使い方には慣れていなかったためうまく示すことができなかった。(運良く他にうまくお箸を使える左利きの学習者がいたため、その学習者が変わりに教えてくれた。)お箸の使い方を紹介するときは、予め少し左利きの学習者にも手本を示すことができるように教師は少し練習しておいた方が良い。

また参考までに、学習者から説明の要望があったことを明記しておく。特に外国人女性は、日本の女性御手洗い事情に不可解なことが多いようである。日本独特の御手洗いマナーや非常用ベルの説明などは、学習者にとって是非とも教えてほしいことの一つであるようだ。

4.1.4 全体を通しての反省

<教科書について>

・ 前年度の反省に、授業では教科書を使うことがほとんどなかったとあったので、今年度はできるだけ使用するよう工夫した。だが教科書に書いてあること全てを学習者にインプットするのはやはり無理があるので、教授事項を適宜取捨選択して授業を行った。

<教師の指示、説明の仕方について>

・ 教室用語は初日にしっかり練習したが、なかなか定着しない学習者がおり、何度も確認する必要がある。

・ 授業中は媒介語の英語をかなり頻繁に使用しながら指示や説明をしたが、あいまいな発音や不的確な言い回しなどのため、学習者に教師の意図が十分伝わらないことが多かった。

・ 日本語を使っている時は、ジェスチャーを際立たせるなど工夫が必要である。

・ 文法事項や文型の導入、あるいは表現練習などをする際に、プリントをたくさん用意しすぎて、どのプリントに何が書いてあるのか確認するのに手間取り、学習者が混乱してしまうことがあった。配布するプリントは精選するべきだった。

<ひらがな、ローマ字の使用について>

・ ゼロ初級では、限られた時間の集中的なコースであることも考え、学習者のストレスを極力少なくするために基本的にローマ字表記を採用した。しかしその分ひらがなに触れる機会がほとんどなかったため、学習者は文字に関してはまったく進歩することなしに終わってしまった。文法導入に手一杯で、文字を上手に授業に組み入れていくことができなかったのは、学習者の事前の希望を思うと、大いに反省しなければならないと思う。

<その他>

・ 教師の英語力不足のため、学習者が意を得ない顔をしている場面が多々あった。不的確な英語を使うより、既習事項を活用して日本語で説明できる技術を身に付けることの方が重要であるように思われた。

・ 教師の説明が多少不十分でも、力のある学生がつまずいている学生をフォローしてくれたりしていたので、とても助かった。こうした積極性のある学生が自由にリーダーシップをとれるような雰囲気が今年のゼロ初級クラスにはあり、そのことが結果的に教師の力不足を補ってくれた。


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