4.3 中上級

4.3.1 学習者

4.3.2 担当者と学習内容

4.3.3 反省

4.3.4 全体を通しての反省

4.3.1 学習者

今年度の中上級クラスの学習者は以下の7名であった。

学習者

国籍

性別

日本語学習歴

来日経験

備考

US

5年間(週5時間)

10か月

日本語を専攻。留学経験あり。

US

8年間(週5時間)1年間(週20時間)

5回計9か月

両親が日本人。留学経験あり。

US

不明

不明

留学経験あり。

US

1年間(週3時間)

2回計1年

留学経験あり。

US

1年9か月(独学)

1年9か月

日本で英会話学校に勤めていた。

US

4年間(週4時間)

3か月半

留学経験あり。

US

不明

不明

昨年度も本プログラムに参加。

 Eメールによる事前アンケート(6月締め切り)と来日後、教育観で行ったインタビュー(8月11日)によって、上記のように決定した。学習者Cからは事前アンケートの回答が得られなかったが、インタビューの結果、中上級クラスが妥当であると判断した。また、学習者Gは昨年度に引き続き今年度も参加を希望し、本人の希望を尊重し、中上級クラスとした。

4.3.2 担当者と学習内容

中上級クラスの担当者と学習内容は以下の通りである。

1(9:30〜10:20)

2(10:30〜11:20)

3(11:30〜12:20)

14 Thu

オリエンテーション 

L1 お礼を言う(村田)

L1 お礼を言う(村田)

ウェルカムパーティー(全体)

15 Fri

L2 謝る(村田)

L3 道を聞く(猪飼)

すもうクイズ・スポーツの話(村田)

18 Mon

L4 誘う・断る(村田)

L4 誘う・断る(猪飼)

ビデオ(ウォーターボーイズ)(三好) 

19 Tue

L5 頼む・断る(村田)

L5 頼む・断る(猪飼)

アクティビティ(皆で明石焼きを食べに行く)

20 Wed

L6 不調を訴える(村田)

L7 許可をもらう(三好)

ビデオ(ウォーターボーイズ)(三好)

21 Thu

L8 計画を立てる(村田)

L9 苦情を言う(三好)

ポップミュージック(猪飼)

22 Fri

L10 考えを言う(三好)

助数詞ゲーム(三好)

フェアウェルパーティー(全体)

 中上級クラスの担当は猪飼・三好・村田の3名であった。担当者が複数いることによって、授業内容が豊かになる反面、教師が学習者の特性をつかむのに苦労したり、学習者の方も担当教師の特性について理解するのが大変だったと思われるが、本年度は授業時間数を多く持つ担当者をクラス担任的な位置づけとし(中上級は村田)、複数の担当者間で情報交換がスムーズに行なわれるようにし、最終的な責任を持つようにした。しかし、本プログラムは7日間という短期コースであるため、クラス担任を置いたとしても時間数の少ない担当者は情報を得るのに苦労したり、学習者と打ち解ける前にプログラムが終了してしまう危険性がある。そのため、担当者の人数はあまり多くない方がいいと思われる。

 本プログラムではAETが仕事や日常生活において必要とする会話能力の向上を学習目標とし、学習内容として口頭練習やロールプレイ、ディスカッション、聴解を行なった。上の表1のように、一日の授業の構成は、基本的に1・2限はテキストに基づいた内容とし、3限は疲れが出たり、集中力が低下する可能性があるため、テキストから離れたアクティビティーを行なうこととした。

4.3.3 反省

1日目 8月14日 1限 担当:村田 内容:オリエンテーション・L1お礼を言う

 9:15からオリエンテーションを全体で行った。大曾先生から簡単な挨拶を頂き、実習生もそれぞれ一言ずつ述べた後、クラス分けを発表し、学習者をクラスに案内した。  引き続き9:30から中上級のクラスでテキスト配布、参加費徴収、スケジュール確認をした後、授業に入った。 授業はL1 「お礼を言う」で、学習する前に(言語表現・非言語表現)を使って、学習者が知っていることをあげてもらった。その後、ロールプレイを行って、間違えたところやできなかった所を振り返りながら会話1のテープを聞いたり、文法説明をしたりした。

反省:「おごられる」といった受身をまったく勉強したことのない学習者がいた。中上級とは言っても、初級の後半にあたる文法事項は丁寧に扱うべきだった。また、いきなりロールプレイから入るのはこのクラスでは難しかったようだ。

1日目 8月14日 2限 担当:村田 内容: L1 お礼を言う

 ロールプレイから、会話2のテープを聞き、語彙・文法説明、会話3のテープを聞いた後、会話練習用のプリントを配って練習した。

反省:いきなりロールプレイから入るのが難しい学習者もいた。まず、文法や語彙説明、会話の基本練習、応用練習と初級と同じように積み上げていく練習が効果的である。また文法の練習はホワイトボードに書いていると時間がかかるので、プリントを用意した方がよかった。

2日目 8月15日 1限 担当:村田 内容:L2 謝る

 「学習する前に」を確認。会話1のテープを聞いた後、語彙と文法の確認。プリントで練習をした後、ロールプレイをした。月曜日に使うクイズを考えてくることと、会話2の文法練習のプリントを宿題とした。

反省:「学習する前に」で時間を取りすぎ、会話2・3ができなかった。また、ロールプレイが難しいので、テキストを見ながらしてもいいかと聞かれた。テキストの重要なところを入れ替えて練習できるようなプリントを準備しておくべきだった。使役・受身などは、やはり復習が必要だった。

2日目 8月15日 2限 担当:猪飼 内容:L3 道を聞く

まず、地図を用意し、学習者にどこへ行きたいか質問させ、教師が道順を説明するというウォーミングアップを行った。それから、テキストの本文の会話を聞いて「新しいことば」と「文法」を確認していった。

反省:学習者はもう日本で何度も道を聞いたことがあるようだったが実際に地図を用意して教師が道順を説明し、道をたどらせるのは説明を理解できるのかの確認、また語彙の確認となってよかったのではないか。しかし、道を聞くときの言い方のバリエーションを確認した方がよかった。また、練習問題をプリントで用意しておかなかったので、いちいちホワイトボードに書かなくてはならなくなり、時間の無駄になってしまった。学習者もその間はボーっとしてしまうので、ホワイトボードの書き込みは最低限にした方がいい。

2日目 8月15日 3限 担当:猪飼 内容:日本の音楽を聞くアクティビティー

まず、日本で好きな歌手がいるかなどを質問した。それから、夏川りみ の「涙そうそう」を聞かせ、プリント(ところどころ穴埋めできるようにしたもの)を用意し、聞きながら書いてもらった。それから、語彙の確認を行った。森山直太郎の「さくら」も同様に行った。

反省:語彙表を用意しておかなかったので、単語の説明に時間を取られ、歌を聞く時間が限られてしまった。歌の歌詞を聞き取るのは結構難しいようだった。3限目は学習者も疲れてくるので、アクティビティーで気分転換するのはいいと思った。

3日目 8月18日 1限 担当:村田 内容:L4 誘う・断る

 「学習する前に」を確認して、会話1のテープを聞いた。語彙と文法の確認。プリントで練習。その後、ロールプレイを行った。

反省:学習者が二人欠席。また、別の二人が英語教師の研修を担当するため、早退。欠席がいたり、早退する人がいたりとあわただしかった。キーセンテンスはプリントで練習した後、リピート練習が必要かもしれない。キーセンテンスを上手くロールプレイで使えない学習者がいる。工夫が必要。

3日目 8月18日 2限 担当:猪飼 内容:L4 誘う・断る

「Nでも一緒にいかがですか」の文を基本に、目上の人や同僚、友達を誘う簡単な文を作ってもらった。(会話の練習)「誘う」のと同様に、「断る」もテープを聞かせ、「断る」場合の表現を確認し、相手によって、丁寧さを調整できるような会話練習をした。

反省:「誘う」表現は普段よく使うので、学習者も意欲的に会話文を作ってくれた。しかし、やはり教師の話す時間(説明する時間)が学習者の発話時間より長くなってしまったので、もっともっと学生の話す時間を増やすように工夫が必要だと思った。ホワイトボードに字を書く時間も長いようだったので、何を書き込むのかも、あらかじめ考えておいた方がよかった。

3日目 8月18日 3限 担当:村田 内容:すもうクイズ・スポーツの話

事前に教師が準備した「すもうクイズ」を5問した後、学習者が宿題として考えてきたスポーツに関するクイズをした。

反省: 宿題をしてきたのが二人だけで、授業中にクイズを考える時間を取らなければならなかった。しかし、まあまあ盛り上がったのではないだろうか。皆に話す機会を与えられたのが良かったと思う。

4日目 8月19日 1限 担当:村田 内容:L5 頼む・断る

  「学習する前に」を確認。会話1のテープを聞いて、語彙・文法の確認の後、ロールプレイ。

反省: 学習者が話す時間をもっと増やすよう工夫が必要。

4日目 8月19日 2限 担当:猪飼 内容:L5 頼む・断る

会話2(直接的ではなく、理由を述べて婉曲的に物事を相手に頼む。)縮約形のまとめ→〜てしまう(〜ちゃう)、〜ている(〜てる/とる)、〜ておく(〜とく)

反省:日本語での会話能力はかなり高いが、縮約形を使うことができる学生はほとんどいなくて、縮約形の形の練習だけでかなり時間をとられてしまい、他の会話練習ができなくなってしまった。学生の発話時間が少なくなってしまったので、もう少し計画的に授業をコントロールした方がよかった。

4日目 8月19日 3限 

内容:明石焼き、お好み焼き、焼きそばを食べに行くアクティビティー

ゼロ初級・初級クラスと合同。反省:作り方など事前に指導・紹介できればよかった。

5日目 8月20日 1限 担当:村田 内容:L6 不調を訴える

 病気表現の確認。会話1の語彙の説明。テープを聞いた後、プリントで会話練習。会話2のテープを聞いた後、ロールプレイ。

反省: 3人が遅刻。学習者に疲労が出始めた。レベル差に配慮してもう少し簡単なプランにすべきだった。薬の飲み方にはあまり言及できなかった。病気表現はただ読みあわせるだけで終わってしまった。絵だけではわかりづらいので、英語訳をつけておくべきだった。短いダイアローグを利用したのはよかった。

5日目 8月20日 2限 担当:三好 内容:L7許可をもらう

ダイアログの聴解(会話1〜3)ペア練習、会話を暗記させ、後で見ずに練習。プリントを配り、会話練習。

反省:学習者Aは会話練習を早く終わって暇そうだった。学習者Cはついてくるのに大変そうだった。学習者Eはよく質問してくれ、理解もきちんとできているようだった。「〜させていただきたいんですが」のフレーズは長くて大変そうだったが、皆きちんと使えていた。

5日目 8月20日 3限 担当:村田 内容:ビデオ(ウォーターボーイズ)を見る

  語彙表を用意して導入した後、ビデオを見た。

反省:学習者2名、英語教師の研修担当の為、早退。1限が時間超過した影響で一日の予定がずれてしまっていたのと、語彙の確認に時間がかかり、ビデオは20分しか見られなかった。語彙は家で確認してきてもらえばよかったかもしれない。ビデオは楽しんでいたようだ。用意しておいた語彙表は英語母語話者にチェックしてもらっていたが、アメリカ英語ではなかったので、学習者にはわからない表現もあった。

6日目 8月21日 1限 担当:村田 内容:L8 計画を立てる

「学習する前に」を確認。語彙の確認、会話2のテープを聞く。教師が用意したノートパソコンでインターネットを検索して、実際に計画を立てる。

反省:学習者1人欠席。会話2ではなく1を扱えばよかった。事前に旅行したい所を聞いておけば、観光名所などを紹介できたかもしれない。同じ行き先の人でグループになってもらおうと思っていたが、全員行きたい所が別々だった。時間が10分過ぎてしまったのに、インターネットの検索が全員はできなかった。パソコンが1台しかなく、待っている時間がもったいなかった。パンフレットを効果的に使えなかった。(漢字が難しくて使えなかった。)

6日目 8月21日 2限 担当:三好 内容:L9 苦情を言う

会話2、ダイアログの聴解、発音練習、プリントを使って苦情を言う表現の練習。(「〜んですけど」「無用心だし」)プリントを使って「(だ)し…」の練習、フリートーク。

反省:「こうたびたびだと…」の意味がよくわかっていないみたいだった。学習者Cは語彙の確認の時からついてこれていなくて他の人とレベルを合わせるのが難しい。「ほしがっている」の説明もわかっていなかったようだった。

6日目 8月21日 3限 担当:三好 内容:ビデオを見るアクティビティー

映画『ウォーターボーイズ』つづき。反省:楽しそうに見ていた。早口のところは聞きにくいと言っていた。

7日目 8月22日 1限 担当:三好 内容:L10 考えを言う

文法「〜と思う」「〜んじゃない?」

反省:一人遅刻。アメリカの暴走族の話で盛り上がった。

7日目 8月22日 2限 担当:三好 内容:アクティビティー

ビデオの続きを見た後、助数詞ゲーム、名前を言って手拍子をするゲーム。

反省:助数詞は少し難しそうだったが、楽しんでやっていたようだった。もう一つのゲームは皆リズム感がよく上手だった。

7日目 8月22日 3限 内容:フェアウェルパーティー

反省:じゃんけんゲームで商品があってよかった。巻きずしもおいしそうに食べていた。

 4.3.4 全体を通しての反省

 前年度までの実習報告書においても各クラス内のレベル差について報告されているが、本年度の中上級クラスにおいてもレベル差が見られた。今回興味深かったのは、授業中にまとまった会話練習や活動をしようとすると上手くいかない学習者でも休み時間に話をするときには、教師が語彙をコントロールしなくても話ができたことである。このように、文法項目や語彙量が限られている学習者が会話をスムーズに進められる背景として、留学経験があったり、日本人と接する機会が多いため、難しい文型や語彙を使用しなくても会話を進められる技術を持っていることが考えられる。しかし、簡単な会話ならスムーズに行なうことができてもまとまった内容になるとスムーズにはいかず、初級で学習済の文法項目(使役・受身など)や語彙についても丁寧に扱うべきであった。また、授業の最後に学習内容のまとめの意味でロールプレイを行なったが、その際、日本語で指示を書いた紙を読むのに時間がかかったり、テキストを見ながらでないとロールプレイができない学習者がいた。「読み」に関しては簡単なものでも時間がかかり、板書を書き写すのも時間がかかるので配慮が必要である。また、ロールプレイのとき、学習した項目や会話の流れをプリントにしたものを準備しておけばよかったかもしれない。


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