4.1 入門

4.1.1 学習者

 入門クラスは全部で8名である。実習期間中、他のクラスへの、また他のクラスからの学習者の移動はなかった。3名を除く全員が日本語学習歴なしであった。学習者同士が仲良く、クラス全体の雰囲気は非常に良かった。男性6名に対して女性が2名しかいないこともあってか、男性に比べると女性はやや内気な感じであった。授業に臨む態度は、全員が学習意欲が強く協力的であった。中には宿題や授業外の課題を希望する学習者もいた。学習者8名の国・性別・学習歴は以下の通りである。

学習者A(アメリカ・男)
 日本語学習歴、来日経験ともにない。学習意欲が強く、授業中積極的に質問をしていた。実践的で役に立つ日本語を学習したいと考えている。

学習者B(アメリカ・女)
 日本語学習歴も来日経験もない。日本語学習に意欲を見せていた。

学習者C(アメリカ・男)
 2001年に一年間の来日経験があり、日本語学習に意欲を見せていた。

学習者D(アメリカ・女)
 初めての来日。アメリカで2週間の日本語コースをとったことがあるが、かなり前のことなので学習した内容はほとんど覚えていないとのことであった。日本語学習に意欲を見せていた。

学習者E(スコットランド・男)
 日本語学習歴も来日経験もない。言語に関心があり、日本語学習に強い意欲を見せていた。日常生活に役立つ基礎的な日本語、また、後で独学できるように文法を勉強したいと考えている。

学習者F(イギリス・男)
 1996年9月から97年7月まで週1,2時間日本語を学習している。使用した教科書はJapanese for Busy Peopleで、ひらがな、カタカナの読み書きはある程度はできる。来日経験はない。入門クラスを希望。基本的な日常会話を学習したいと考えている。

学習者G(アメリカ・男)
 日本語学習歴も来日経験もない。日本語学習に意欲を見せていた。実践的な会話を勉強したいと考えている。フェアウェルパーティーで入門クラスが歌うときにギターを弾いてくれた。

学習者H(イギリス・男)
 日本語学習歴も来日経験もない。日本語学習に意欲を見せていた。

4.1.2 実習者及びシラバス

学習目的:今回のコースは極めて短い期間であるため、日本語を勉強する場というより学習者が初めて日本語に接する機会として考えた。より多くの日本語に触れ、日本語そのものに興味を持ってもらうこと、今後の日本語学習につながるようなものにすることを目標に、学習者のストレスを出来る限り減らし、楽しんでもらうためのコース作りをすることにした。

教科書: 前年度のテキスト『ともだち』を基に内容の改訂を行い作成した、入門用のテキスト『はなび』を使用した。文法説明は英語で行っている。

カリキュラム:入門クラスは奥村、寺島、三谷が担任となった。ゼロ初級者用テキスト『はなび』の1,4課を寺島、3,7課を奥村2,5,6(5,6は1セット)課を三谷が担当し、各課3コマ(50分×3)の授業を行った。

実施日

時限

場面

学習項目

担当者

8/15(木)

1

 

 

あいさつ、ひらがな

寺島

 

2

1

自己紹介

教室用語、自己紹介

 

3

 

 

ウェルカムパーティー

 

8/16(金)

1

2

注文する

数字(1〜99)

三谷

 

2

2

注文する

「〜をお願いします」、「〜をください」、ひとつ・ふたつ・みっつ、「N1とN2」、カタカナの食品名、こ・そ・あ

 

3

2

注文する

「〜をお願いします」、「あれは何ですか、これは何ですか、それは何ですか」、モスバーガーへ行くための準備

8/19(月)

1

3

買い物する

数の復習、数字(100〜1000)、「いくらですか」、「〜円です」

奥村

 

2

3

買い物する

服の名前、色の名前、「〜はありますか」、「はいあります/ありません」、買い物表現

 

3

 

 

「〜があります(所在)」、「〜はどこにありますか」

8/20(火)

1

4

道を聞く

「〜はどこですか」、 「え?」、「〜の隣です」、建物の名前

寺島

 

2

4

道を聞く

「〜へ行きたいんですが」、「〜に乗って下さい・降りてください・乗り換えてください」、〜ゆき、〜つ目

 

3

 

 

時計の読みかた、「今何時ですか」、「〜時です。〜時〜分です」、「〜時に〜をしました」

8/21(水)

1

7

手紙を送る

「〜までいくらですか」、「〜までお願いします」、「〜までどのぐらいかかりますか」、「〜でお願いします」、動詞の復習

奥村

 

2

7

手紙を送る

「v−たいです」、週末に何をしたいですか」、「どんな〜が好きですか」

 

3

7

手紙を送る

日本の葉書の書き方、教育館の先生に手紙を書く、実際に郵便局に行き手紙を出す

8/22(木)

1

6

不調を訴える

「〜がいたいんですが」、「ねつがあるんですが」、「帰ってもいいですか」、「どうしたんですか」、「だいじょうぶですか」

三谷

 

2

5,6

電話する

「もしもし、〜ですが〜をお願いします」、「今日休みたいんですが」

 

3

 

 

復習、漢字、フェアウエルパーティー用のスピーチの練習

8/23(金)

1

 

 

アクティビティ

 

 

2

 

 

 

 

3

 

 

フェアウエルパーティー

 

4.1.3 授業内容・担当実習生の反省

●主として各日に共通している内容
入門クラスでは基本的に各日の1時間目に以下の事について復習、導入をしてからその日の学習項目を始めた。
・ 初日に導入したひらがなの復習
・ あいさつ(前日まで覚えたものの復習・新しいあいさつの導入)
・ 前日の学習内容
また、入門クラスはフェアウェルパーティーの出し物で歌を歌うことにしたため、主として毎日3時間目の最後に歌の練習をした。

●毎回の授業の内容
<8月15日(木)>
1時間目:あいさつ、オリエンテーション、ひらがな
内容:教師の自己紹介、「〜先生」の呼び方、あいさつの仕方、ひらがなの読み方
反省点:学習者のレベルを見ることができた。あいさつは既に知っていた。「ひらがな46分」のカードを使って読みかたを導入した。学習者によって個人差はあったが、かなり多くのひらがなを認識できるようになった。オリエンテーションでやや時間がかかったため全てのひらがなを提示するのに急いでしまい、早口になり十分にカードを見せることが出来ない部分があった。

2時間目:自己紹介、教室用語、質問(インタビュー)
内容:教師の使う教室用語と学習者の使う教室用語、自己紹介の仕方
反省点:教師の使う教室用語の提示はTPRを行うことで定着したが、実際の授業であまり使用しないものも含まれていたため、もう少し減らしても良かった。学習者の使う教室用語はパワーポイントを使用して繰り返し練習した。最低限のものに限ったため、学習者にとってあまり負担はなかったが、もっと実際の使用例を具体的に考えておくべきだった。自己紹介は既に知っている人もおり、「名前・出身・よろしく」の3文だけというのは易しすぎるかと思ったが、一番下のレベルの人に合っており、適切だった。

<8月16日(金)>
1時間目:Lesson2 ちゅうもんする
内容:ひらがな(あ、な、れ、お)の復習、挨拶(失礼します)、数字(1〜99)
反省点:Power Pointを使って数字を導入した。その後、クラスメート同士で電話番号を聞きあうタスクと数字覚えゲームを行った。数字覚えゲームは好評でクラスが楽しい雰囲気になったが、どこで止めればいいか判断がつかず続けているうちに当初予定していた時間の表現を導入する時間がなくなってしまった。

2時間目:Lesson2 ちゅうもんする
内容:食べ物の語彙、NとN、ひとつ…よっつ、Nください/おねがいします、これ/それ/あれ→これはなんですか
反省点:カタカナ語の食品名は英語母語話者にとって面白かったようである。ローマ字の読み方(長母音など)を説明をした方がよかった。(soodesuを[suudesu]と読んでいる学習者がいた。)これ/それ/あれの導入と理解と定着を図るための練習は、もっと工夫する必要がある。スキットだけではなく、もっと絵を活用するとわかり易くかったのではないかと思われる。この時間の最後には、レストランのメニューを見て注文する自由練習のタスクを行った。しかし、授業全体としてはパターンプラクティス的な練習が多くなり、途中で授業活動が単調になってしまったところがある。

3時間目:Lesson2 ちゅうもんする
内容:モスバーガーでの注文
反省点:ペアになりモスバーガーの実際のメニューを使って注文する練習をした。その後、全員の前でやりとりの発表をしてもらった。授業後、昼食も兼ねて学習者とモスバーガーに行き、学習した表現を使って実際に注文する練習をした。少し緊張気味だが楽しそうだった。

<8月19日(月)>
1時間目:Lesson3 かいものする
内容:数の導入(100〜10000)、「いくらですか」「〜円です」、日本のお金について
反省点:数は前から知っている人と、初めて学習した人とで差がでてしまった。ただし全員が覚えられるまで繰り返すと授業のテンポが遅くなってしまうため、後の授業でまた復習することを心がけた。数の導入、練習の時にパワーポイントを使用したのは、授業をスムーズに進行するのに有効であったと思う。また、ビンゴはみんな楽しんでいたようであった。

2時間目:Lesson3 かいものする
内容:「〜はありますか」、「はい、あります/いいえ、ありません」、イ形容詞、色の名前
反省点:導入した買物表現のダイアログは少し長かったが、学習者はそれほど困難に感じていなかったようである。イ形容詞に関しては、文法的な説明は行わず、単語の一つとして「高い」「安い」などを導入した。

3時間目:Lesson3 かいものする 
内容:あります/ありません(所在)、「〜はどこにありますか」、学校にあるものの名前
反省点:最初の導入部分で英語でいうところを日本語で始めてしまったため、中途半端な導入になってしまった。AETが後に中学校、高校に行った際に役立つだろうと思い、「中学生日記」などのビデオを見せた。学習者がビデオの日本語を理解することはできないので、雰囲気だけでも分かればよいと思ったが、ビデオを見せる時間が長すぎて授業に間ができてしまい、有効に活用しきれなかった。

<8月20日(火)>
1時間目:Lesson4 みちをきく
内容:復習(あいさつ、ひらがな、前日の表現)、道の聞き方を覚える、建物の名前を覚える、数えゲーム
反省点:パワーポイントを使用したため説明をあまりすることなく意味を理解してもらうことができた。発音に関する注意が難しかった。準備をしておくと良かった。お菓子を箸でお皿からお皿にうつす、という数え方の練習を兼ねたゲームをしたが、息抜きと復習になり、学習者の評判が良かった。

2時間目:Lesson4 みちをきく
内容:「〜へ行きたいんですが」、地下鉄に乗るための表現を覚える
反省点:使用した会話文がやや長く、難しかった。本物の地下鉄の地図を使ったため、自由練習のときに乗換えが必要になり複雑な文になってしまった。全線を載せるのではなく一本ずつにした方がわかりやすかった。

3時間目:Lesson4 時間
内容:時計の読みかた、「今何時ですか?」
反省点:3限目は学習者にも疲れが出てあまり多くの内容ができないため、予定した学習内容はやや多かったといえる。助詞の質問が出始めたが適切に説明できなかった。学習者によりニーズが異なるため、どのレベルに合わせるのかについて検討が必要だと思った。

<8月21日(水)>
1時間目:Lesson7 てがみをおくる
内容:「〜まで お願いします/いくらですか/どのぐらいかかりますか」、日本の郵便について
反省点:パワーポイントばかり使っていても逆に授業にメリハリがでないため、この授業ではダイアログを板書することにした。ただし、全部板書していては時間がかかるため重要表現は紙に書いて貼ることにした。学習者の注意を引く点では板書は時として有効であると思うが、ローマ字表記はあせると間違えやすいので板書の際は注意しなければならない。教科書のダイアログは入門レベルに難しすぎるので、もっと簡単にして導入した。

2時間目:自分の好みを述べる
内容:「〜たい」、「どんな〜がすきですか」
反省点:教科書の「手紙を送る」のダイアログを簡潔にしたため、1時間目にやり終えてしまった。2時間目は教科書にはないが、覚えておくと日常会話で役立つ表現である「〜たい」と「どんな〜がすきですか」「〜がすきです」を導入した。自分自身のことについて話せるためほとんどの学習者が楽しく練習していたようだが、一部の学習者にとっては少し難しかったようである。

3時間目:Lesson7 てがみをおくる 
内容:日本語で手紙を書いてみる。郵便局に行って実際に手紙を送る。
反省点:教育館の先生宛に日本語ではがきを書き、1時間目に練習したダイアログを使用して実際に郵便局で送ってみるというアクティビティをした。はがき表の住所は教師側で事前に記入しておき、宛名は書かせた。ホワイトボードに文例を載せたが、それだけでなく学習者自身が自分の書きたいことを書けるよう教師が手助けをした。また、折り紙やシールなどを用意して、飾り付けもできるようにした。アンケートの結果から、このアクティビティにおいて多くの学習者は「日本語で文章を書いた」ということに満足感を持ったことが分かった。見よう見まねであっても、実際に日本語を書かせるという作業は有効であったと思われる。
入門レベルの学習者は日々新しいことを習い、また1日に学習することがたくさんある。1時間目、2時間目は授業を行い、3時間目はアクティビティという形を取る方が、学習者の集中力を高め、学習意欲を継続させるためにもよいのではないかと思う。

<8月22日(木)>
1時間目:Lesson6 ふちょうをうったえる
内容:復習(挨拶、ひらがな、動詞「たべます」、「いきます」、「みます」、「ききます」)、体の各部の名称、体の不調を訴える表現「(あたま/おなか/は/のど)がいたいんですが・・・。かえってもいいですか。」、スキットT(職場で体の不調を訴えて早退する)
反省点:この日は緊張していたために復習のところで、動詞の過去形をとばして次にいってしまった。また、スキットのダイアログを提示するために用意していたPower Point のファイルのことを忘れて板書したために時間的な効率が悪くなってしまった。1,2時間目は、新しく導入する語彙や表現を多くしすぎて私自身がうまくさばけなかった。体の各部の名称の語彙はもっと絞ってもよかったのではないかと思う。また、ダイアログには「〜んです」「〜ても」といった文法項目以外に、学習者にとっては新しい表現や語彙が多く入っていたので、目標となる学習項目がはっきりしなくなってしまったのではないかと思う。助詞についての質問が多かった。(主格の「が」と文末の「が」の違いなど。)

2時間目:Lesson 5 でんわする
内容:電話をするときの表現「もしもし、-―ですが、〜おねがいします。」「しょうしょうおまちください。」、スキットU(職場に電話して欠勤したい旨を伝える)
反省点:リピートやペア練習に時間をとりすぎたり、質問に答えているうちに用意していたタスクとゲームができなくなってしまった。そのために全体的に単調な流れになってしまったのではないかと思う。この日は途中からは学習者からの質問が多くなり、その質問に答えるかたちで授業が進行していった。文法項目やレジスターに関する質問が多く出た。また、こちらが教案に用意していなかった場面(電話で話し相手が不在の場合に使われる表現「〜はいまいらっしゃいません。」)についての質問もあった。

3時間目:復習ほか
内容:総復習、漢字(曜日)、フェアウェルパーティーでのスピーチ、歌の練習、アンケート
反省点:曜日の漢字の成り立ちを絵で描いた練習シートを配ったら、学習者はたいへん興味を示していた。また、歌の練習は毎回楽しそうにやってくれる。

4.1.4 授業後アンケートの結果

*評価はA〜Eの5段階で、Aが一番よい評価。回答者は8名。

8月15日(木) 
1時間目:あいさつ、ひらがな
(1) 役に立つ学習内容だったか A8
(2) 理解できたか A8
(3) 楽しかったか A8
2時間目:自己紹介
(1) 役に立つ学習内容だったか A8
(2) 理解できたか A8
(3) 楽しかったか A8
コメント:
・ 日本語を学習するのによい導入だった。
・ フラッシュカードを使ったひらがなの説明はとてもわかりやすかった。

8月16日(金)注文する
1時間目:数、食べ物
(1) 役に立つ学習内容だったか A8
(2) 理解できたか A8
(3) 楽しかったか A8
2時間目:数え方、〜と〜、これ/それ/あれ/どれ、Nお願いします
(1)役に立つ学習内容だったか A7 B1
(2)理解できたか A8
(3)楽しかったか A7 B1 
3時間目:アクティビティ「モスバーガーで注文する」
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A8
(3)楽しかったか A8
コメント:
・ 授業構成がよく考えられていた。
・ 「こそあど」は少し難しかった。

8月19日(月)買い物
1時間目:数、日本のお金、いくらですか
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A8
(3)楽しかったか A8
2時間目:〜はありますか、買い物表現
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A8
(3)楽しかったか A8
3時間目:〜はどこにありますか、日本の中学校のビデオ
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A7 B1
(3)楽しかったか A7 B1
コメント:
・ビデオは難しかった。

8月20日(火)道を聞く
1時間目:〜はどこですか、〜のとなりです
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A8
(3)楽しかったか A8
2時間目:〜へ行きたいんですが、〜つめで降りてください
(1)役に立つ学習内容だったか A6 B2
(2)理解できたか A6 C2
(3)楽しかったか A7 C1
3時間目:時間の言い方、動詞
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A8
(3)楽しかったか A8
コメント:
・地下鉄の行き方を聞くところは少し難しかった。

8月21日(水)手紙を送る
1時間目:〜までお願いします、〜までいくらですか
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A8
(3)楽しかったか A8
2時間目:〜たいです、どんな〜がすきですか
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A7 B1
(3)楽しかったか A8
3時間目:アクティビティ「日本語で手紙を書いて、郵便局で出す」
(1)役に立つ学習内容だったか A8
(2)理解できたか A8
(3)楽しかったか A7 B1 
コメント:
・ 日本語で手紙を書くのはとてもよい経験だった。とても楽しかった。

8月22日(木)電話をする、不調を訴える
1時間目:復習、体の名前、〜が痛いんですが帰ってもいいですか
(1)役に立つ学習内容だったか A7 不明1
(2)理解できたか A7 不明1
(3)楽しかったか A7 不明1
2時間目:もしもし〜をお願いします、〜ませんか
(1)役に立つ学習内容だったか A7 不明1
(2)理解できたか A7 不明1
(3)楽しかったか A6 B1 不明1
3時間目:歌、漢字 など
(1)役に立つ学習内容だったか A7 不明1 
(2)理解できたか A7 不明1
(3)楽しかったか A7 不明1
コメント:
・ 漢字について学べて楽しかった。もっと学習したい。

4.1.5 全体を通しての反省

<教科書>
 授業では教科書を使うことがほとんどなかった。それは、教科書のダイアログが初めて日本語を学ぶ学習者には長すぎるものであったり、語彙が難しいと判断したためである。この日本語コースの期間の短さと学習者のレベルを考えると、教科書に書いてあること全てを学習者にインプットするのは無理であった。しかし、場合によっては教科書を使った方が時間を効率的に使えることもあるので、教科書の使い方については今後検討していく必要があると思われる。今回、教科書は授業で使わなかったが、入門クラスで取り上げた言語使用場面はほぼ教科書に沿っているので、コース後学習者が復習するときに役に立つことを願っている。

<教師の指示・説明のしかた>
 教室用語は、初日にしっかり練習したために2日目にはかなり定着しており、授業中の指示がし易くなった。
 授業中は媒介語の英語をかなり頻繁に使用しながら指示や説明をした。タスクのしかたの指示が難しいようなものは、あらかじめ英語で指示を書いたものをプリントして渡すようにすることもあった。
  日本語と英語をいつどのように使うかについては、入門担当の教師間で事前に話し合っていたが、実際にコースが始まるとそれが曖昧になってしまっていた。例えば、何かを日本語で言った後、学習者の様子を見ずにすぐに英語で言い直したり、日本語で言わずにいきなり英語で言い始めるなど、学習者側からすると教師がいつ日本語で話し、いつ英語で話すか予想がつきにくかったのではないかと思われる。入門クラスでは指示や説明をするときの日本語の話し方や際立たせ方について十分検討し練習する必要がある。また、日本語を使っているときはジェスチャー、板書を活用するとよい。
 教師と学習者のインターアクションでは、教師が学習者の反応を辛抱強く待たずにやりとりを進めたり、必要のない説明を加えてしまうことがあった。また、文法事項や文型の導入や説明の際、絵や模造紙をたくさん用意しすぎて黒板に貼るのに手間取り、授業のリズムが途切れることがあった。絵や模造紙等を多く使う場合には前もってプレゼンテーションの練習をよくしておいた方がよい。その点、Power Pointは、授業のテンポを崩さずに学習者の注意を引き付けることができるので便利だった。
 ローマ字を板書する際、教科書のローマ字表記のしかたと統一されていないことがあった。また、急いで書く時、分かち書きができていないことがあった。

<ひらがな・ローマ字の使用>
 入門クラスでは、限られた時間の集中的なコースであることも考え、学習者のストレスを極力少なくするために基本的にローマ字表記を採用した。ローマ字表記の仕方に関しては教師間で統一し、学習者の混乱を招くことのないよう心がけた。また、ホワイトボードの板書はローマ字で行なったが、「読むことを強要しなければ、ひらがなを見せることは害にはならない」という考えから絵カード、フラッシュカードやパワーポイントなど、前もって準備できるものにはひらがなとローマ字の両方を使用した。最初の授業でひらがなの導入をし、毎日数文字ずつひらがなを復習したこともあり、興味を持った意欲的な学習者はコース終了時にはかなりひらがなが読めるようになっていた。できるだけ早めに授業計画を立て、パワーポイントなどを使って板書の時間を削るようにすると、授業時間を有効に使うことができると言えるだろう。ただし、今回授業前に作った教材の一部にもローマ字表記の誤りがあったため、全員で教材のチェックを行なうことも必要であると思われる。
 また、日本語のローマ字表記の読み方についての説明が中途半端なものになってしまったため、ローマ字の読み方が日本語らしくない学習者も見られたため、授業の最初にしっかり確認しておくべきであったかもしれない。
 今回のコースにおいて、表記に関しては学習者からの反応は良く、特にストレスを与えることなく他の練習に集中させることができたと思われる。

<媒介語としての英語使用>
 媒介語に関する本年度入門クラスにおける授業方針は以下のようであった。
・ 前年度までの授業方針と同様に、授業において基本的には日本語を使用するが、英語も柔軟に使用していく。
・ 教室用語を徹底し、基本的な指示は必ず日本語で行う。
・ 文法説明や、アクティビティーの指示などが分かりにくい時には英語で説明する。
・ 配布するプリントには英語訳も載せる。
・ 学習者に対しては、教室用語の使用を徹底し、それ以外は英語を使用してよいこととする。
 本年度は例年に比べて、授業での英語の使用をそれほど制限しなかった。それには次のような理由がある。まず、母語が様々な学習者を対象とするのではなく、皆英語を母語にもつ学習者を対象とするため、学習者に共通言語がある。したがって、英語で説明しても、不平等なく学習者全員が理解することができる。そして、6日間という限られた短い期間で授業を行い多くの学習項目を集中して教えるため、授業時間を有効に使うことが必要とされる。また、英語の使用を強く禁じないことにより、学習者がリラックスし、楽しんで参加できる雰囲気作りを目指す。授業前に入門クラスの担当者間で媒介語について話し合いを行ったが、以上のような理由により授業では英語も臨機応変に使用していくこととした。
 事後アンケートの結果を見る限り、学習者の中で例年のように文法説明が分からなかった、というようなコメントは見られなかった。また、授業の雰囲気もおおむねよかったようである。しかし、実際に授業を行ってみて、英語で文法説明などをする際には、それを正確に行うことがいかに難しいかということを痛感した。そして、「もっと日本語を使っても自分たちは大丈夫だったのではないか」とコメントしている学習者もいることから、今回の英語の使い方は、日本語を積極的に使おうと考えている学習者には少し物足りなさを感じさせ、そうでない学習者には安心感を与えるものであったと考えられる。

 

 目次

 4.実施

 4.2 初級