春期教育実習(春期日本語集中講座)

 

1. 目的と概要

1.1 目的

 春期教育実習の目的には、大きなものとして、@教案作成から授業に至るまでの過程を実際に経験することと、A実際に行った授業の中から、実習生各自が自分の授業の問題点を発見することの二つがある。また、今回は日本語の教授経験がほとんどない実習生が大半であったので、上に挙げた二点に加え、実習生よりもはるかに豊富な経験を持つTAの授業を見学することで、具体的なノウハウを学ぶということも、重要な目的の一つとして挙げることができる。

 

1.2 春期日本語集中講座の概略

名称:名古屋大学留学生センター2001年度春期日本語集中講座

開講期間: 2001219()20012313()

実習クラス:初級

対象:名古屋大学に在籍する外国人留学生、客員研究員、外国人教師など

学習者の出身国:サウジアラビア、ミャンマー、フィリピン、ブラジル、インドネシア                      

        マレーシア、ラオス、ウズベキスタン

登録学習者数:10

使用教科書:新A Course in Modern Japanese Vol.2(名古屋大学総合言語センター日本語学科編名古屋大学出版会1983に改訂を加えたもの)

 

2. 実習の実施

実習生

日時

担当課

学習項目

シュエ マン

チュウ

2/22

 

L.12

 

「Vたら」「Vなかったら」「Aたら」「N.Naたら」「〜たらいいですか」

2/28

L.15

自動詞・他動詞 「〜を+他動詞」「〜が+自動詞」

高橋圭介

2/23

L.13

「〜する」「〜ようにする」

2/27

L.14

「〜てしまう」「〜ちゃう」

石原千代枝

2/23

 

L.13

 

「〜より〜のほうが――」「〜のほうが〜より――」「〜がいちばん――」「〜は〜ほど――ないです」

2/27

L.14

V(plain form)+Noun

祐喜子

3/1

L.16

 

「〜そうです(様態)」「イ・形容詞+そうです」「ナ・形容詞+そうです」「動詞+そうです」

3/8

 

L.18

「〜らしい」「Nらしい」「Nらしくない」「Nらしい人、服、色」「〜て、〜て、男らしい人が好きです」「〜さんらしいですね」

3/9

L.19

使役形 「自動詞+〜を〜させる」「他動詞+〜に〜をさせる」

f地崇明

3/2

 

L.16

 

尊敬語 regular/Irregular

3/9

L.19

V causative form+ていただけないでしょうか」

八木健太郎

3/6

L.17

「〜のに――」「そんなに〜ない」

3/12

L.19

 

「〜しろといわれる」

「〜するようにいわれる」

月森育子

3/6

 

L.17

 

「あげる/もらう/くれる」

「〜てあげる/〜てもらう/〜てくれる」

「〜てくれませんか」

3/12

L.19

「〜かどうかわかりません」

「〜かどうか/〜かききました」

「〜てくる/〜ていく」

 

3. 授業の反省

 実習終了後、実習生は4月から5月にかけての「日本語教授法及び実習」の授業で、実習時に撮影した授業のビデオを見ながら、反省会を行った。以下では、反省会での報告及び実習の連絡ノートに記載された記録をもとに、実習時の留意点や、実習後の反省点などをまとめる。

 

3.1 授業見学

春期実習では、実習生2人とTA1人がペアになって授業を進めた。授業はTAが先に行い、それに続いて実習生が行うという形であったため、実習生は自分が授業を行う前にTAの授業を見学することができた。実習生(特に教授経験のない実習生)にとっては、日本語の授業を体験できる貴重な機会ということもあり、実習生はそれぞれ積極的に授業見学を行っていた。

 ただ、見学を行ったといっても、授業後に、見学した授業について実習生がいろいろと考えをめぐらすような機会はなかったようである。この点について、授業の連絡ノートには、TAの方から次のような意見があった。

・見学者の人に授業の後で意見をきいたりする時間があると、見学した(された)意味がもっと出てくるように思います。また、たとえばTAの授業を見学するのであれば、事前に(見学することを)教えてもらえると、見学するのに(内容的に)適した授業ができるのですが・・・。

 

3.2 留意点(留意して、結果的にうまくいった点)

 留意点には「時間配分」に関するものと「視覚教材の使用」に関するものの二つがあった。具体的には以下のような点が報告された。

 

<「時間配分」に関するもの>

・ほぼ時間どおり進めることができた。

・人物名やモデル会話をあらかじめ紙に書いておくことで、板書にかかる時間を短縮した。

 

<「視覚教材の使用」に関するもの>

・導入に写真や実物などを使うことにより、学生の興味を引くことができた。

・板書を見やすくまとめたり、絵カードを使用することで、視覚的にわかりやすいようにした。

・各文型の導入部分では、実際にその場面を再現することで理解を促した。

 

 但し、時間配分に関しては、すべての実習生が時間どおりに予定の学習項目をこなすことができたというわけではなく、予定の時間をオーバーしてしまった実習生も多く見受けられた(ちなみに予定の時間よりも早く終わってしまったという実習生は、春の実習では少なかった)。

 

3.3 反省点

 反省会ではさまざまな反省点が報告されたが、ここでは反省点を大きく「事前準備に問題があったもの」と「授業の進め方に問題があったもの」の二つに分けた(但し、両方にまたがるようなものもあると思われる)。どちらも実習生の経験不足によるところが大きいが、前者は事前準備を充実させることである程度回避できる性質のものであるのに対し、後者は経験を積むことによってはじめて解消できる問題であると思われる。以下に、実際に報告された反省点を挙げる。

 

<事前準備に問題があったもの>

・事前に一人一人の学生の名前とレベルをもっときちんと抑えておくべきだった。

・練習中に出て来そうな質問について準備不足だった。

・教案を見ることが多かった。

・プリントに使用した絵の中に、わかりにくいものがあった。

・提示する例文がワンパターンになってしまった。

・学習者の知らない語彙を説明できなかった。学習者の媒介語が英語なので、難しい語彙については、対応する英単語を調べておくべきだった。

 

<授業の進め方に問題があったもの>

・適切なティーチャ―トークができていなかった。

・全員での口頭練習が多く、一人一人の発話や理解度を確認しなかった。

・授業を進めることに精一杯で、学習者一人一人の反応や理解度にまで気が回らなかった。

・予定していた時間を大幅にオーバーしてしまった。

・説明が長すぎて、口頭練習の時間が少なかった。

・会話練習などでは、何を言えばいいのかという指示があいまいだったので、学習者が少し混乱していた。

 

 最後に挙げた二点は、事前準備と授業の進め方の両方に問題があると思われるものであるが、数多くの実習生がこれらと同じ内容の反省点を挙げていた。

 また、この二点だけでなく、他の反省点についても、複数の実習生によって挙げられたものがほとんどである。

 

4. まとめ

 春期の実習では、以上のように多くの反省点が挙げられたが、当面の目的は達成できたように思われる。経験のほとんどなかった実習生にとっては、自分が行った授業からだけでなく、TAの授業を見学することから学んだことも数多くあった。また、実習後には、自分たちが行った授業を客観的に分析することができ、そこからそれぞれの実習生が問題点を発見することによって、夏の実習における目標の設定へとつなげることができた。

 

 

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