3.  初級(クラス2

 

3.1 学習者

 このクラスは、若干日本語学習の経験があるが、それがかなり以前の事であったり、ブランクがあったりと、学習内容を忘れてしまっているような学習者を対象としたクラスである。学習者は初級文法をひととおり学習した経験があるが、現時点では挨拶程度しか話すことができない。今回このクラスには、e-mailによる事前アンケートと授業開始一日目のインタビューテストの結果、第一日目と第二日目は学習者1名のみがこのクラスに入ることになった。しかし、プレースメントテストでゼロ初級と判断された学習者1名が、2日間ゼロ初級クラスで授業を受けてみたところ、簡単過ぎるようだったため、3日目に初級クラスに変わることになった。このクラスの移動は,ゼロ初級担当の実習生の判断によるもので、3日目ためしに授業を受けてみて、ついていけそうだと本人も初級クラスの担当実習生も判断したため3日目以降は初級クラスで学習を進めることとなった。                                    

 

 本年度初級クラスの学習者は以下のとおりである。

 

学習者

国 籍

性 別 

日本語学習歴

現在の日本語能力

 A

      

ニュージーランド 

 女  

‘93~’96

週3〜4時間

挨拶と簡単な会話

 B

アメリカ

 女

’97.6~’97.9

週5回

挨拶とごく簡単な会話

 

 e-mailによるプレースメントでは、学習者Aは、三年間週3〜4時間日本語を学習した経験があり、初級で学ぶ文法はすべて一度学習していると思われた。しかし、日本語の勉強をやめてから4年が経っていることもあり、現在の日本語の能力を測りかねたため、Aに対しては他の学習者とは別に追加のアンケートを送り、詳しくその能力について尋ねた。その結果漢字は50字程度知っており、基礎的な文法と会話は学習したが、それらは高校で習ったものであるため、多くを忘れてしまっている事がわかった。そのためこの学習者は追加アンケートにおいて,初級の文法を思い出すため、日常必要となると思われる「道聞き」や、「レストランでの注文」、「店員との会話」等の項目を学習したいこともわかった。

 また、Bは、4年前に4ヶ月間とAに比べて学習期間は短いが、週5回授業を行っていたことや、来日経験があることなどから基礎的な文法は一通り学習済みであった。ただ、Bは、ひらがなやカタカナ、漢字について若干不安があると本人からも申し出があったため、最初はゼロ初級クラスに振り分けられていた。学習したい項目としてはAと同様、「道聞き」や、さらに「教室用語」「自己紹介」「電話」といった日本で生活しAETとして仕事を行っていくうえで必要であると思われる項目が挙げられていた。

 

3.2 シラバス

 初級クラスのシラバスは以下のとおりである。

 

8月15日(水)

オリエンテーション

インタビュー

Lesson 1

あいさつ

じこしょうかい(石)

 

ウェルカムパーティー

8月16日(木)

Lesson 1

教室用語

私は〜です。

はい/いいえ(石)

Lesson 2

ちゅうもんする(高)

Lesson 2

ちゅうもんする(高)

8月17日(金)

Lesson 3

かいものする(石)

Lesson 3

かいものする(石)

Lesson 4

みちをきく(高)

8月20日(月)

 

Lesson 4

みちをきく(高)

Lesson 5

でんわする(石)

Lesson 5

でんわする(石)

8月21日(火)

 

Lesson 6

ふちょうをうったえる(高)

Lesson 6

ふちょうをうったえる(高)

Lesson 7

てがみをおくる(石)

8月22日(水)

 

Lesson 7

てがみをおくる(石)

Lesson 8

またあした(高)

Lesson 8

またあした(高)

 

8月23日(木)

Activity

 

 

 

 初級クラスは実習生のうち石原(石)と高橋(高)がすべての授業を担当した。学習者は第2日目までは一人であったのでクラス形式ではなく一対一の学習者Aに合わせた授業を行っていたが、3日目からは学習者Bが移動してきたため、タスク練習やロールプレイを交えたクラス形式で授業を行うことができた。以下に授業で行った具体的な内容と反省点をまとめる。

 

 

・第一日目(8月15日)

2時限目 Lesson 1 じこしょうかい

 クラスの内容:・じこしょうかい(「Nです」「Nですか」「Nじゃないです」「はい、Nです/いいえ、Nじゃないです」先生−教師)

        ・漢字:『げんきT読み書き編より8つ

 反省点:学生が一人だったため、当初予定していたものの他に、学習者の要望から漢字を少し導入し、授業形式ではなく一対一の対応をとった。そのため、日本語で通じにくいところの説明や思い出せない単語などについて、英語を使いすぎた。

 

 

・第二日目(8月16日)

1時限目Lesson 1 教室用語

 クラスの内容:・教室用語 ・家族 ・自己紹介(「〜が好きです」「〜に興味があります」)・漢字(前回の続き)

 反省点:前回の反省をふまえできるだけ英語を使わないように努めたが、一対一ということもあり、以前英語でのやりとりを多用しすぎてしまったこともあって、英語の使用をなかなか減らすことができなかった。クラスで使用する「聞いてください」「見てください」などは絵カードを用いて日本語で説明をした。ほとんどは理解できていたようだが、「どうちがいますか?」という質問については理解が難しかったようだ。絵カードなどでの工夫が必要であった。

 

2時限目 Lesson 2 ちゅうもんする

 クラスの内容:・ちゅうもんの表現(「〜おねがいします」「〜いかがですか」「〜ください/〜にします」など) ・会計の表現(「〜円になります」「ちょうどいただきます」「〜円のお返しです」) ・指示詞(これ/それ/あれ) ・数字(「〜円」とのからみで)

 反省点:「こそあ」の練習で、インフォメーションギャップを用いた問題を用意したが、ギャップになるはずの単語をすでに学習者Aが知っていたため、予期していた展開にならなかった。

 

3時限目 Lesson 2 ちゅうもんする

 クラスの内容:・数え方「〜つ」 ・「ちゅうもん」の練習 ・助数詞(「〜人」「〜本」など)

 反省点:スムーズに進みすぎて、20分近く時間が余ってしまった。→予定外の助数詞を入れて時間を埋めた。

 

第三日目(8月17日)

1時限目 Lesson 3 かいものする

 クラスの内容: ・助数詞の復習(「ひとつ、ふたつ」「〜本」「〜冊」「〜枚」「〜匹」「〜こ」) ・身の回りのものの名称(「えんぴつ」「じしょ」「きょうかしょ」等) ・い形容詞 ・い形容詞+名詞(「大きいじしょ」「高い時計」)・合わせて「〜が(いくつ)あります」「〜が(何匹)います」

 反省点: 助数詞の復習から身の回りのものの名称、い形容詞とい形容詞+名詞へと流れるよう、助数詞を使用して数えるものの絵カードを用意し、同じ「本」でも「大きい」本と「小さい」本、「高い」時計と「安い」時計など復習しながら定着をはかり新しい文型を導入できるようにした。しかし、同じ材料を使って一時間通したので最後の方は飽きてしまい、学習者のことを考えてもう少し難易度を高くしてもよかったと思う。この時間から学習者Bが参加。レベルも合っていたようで授業内容も理解できていた。

 

2時限目 Lesson 3 かいものする

 クラスの内容:・買い物場面の表現(買う場合、買わない場合) ・い形容詞+の(「赤いの」「大きいの」) ・店員とのやりとり(「〜はありますか」「どのようなものをおさがしですか」「もっと小さいのありますか」) ・色の名称(カタログから)

 反省点:カタログの切り抜きを使い、店員役を教師が、客役を学生がするロールプレイをした。実際のカタログを使用したので、学習者も興味を持って積極的に参加してくれた。ただ、あまり学習者がほしいと思う服がカタログの中になく、ロールプレイが単調なものになってしまった。

 

 

3時限目 Lesson 4 みちをきく

 クラスの内容:・ここ/そこ/あそこ/どこ ・みちをきくときの表現(「まっすぐ行く」「右に曲がる」「左に曲がる」など) ・1つ目、2つ目、3つ目

 反省点:時間がなくて、学習者同士が道を教えあう練習をすることができなかった(が、もししていたら、特に学習者Bは相手に道順を説明するのが難しかったかもしれない)。

 

第4日目(8月20日)

1時限目 Lesson 4 みちをきく

 クラスの内容:・動詞(ますformplain form) ・「地下鉄」の表現(「〜線の…行きに乗ってください」「〜つ目で降りてください」「〜線の…行きに乗り換えてください」)

 反省点:「〜行き」をなかなか理解してもらえず、予想外に時間がかかってしまった。そのせいで、口頭練習をする時間がなくなってしまい、上に挙げた3つの「地下鉄」の表現が十分に定着せずに終わってしまった。

 

2時限目 Lesson 5 でんわする

 クラスの内容:・電話の表現(「〜さんいますか」「いつ頃お帰りになりますか」等) 

・いますのhonorific formいらっしゃいます」とhumble form「おります」の使い分け ・学校の中の名称(「教室」「職員室」「保健室」等) 

 反省点:honorific form humble form の説明に時間をかけたため、電話の表現(普通の)が導入できなかった。次の授業で導入することにした。

 

3時限目 Lesson 5 でんわする

 クラスの内容:・電話の表現 ・ピザの注文(住所、電話番号の言い方、単語)

 反省点:前回できなかった電話の表現を急いで導入したため、説明が不十分で、ロールプレイの内容があまり理解できなかったようであった。ピザの注文については学習者がとても関心を示し、積極的な活動となった。住所の言い方と、カタカナ語の読み方が難しそうだった。

 

 

第五日目(821日)

1時限目 Lesson 6 ふちょうをうったえる

 クラスの内容:・身体部位の名称 ・不調をうったえるときの表現(「あたまがいたい」「かぜをひいた」など) ・「んです」 ・な形容詞(肯定形、否定形)

 反省点:「んです」は「理由(reason)」を言うときに使うと説明した。学習者Bは理解していたが、学習者Aの方は少し腑に落ちないところがあるようだった(が、最終的には最低限の理解はできていたように思う)。

 

2時限目 Lesson 6 ふちょうをうったえる

 クラスの内容:・「んです」の練習 ・ダイアログの練習(実際に電話したりして)

 反省点:プリントを使って「んです」の練習をしたが、「プレゼントをもらいました」を「〜をもらったんです」に形を変えるところを、過去のplain form(もらった)が作れず、「もらったんです」が導けなかった。最初に過去のplain formの練習をすべきだった。語彙でも少しひっかかった。

 

3時限目 Lesson 7 てがみをおくる

 クラスの内容:・郵便局や手紙、小包を送ることに関する用語と表現(「〜までいくらかかりますか」「〜まで何日かかりますか」) ・小包や手紙の送り方や種類と料金 

 反省点:台風の影響でその日の授業が短くなったため、急いでいろんなことを導入したため、会話の練習よりも日本での小包の送り方や、料金についての説明が主になってしまった。もう少し、郵便局でのやりとりを練習すべきだった。

 

 

6日目(822日)

1時限目 Lesson 7 てがみをおくる、2時限目、3時限目Lesson 8 またあしたは、台風接近のため授業が中止になったので、行うことができなかった。

 

 

 

3.3 全体を通しての反省 

 全体的に学習者は積極的にクラス活動に参加してくれ、活発な授業が行えたと思う。また、雰囲気もとても和やかで、学習者が気軽に質問をしていた。しかし、やはり既習者といっても初級文法を一通りやっているという程度なので、日本語での指示がなかなか理解できなかったり、実習生が用意した練習の意図がなかなか伝わらなかったりしたこともあった。活発なやりとりがあった反面、基本的な文型や文法項目の定着が不十分な点もあった。

 

 

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