春季教育実習


1. 目的と概略

1.1 目的

 春季教育実習は、名古屋大学留学生センター春季集中日本語講座において行われた。その目的は、実際に教室活動を体験することによって、日本語教育の現場を客観的に観察すること。また、教授法だけでなく、事前準備や教室でのティーチャートークなど、日本語教育にかかわる様々な項目を学び、教室で生じる問題点を発見し、自分なりの考え方を形成することである。
 
1.2 春季集中日本語講座の概略

名称:     名古屋大学留学生センター97年度春季集中日本語講座
開講期間:   1997年2月19(木)〜1997年3月17日(火)
実習クラス:  初級UC
対象:     名古屋大学に在籍する外国人留学生、客員研究員、外国人教師など
学習者の出身国:中国・ミャンマー・ベトナム・インド・ポーランド・ルーマニア
登録学習者数: 14人(2/27より1人増加)
使用教科書:  A Course in Modern Japanese Vol.2
        (名古屋大学総合言語センター日本語学科編 名古屋大学出版会 1983)

1.3 授業見学

 実習に先立って名古屋大学の留学生センターの授業を見学した。授業見学は1996年11月17日から21日までの期間に行われた。実習生が見学した授業は第37期「日本語研修コース」と1997年度後期「全学向け日本語講座」である。上級・中級・初級のそれぞれ希望するクラスを見学することになった。
 見学において、実習生はレベルにあわせた媒介語の使用、文型の導入・練習のし方・発話スピードのコントロール・学生の質問に対する教師の答え方などを観察した。

 

2. 実習の実施

 実習期間は2月19日から3月17日までであった。90分の授業を前半と後半に分け、実習生が2人1組でそれぞれ45分ずつ担当し、1人2〜3回行なった。
 実習生の担当及び授業の目標は、以下の通りである。

実 習 生
担 当 課
学 習 項 目
金村 久美
2/20

L13 練習 7-11

≠eba形・「なければなりません」・「〜しか」

2/23

L13 コミュニケーション活動

「ってしっていますか」ゲーム

山本 三和子
2/20

L13 会話

自己紹介モデル・≠teiru形

2/23

L13 コミュニケーション活動

自己紹介(1人ずつ)

2/27

L15 練習8,9

≠tara 形・「〜たらいいですか」・「〜たらどうですか」

浅井 美恵子
2/27

L15会話

道を聞く表現・説明する表現

3/2

L16練習4,5

会話

「〜ないでください」・「〜たほうがいいですよ」

アパート探し

吉金 卓哉
3/4

L17 コミュニケーション活動

グラフ発表

L17 練習7,8

「まで」・「ばかり」

斉藤 信浩
3/9

L20 練習1-3

「あげる・やる・もらう・いただく・くれる・くださる」

3/10

L21 会話

あいづち・フィラー

安斉 真生
3/9

L20 練習4-6

「〜と〜」・「〜によると」・「もう〜てしまいました」

3/10

L21 練習7-10

意志形・「〜ても」・「いくら〜」「〜のに〜」

戴 若梅
3/12

L15会話

会話新出語・表現

3/13

L15会話

読み練習

藤森 秀美
3/12

L22 コミュニケーション活動

インタビューの流れ・インタビューの表現

3/13

L22 コミュニケーション活動

本人にインタビューをする

3. 授業の反省

 実習終了後、実習生は「日本語教授法及び実習」の授業で、4月から5月にかけて実習を撮影したビデオを見ながら、1人ずつ担当した授業を振り返り、問題点を明らかにし、クラスで検討した。その経験を生かし、夏季実習に備えることにした。
 実習生の授業の手順や反省点は個々に異なってはいるが、反省会では以下のような点が報告、指摘された。

3.1 事前準備について

1) 授業見学
 昨年までの実習と今回との一番大きな違いは1クラスをコースの開始から終了まで実習生とTA及び実習授業担当教官で担当したことである。そのため見学が自由にできるということになった。しかし、各自担当するところばかりに気を取られ、事前に見学をする実習生は少なかった。
 見学すれば、クラスの雰囲気や学生の日本語レベルを事前に知ることができるので、授業をする際に大変役に立つ。それを怠ったため、うまくいかなかったケースが目に付いた。
 
2) テキスト
 教授法の授業でテキストの文型を大まかにつかんではいたが、既習文型や既習語彙の把握が不十分なため、教室活動に影響が出た。
 
3)教案作成とその検討及び模擬授業
 教案作成で授業準備を終わらせるのではなく、もう一歩進んで模擬授業を行うなどすればさらに実習の効果があがったと思われる。

4)柔軟さ
 実際の授業では予測していなかったことが絶えず起こると思ってよい。初めて教壇に立つ場合はスムースに進んだとしても緊張するものである。であるから、いったん躓くと最後までそれが尾を引くことになる。
 それを避けるためには起こりうるさまざまな可能性を考慮しておくべきである。たとえば時間が足りなくなった場合や反対に余ってしまった場合などに何をするか考えておくだけでもかなり違ってくるのではなかろうか。とっさに対処できるようになるまでにはよほどの経験が必要である。

3.2 実際の授業について

1)授業運営に関しての反省
 ・教師の発言が不明確であった。
 ・学習者の発言にていねいに応じられなかった。
 ・誤りの訂正がうまくいかなかった。
 ・練習が単調であった。
 ・例文やモデル会話文を全員に示さなかった。
 ・時間が不足した。
 ・時間が余った。
 ・練習が導入になっってしまった。
 ・モデル文が長すぎた。
 ・早口であった。
 ・板書が見にくかった。
 ・語彙のコントロールができなかった。
 ・文法説明が丁寧でなかった。
 ・例文がわかりにくかった。
 ・指示が不明瞭であった。
 ・フィードバック下手であった。
 ・学習者の質問に的確に答えられなかった。
 ・めりはりにとぼしかった。
 ・質問に例をあげて示さなかった。
 ・学習者全員に目をくばることができなかった。
 ・次の項目にうつるときにはっきり示さなかった。
 ・標準語アクセントで話さなかった。

2)学習活動に関しての反省
 ・学習者の発話のチャンスが少なかった。
 ・学習者のニーズを考慮していなかった。
 ・おもしろみに欠けていた。

 

4. まとめ

 今回は実習生2人をTAが指導する形をとった。TAは日本言語文化専攻のドクターが担当した。実習生は授業についてのさまざまなアドバイスを受けることができ、たいへん心強かった。そのため、教案や授業の進め方など不安に思うことを気軽に相談できたため、安心して授業に臨むことができた。
 春季実習では実際に教壇に立って授業を体験し、初級クラスの授業運営の難しさ、例えばわかりやすい指示の出し方の難しさなど自分の未熟さを身を持って理解することができた。
 また実習終了後数多くの反省点があげられた。授業の問題点は各自違ったが解決すべきことを各自念頭に置いた上で夏の実習に向かうことができたのはたいへん有意義であった。


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名古屋大学大学院文学研究科
日本言語文化専攻