AET日本語研修


3. 初級(Bクラス)

3.1 レディネス分析

(1)プレイスメント・インタビュー

 クラス分けのために行ったアンケートによると、日本語学習経験のある学習者は4名であった。同時に行ったインタビューにより、以下の点が判明した。
・学習歴に開きがあること。
・来日経験がある学習者が2名いること。
・日本語運用能力にかなりの差があること。
以上のことから、学習歴のある4名の中で日本語運用能力にやや問題があると思われた2名をゼロ初級(Aクラス)、学習歴が長く日本語母語話者の会話がある程度聞き取れると思われた2名を初級(Bクラス)に分けて授業を行っていくこととした。

(2)プレイスメント・テスト

 実際に授業を行うと、日本語学習歴のある2名はゼロ初級(Aクラス)の学習歴のない8名とはレベルにかなりの差があり、高いレベルの学習を望んでいることがわかった。インタビューではわからなかった日本語運用能力を見てみる必要があると考え、2名にのみ新たにプレイスメントテストを行った。テスト項目は1)平仮名・片仮名の読み、2)特殊拍の聞き取り、3)自己紹介、4)日本語母語話者の発話する文の聞き取り、である。このテストにより、2名ともゼロ初級(Aクラス)よりも初級(Bクラス)で学習を進めていく方がよいと考えられたため、2日目より初級(Bクラス)を4名として授業を進めていくこととした。

 初級(Bクラス)の学習者のインタビュー結果は以下の通りである。

学習者A オーストラリア  3年     大学
学習者B オーストラリア  5年     高校
学習者C アメリカ     約3ヶ月   大学
学習者D アメリカ    2〜3ヶ月  民間団体

3.2 シラバスデザイン

(1)学習目標

 日本で生活する上で必要となる日本語能力を習得し、より自然な表現ができるようにする。

(2)授業運営方針

 インタビューとプレイスメントテストの結果、簡単な返事や自己紹介はできるが実際の会話能力は低かった。そのため、文法項目はこれまでの学習の復習として扱うこととし、学習者に多くの「生きた会話」をしてもらい、日本語の学習のみでなく日本の習慣・文化の理解に役立つ情報も学ぶことを目指した。授業は教師の指示・板書とも日本語で提示することとし、1日の授業の前半を文法項目の確認、後半をアクティビティ的活動にあてることとした。

(3)学習項目

 各課の構成はゼロ初級(Aクラス)と同じである。初級(Bクラス)の学習項目は以下の通りである。

学習項目
L1 ・教室用語・挨拶
   ・自己紹介
L2 ・こ・そ・あ
   ・数詞
L3 ・形容詞の肯定・否定形
   ・アパート探しの語彙
L4 ・動詞マス形
   ・場所の表現
L5 ・電話のストラテジー
   ・電話で使う待遇表現
L6 ・病気の語彙
   ・動詞意志形
L7 ・誘い・断りのストラテジー
   ・カレンダーと時計
L8 ・動詞/形容詞の過去形・過去否定形


3.3 カリキュラム・デザイン

(1)カリキュラム

 1日1課2時間を基本とし、1時間の授業の後約15分の休憩をとった。

(2)教材

 テキストはゼロ初級(Aクラス)と同じものを用いた。それを補助するものとして、各課ごとに担当者が作成したプリントやレアリアを用いた。

 

3.4 授業の反省

(1)準備段階

*模擬授業
 実際の授業に先立って、初級(Bクラス)の担当者はそれぞれの担当課について模擬授業を行ない、ビデオに撮って検討した。さらに教案を具体化し再度模擬授業を行なった。
・指示や授業展開など、個人の授業に対して共通見解を持つことができた。
・自分の持つ癖や無意識のミスを前もってチェックし、授業に生かすことができた。
・他の実習生の指導法や学習者の視点を生かした指導法を取り入れることができた。
・前もってやってみることによって授業の可能性を柔軟に考えることができた。
・多くの時間を費やし、負担が大きかった。
・学習者のレベルがわからなかったので、ポイントを絞れず、授業に十分に生かし切れな いことがあった。

*教案作成・教材作成
・教案の立て方のアドバイスをもらうことができ、教案作成の時間を短縮することができ た。
・板書の計画をきちんと立てるべきだった。
・アクティビティ性の強いタスクは準備に非常に多くの時間がかかってしまった。

(2)授業段階

*授業について
・ある程度のレベル設定はしていたが、実際に授業をはじめてクラス分けに問題が出てきた。そのため、直前で計画変更を余儀なくされた。
・授業の時間配分がうまくいかなかった。
・学習者の持つ特質(レベル差、学習法など)を授業に生かすことができなかった。
・学習者の発音のチェックが少なかった。
・練習や活動の意味をあまり考えずに行なってしまったところがあった。
・手順が頭に入っていなくてまごついた。
・タスクの説明が不十分であったり、逆に説明しすぎたりしてしまった。
・2日連続で1人の担当者が授業を行なった。そのため、時間がうまくいかなかったとき には修正しやすかったが、準備が大変になってしまった。

*反省会
・無意識の行動を確認し、次の対策にすることができた。
・他の人の意見を次の授業に生かすことができた。
・時間がかかり、次の授業の準備に影響した。
・ポイントを決めて反省会に臨まなかったため、余計に時間がかかった。
・反省会をすることで、カリキュラム全体の流れについて共通理解を得ることができた。


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名古屋大学大学院文学研究科 日本言語文化専攻